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2009年11月22日
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ITを日常的に活用するシニア達

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いきなり私事で恐縮だが、先日、還暦を迎えた田舎の母親から携帯電話にメールが入ってきて、 「あなた、私の還暦祝いに、“赤いちゃんちゃんこを贈りましょう”なんて、 お約束なことを言ってきたけれど、本気じゃないでしょうね。それよりも、私、 東京で歌舞伎がみたいから連れていってちょうだい。飛行機はインターネット予約で大丈夫。 みたい歌舞伎はネット検索して決めておくから、チケットをとってね。」と、のたまう。 最近の私と母のコミュニケーション・ツールはもっぱら携帯メールである。 聞けば、高齢者と呼ばれる年齢に達した父親も、 釣り仲間との沖での連絡用に防水の携帯電話を活用しているとか。 “こんな日が来るなんて、隔世の感がある“・・・などと感慨にふけっていたのだが、 実際世の中のシニア層は、もっとIT活用に貪欲なのだ。

社団法人コンピュータエンターテインメントソフトウェア協会(CESA、東京都港区西新橋)の「 2002 CESAシニア調査報告書」によると、一般シニア(50歳以上)のインターネット利用率は21.9%である (よく利用しているシニア+たまに利用しているシニア)。利用目的では、 一般シニアとインターネットを日頃活用しているネットシニアの両方で、電子メールがトップであり、 ネットシニアでは「Webでの情報収集」や「メールマガジンの閲覧」も高くなっている。 また、携帯電話・PHSをもっているシニアは、一般シニアで40.6%、ネットシニアでは63.6%となっている。

さらに、現在ゲームをしているシニア層は、一般シニアで7.7%、ネットシニアで15.1%である。 ゲームを始めたきっかけは、ネットシニアでは「テーブルゲームの時代から」 「ファミコンが出始めたとき」などの自発的なものが多く、 一般シニアでは「孫や子どもからの勧め・影響」といった親しい人からの影響が大きい。

インターネットの利用目的のトップが電子メールであることは、シニア層にも、 インターネットがコミュニケーション手段として活用されていることを示している。 一昔前までの高齢者像と言えば、自分が生まれ育った地域の住民達との世界、 いわば地縁型コミュニティのなかで老後を送るイメージであった。しかし、現在のシニア層は、 在住する地域社会はもとより、趣味を同じくするどこかに住んでいる誰かを仲間として コミュニティをつくることに大きな抵抗はない。

もっと踏み込んで言うなら、最近定年退職後の男性達や高齢者の間で、社会参加や健康維持・介護予防のための “仲間づくり”が重要になっているが、このときの“仲間”には、これまでの職場や近隣の人間関係ではなく、 趣味や活動テーマを同じくする新しい人間関係が求められ、 その“仲間”とのコミュニケーションには電子メールが活躍する場面が多いのである。 このことは、アメリカにシニアネットという NPO があり、 高齢者の介護予防等の目的でインターネットを通じた生涯学習や高齢者同士の交流の機会を提供しているが、 この日本版ともいえるシニアネット・ジャパンの活動が全国各地に広まってきていることからもわかる。

しかし、シニアがITを活用するには、若干のハードルが残されている。 すなわち、PCや携帯電話の使い勝手の改善と家庭内のIT環境を整える支援である。

三井物産株式会社とマイクロソフト株式会社は、 インターネット接続に関する問題を解決する人材を育てるための「ネットエキスパート」 資格を確立する「ネットエキスパート制度推進協議会」を発足した。 これは、現在ADSLなどの高速インターネット接続環境が急速に普及している一方で、家庭内では、 モジュラージャックからパソコンまでの環境整備がおろそかになっているとの認識からである。

特に、シニア層では、家までの ISDN や ADSL はひいたけれど・・・といった状況で、 自分自身でパソコンをインターネットに接続することが苦手な人が多いと考えられる。 介護保険制度の実施以降、民間企業が高齢者ケア市場に参入し、 シニアは介護サービスを選択する立場になった。 今後は、ブロードバンドを活用した医療・介護サービスの展開が見込まれており、 医療・介護サービスの利用者である高齢者もインターネットを通じて 情報収集を行っていくことが多くなるであろう。デジタルディバイドの解消には、 キーボード操作を覚えるだけでなく、物理的にPCをインターネットに接続して、 世界とつながる情報収集環境を整えることも重要である。

また、電子情報技術産業協会(JEITA)が、「使い易いパソコンに関するアンケート」を実施したところ、 50歳以上の利用者は、画面の表示文字が小さいことや、設定が複雑なことに不満を持っているという 結果になった。 このほかには、マニュアルがわかり難い、操作や用語が難しい、 サポート窓口がつながらないなどの不満がよせられたが、 価格や通信速度等についての不満は比較的少ないという。 JEITA では、シニア層にとって使いやすい製品づくりを促進していくとしており、 これは、サポート体制の充実とともに、シニア層へのパソコン普及の鍵の一つとなるだろう。

これからシニア層になる人々の多くは、既に職場等でインターネットやPCに慣れ親しんでいる。 元気なうちは、インターネットを活用して、必要な情報を収集したり、 孫・子どもや仲間との交流を楽しんだり、ゲームをしたり、 インターネットバンキングで孫にお小遣いを振り込んだりするだろう。 行政サービスの電子化・ワンストップ化が進むと、高齢者が求められる様々な事務手続きは、 自宅のパソコンから簡単にできてしまうかもしれない。さらには、 リハビリや介護が必要な状態になって介護施設に入所する際に自分のパソコンを持ち込みたい人が出てくると、 介護施設のPR文句にも“24時間の高速インターネット接続環境が整っています” といった一文が入ってくるかもしれない。ITを日常生活に活用するシニア層がいることは、 このような未来が遠くないことを予感させる。


矢ケ崎 紀子(やがさき のりこ)

株式会社 日本総合研究所 研究事業本部
新社会創造クラスター 主任研究員

専門分野: NPO・市民活動、福祉など
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