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山村が大都会と合併?

 群馬県川場村が東京都世田谷区との合併を検討 ―― 最近の新聞報道で、こんな記事が掲載された。 川場村は群馬県の北部、沼田市の隣に位置しており、人口は約4,000人、面積は約85平方キロメートル。 スキー場と温泉で有名な観光地である。この小さな村で、役場の若手管理職らが構成する研究会が、 報告書のなかで世田谷区との合併について言及した。 川場村は約20年前から世田谷区との交流を続けており、 1986年には村内に「世田谷区民健康村」が開村するなど、 着実に成果を挙げており、決して唐突な動きではないようだ。

 これまで、市町村の合併は隣接する市町村同士で行われることが通常であった。 都道府県境を越える合併の事例も過去にはあったが、 これも都道府県境を挟んで隣接する市町村の合併が基本である。 今回のように極端な飛び地、しかも山村と大都会という組み合わせは、 これまでにまず例のないケースである。

 法的な整合性については、特に問題ないようだ。市町村合併に関連する主な法律としては、 地方自治法(第7条:市町村の廃置分合及び境界変更)、市町村の合併の特例に関する法律 (いわゆる「合併特例法」)などがあるが (関連記事)、 「隣接していなければ合併できない」といった記述は見あたらない。問題はむしろ、 仮に合併する場合に両者にどのようなメリットが生まれるか、ということになろう。

 市町村合併の一般的なメリットとしては、(1)行財政運営の効率化、 (2)住民生活の利便性の向上、(3)サービスの高度化・多様化、(4)広域的なまちづくりの展開、などが挙げられる。 このなかで、国が市町村合併を強く推進する狙いは「行財政運営の効率化」にあることは、 異論のないところであろう。現在、国および地方の財政状況は危機的な状況にあり、 市町村合併を通じて組織のスリム化や投資の効率化を図ることが求められているわけだ。

 しかしその一方で、地方の小規模自治体の多くにはもう一つの大きな課題がある。 それは「地域活力の向上」である。 地方では今も大都市への人口流出による過疎化・高齢化が顕著であり、 小規模自治体の活性化施策に大きな影を落としている。さらに景気の低迷により、 雇用の確保も困難な状況にある。「厳しい財政事情のなかで、 周辺との地域間競争にうち勝つためにはどうすればよいか?」 「近隣市町村との合併によって、果たして真に競争力のあるまちづくりが可能なのか?」 今回のケースは、そのような悩みが村役場の若手幹部を突き動かした、 典型的な例であると言えよう。

 遠く離れた区と村が一緒になることで行財政運営の効率化や住民生活の利便性の向上につながるかどうか、 という点については慎重な検討が必要であるし、また、 今回の研究会報告がそのまま村の総意であると解釈するのは性急である。 いずれも今後の議論を待つ必要があろう。しかし、「平成の大合併」と呼ばれる全国的な動きが、 地方の生き残りをかけた戦略と裏表の関係にあることは確かである。

 今回のように遠く離れた大都市との合併を検討する自治体もあれば、福島県矢祭町のように、 合併をしない旨を宣言した自治体もある。 「国主導」と批評されながらも順調に拡大してきた市町村合併の動きが、今後どのような方向に進むか、 注目すべきところである。

第7条  市町村の廃置分合又は市町村の境界変更は、関係市町村の申請に基き、 都道府県知事が当該都道府県の議会の議決を経てこれを定め、 直ちにその旨を総務大臣に届け出なければならない。

 2  前項の規定により市の廃置分合をしようとするときは、都道府県知事は、 あらかじめ総務大臣に協議し、その同意を得なければならない。

 3   都道府県の境界にわたる市町村の境界の変更は、 関係のある普通地方公共団体の申請に基き、総務大臣がこれを定める。

 4  第1項及び前項の場合において財産処分を必要とするときは、 関係市町村が協議してこれを定める。

 5  第1項、第3項及び前項の申請又は協議については、 関係のある普通地方公共団体の議会の議決を経なければならない。

 6  第1項の規定による届出を受理したとき、 又は第3項の規定による処分をしたときは、総務大臣は、 直ちにその旨を告示するとともに、これを国の関係行政機関の長に通知しなければならない。

 7  第1項又は第3項の規定による処分は、前項の規定による告示によりその効力を生ずる。
参考:地方自治法 第7条



小松 啓吾(こまつ けいご)

株式会社 日本総合研究所 研究事業本部
新社会創造クラスター 研究員

専門分野: PFI、市町村合併、地域振興ほか
プリンター用
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