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2008年9月6日
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日弁連主催シンポジウム 「個人情報は守れるか」(続編)

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基調講演の後は、約1時間半にわたって、パネルディスカッションと質疑応答の時間が設けられた。

パネルディスカッションでは、まず、日弁連情報問題対策委員会委員長の森田明氏から、「住民基本台帳ネットワークシステムに関する地方自治体アンケート」結果の説明が行われた。この調査は、全国3247市区町村を対象にし、今年の11月1から30日まで実施されたもの。

アンケートでは、「住基ネットに関する国からの援助は十分ですか?」という質問に対して、83パーセントが「足りない」と回答しており、また、「制度のメリット、デメリットはどちらが大きいですか?」という質問に対して、60パーセントが「どちらとも言えない」という回答をした。

この「どちらとも言えない」という回答に関して、日弁連の森田氏は、「やると決まっている制度に対して、良いか悪いかわからないという回答が6割もあるのは驚くべきことである」との見方を示した。また、メリットがはっきりしない中、小さい自治体にとっては負担が非常に大きく、仮に市町村合併となった場合、また一からやりなおしになってしまう可能性があると述べた。

さらに、森田氏は住基ネットに関して、国の説明は嘘が多いと言及した上で、「国は、この制度は中央集権ではなく、地方分権型の制度であると言っているが、このアンケート結果を見ると、それは全くの大嘘であり、そもそも、このネットワークに加わるかどうかを地方自治体は選択できないし、地方自治体の主体性はつぶされていくのである」と語った。

また、森田氏は、個人情報保護法案第5条に言及し、個人情報は、適法かつ適正な方法で取得されなければならないとされているが、ここでは、個人情報取扱事業者に関する規定のみが設けられているだけで、日本国憲法や国家公務員法等の法規で規律されているからという理由で、国の行政機関の個人情報の取得に関しては規定が設けられていないことを指摘した。森田氏は、「国の役人は法に従って職務を遂行していることになっているのだから、自治体の職員や民間の人達とは違うというが、機密費問題に見られるように、国の職員というのは、周りがやっていれば、合法・違法にもかかわらずやってしまうこともある」と述べた。

つづいて、プライバシー問題に詳しい斎藤貴男氏が発言し、「自分は番号の存在になり、自分の名前は、番号に対する単なるニックネームと化してしまう。国は我々を愚民、あるいは、だます対象と思っているのではないか? 住民票番号は、我々を監視するシステムのマスターキーになるだろう」と、住基ネットに対する不信感を述べた。

また、この問題に関して、「安全のため仕方がない」、あるいは、「悪いことをしていなければ良いのではないか?」という意見があることに関し、斎藤氏は、これらは「最悪の反応」であり、実際、我々に何が「悪いこと」なのか判断する権利はなく、「このシステムでは、国に反抗するだけで、あるいは、この集会に参加しただけで悪者になることもあるのであって、このようなシステムを構築することは、人間が人間に対して絶対にやってはいけないことである」と述べた。

また、住基ネットに対し反対の姿勢を示しつつも、住基ネットへの参加はやむを得ずと判断し、「杉並区住民基本台帳に係る個人情報の保護に関する条例」を提案した、山田宏杉並区長は、「住民票番号は、介護保険を使ったのであれば、保険事業者に知られることになるし、保険証を使ったのであれば、病院に流れるかもしれない。この番号が他に使われるという保証は無い」と、住基ネットのプライバシー保護の問題を指摘した。さらに、住基ネットのコストと利便性に関し、次のように述べた。

杉並区では、住基ネットの構築に1億3000万円の費用がかかり、また、年間2000万円の運営費がかかります。パスポートや運転免許証は、戸籍情報が載っている住民票でないと申請できないのに、住基ネットでは戸籍情報は流さないとなっており、こんなものはほとんど使い物にならない。また、どこでも住民票がとれて便利だと言っているけれども、そこらじゅうで住民票をとることってありますか? 私なら、土曜・日曜でも窓口開けるようにしますよ。それで済むことなのに、なんでこんなデカイシステムを作らなきゃならないのかさっぱりわからない。住基ネットが出来れば、転出証明は郵送で済むようになるというが、今でも転出証明は郵送でいいわけで、なんら変わりはない。

メリットがあるとしたら、カードでやるから、時間が少し短くなるということですが、自治体側の方からすれば、カードを持ってくるお客様と、持っていないお客様の両方に対応していくようになり、本当に事務が煩雑になってしまう。泣いてますよ現場は。なんで、こんな馬鹿なことをやるのか。自治体の現場でも、人員削減の効率化にはつながらないというのが定説になっていて、行革効果にはつながらない。

総務省は、5億円の行革効果につながるというが、未だに、積算効果というのは出ていない。そこまでしてなぜやりたいかというと、番号を共通化していきたいからであって、そういうことなら、そう堂々と言えばいいのであって、そうじゃないから、頭に来るんです。嘘を言うなよ。本当の本音を言え。そして、堂々と国民に対して説明して、そして、国民の了解を得てやるなら、僕も文句いいませんよ。それを姑息な手を使って、どこでも住民票が取れるなんて、なんか甘ったるいこと言って、この制度を導入しようとする、姑息なやりかたが気に入らないんです。

ルビコン川を渡るのに、これは多摩川ですって言って、浅いところを渡らせて、何歩か歩いた後に、後ろを振り向いてみたら、あれはルビコン川だったというようなことをやろうとしている訳でしょう。私は、これは国家の信頼そのものにかかわっていると思ってまして、これは、やはり、もう一度仕切りなおしというのが良いだろうと。

自治体の方々には、ぜひ、住基ネットが導入される時に向かって、それを円滑に導入するためという大義名分を議会に言っていただいて、「手続き条例」を作っていただく。この条例は、ネットワークを変更していく中で、区民の基本的人権が侵される可能性が高いと考えたときには、電算機の発信を切断するという権限を区長に与えている。そんな法律違反が許されるのかという意見も出るだろうが、基本的人権を守るためにやるのであって、基本的人権を侵すような国の法律が違憲であるという論争になっていくだろう。そういう歯止めを自らを守るためにやっていかなくてはダメだ。しかし、杉並だけでやっていても、杉並の情報が別のところで漏れる場合もあり、各自治体で、そういう取り組みをやっていただきたい。

この発言の後、引き続き行われた質疑応答では、山田宏杉並区長に対し、「国から指導やいやがらせがあったかどうか? 住基ネットに対し杉並区住民は反対しているのか?」という質問がなされ、それに対し、山田宏杉並区長は、「国から直接圧力は無かったし、住民は住基ネットにほとんどが反対している」と回答した。

また、櫻井よし子氏からは、「薬害エイズの場合は社会が反応してくれたが、住基ネットに対しては反応が今ひとつで、大半が知りませんでしたという回答であり、ジャーナリストの立場だけでは不十分と感じ、反対運動に参加した」ことが述べられた。さらに、斎藤貴男氏からは、「韓国では国民の個人データが根こそぎ北朝鮮に持っていかれることを懸念する声があったため、保守層でさえ、ICカードの導入には反対した。日本は、住基ネットとICカードの情報が、米国など他の国に流れてしまう危険性を含め、国家安全保障上の観点から、この問題を考える必要性がある」との指摘がなされた。

最後に、主催者側からは、総務省関係者や企業関係者にも声をかけたが、今回は来ていただけなかったと言及があった。

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