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電子政府に伴う情報公開に関する危険性

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行政の電子化に伴って、情報の公開性が拡大すると期待されている。 実際、行政プロセスや各種の資料がデジタル化されることにより、 役所の情報公開への対応力は飛躍的に高まりつつある。

ただ、行政情報の電子化にはいくつか注意する点があり、 セキュリティの確保はその最も重要なポイントであるが、ここでは、 情報公開の観点から主に「運用面」での危険性を2つ指摘したい。

第1の危険性は、情報化により却って情報公開性が後退するという一種のパラドックスについてである。 作家の猪瀬直樹氏が次のような事例を紹介している。

「国土交通省が初めての白書を発行した。(中略)もうひとつ、CD-ROM で誤魔化されてならないのが、 これまでの白書についていた巻末の「資料編」がごっそりと抜け落ちていること。 ホームページで見ることができるから情報公開が進んだ、 と錯覚してしまうが実際には重要なデータを隠したのである。 (中略)こうしたデータは国交省としてはあまり表沙汰になってほしくはない。 これまでの白書であれば巻末資料でチェックできた。しかし今後はできない。」
(週刊文春3月14日号「ニュースの考古学」より引用)

猪瀬氏は、国交省が所管する各種計画の達成率に関するデータが、 白書の CD-ROM 化に伴って「隠された」と指摘しているわけであるが、確かに該当データは、 ホームページ上でも白書とリンクが張られておらず、「隠された」といわれても仕方がない状況になっている。

実際には、市販品のCD-ROM白書には問題の資料は掲載されているが、情報化の拡大により、 特定の情報が「藁の中の針」状態になることは時々経験する。 また、「紙」時代には、分量の制限もあり掲載するデータ等については十分精査していたものが、 デジタル化により関連する情報は何でも盛り込む傾向があるのも否定できない。つまり、 情報化によって、量的には情報の公開性は高まるのであるが、 実用上からは却って「使いにくくなる」という現象が起こり得るのである。 といってデジタル化する情報を必要以上に制限することは許されない。結局は、 ライブラリ構造や検索機能を「利用者の立場で」整備することが一層求められることになる。

第2の危険性は、情報が複合されることにより、今まで必死に隠されていたことが白日にさらされる危険性である。 これについては、ある市役所の情報化担当者が次のような「懸念」を漏らしている。 「電子市役所によって、例えば、地区別の都市基盤整備状況の地図ができる。これと、 市会議員や市の有力者の情報をレイヤーすると、その影響も受けて整備された状況が一目でわかってしまうが、 市役所は合理的な説明ができない。」先の担当者は、それはそれで良いことだ、と付け加えていたが、 実際、これまで暗黙の了解とされてきたことが明らかになることのインパクトは、行政にとっては、 恐怖に値するものであろう。

しかし、考えてみれば、これは単に行政にとってだけの恐怖ではない。 つまり、市町村合併議論の多くが「総論賛成各論反対」となっているのにも象徴されるように、 わが国のまちづくりは、多かれ少なかれ「我田引水」的に行われてきており、 あまり根拠の無い地域間格差は歴然と存在する。 これまではそれを「まあまあ」の世界で「何となく」うやむやにしてきたのであるが、 それを地図というような誰が見てもわかる形で突きつけられるとなると、 かなり厄介な事態が発生することは容易に想像できる。

もっとも、この第2の危険性については、その結果、再び全国一律的なまちづくりに火がつくのか、それとも、「格差」を「特色」に転換でき得る建設的な議論が始まるのかによって、「危険性」だったのか「チャンス」だったのかが判定されることになろう。


太田 康嗣(おおた こうし)

株式会社 日本総合研究所 研究事業本部
地域経営クラスター クラスター長 主任研究員

専門分野: 都市・地域経営論、行政マネジメント、IT政策
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