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2002年4月5日 00:00

「コピーコントロール CD」が問いかけるもの(3)

■購入した音楽を自由に使えない不満

レコード会社側の考えからすれば、違法複製を元から絶つために「コピーコントロールCD」の登場は不可避のものとも言える。しかし、消費者側から見れば納得のいかない点もある。コピーコントロールCDからは、違法な複製だけではなく、合法的な複製も不可能になるからだ。

例えば購入したCDを外出時に聞くために、CDからmp3に変換して携帯用のmp3プレーヤーで聞くことは上述の「私的使用の複製」にあたり、違法行為ではない。しかし今回のコピーコントロールCDではそれが不可能になる。同様に、CDからお気に入りの曲だけをCD-Rにまとめて録音すること、CDが痛まないようにパソコンにコピーして通常はこちらを聞くことも、「私的使用の複製」にあたるが、これも不可能になる。

違法な複製を防ぐために、合法的な複製まで禁じられる。ただで取得したものならともかく、対価を支払って購入したCDである。使用の仕方に法的な制約だけでなく、レコード会社が決めた制約にまで制限されるのは、消費者としては愉快なこととは言えまい。

音楽がアナログで流通していた時代は、私的使用のための複製は消費者が自由に行うことができた。MDによる私的使用のための複製に対しては、「補償金」という形で強制的に課金される仕組みが登場した。そして、パソコンやCD-Rへの私的複製は、「コピーコントロールCD」の登場により、複製そのものが強制的に制限される時代を迎えつつあるのだ。

■前提が崩れる著作権制度

著作権制度は、オリジナルの著作物があって、それを利用(主に複製)する権利を著作者が独占するというものだ。オリジナルとそのコピーはあくまで別のものであり、複製は容易にできないことが前提になっている。

しかし、デジタル化された著作物は比較的容易に複製物を、それも完全な複製物をつくることができる。ブロードバンドの普及でそれを流通させるのも容易になり、ますます著作者らによる「独占」が困難になってきた。だからこそ、別の技術で複製を困難にしなければならないというのが、「独占」を利益の源泉にしてきたレコード会社の事情であり、違法でない複製をも制限する理由だろう。逆に言えば、著作権制度の前提がそれほどまでに危機に瀕しているということではないだろうか。

現行の著作権法は昭和46年に施行されて以来、何度も改正が続けられてきた。ネット等を通じた「公衆送信権」を世界に先駆けて法体系に組み込むなど、これまで社会情勢や技術の変化に対応を続けてきたと言える。しかし、制度の前提条件が問われている中、抜本的な見直しが迫られているのではないだろうか。

著作権法の目的は「(前略)文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与すること」とされる(著作権法第一条)。これまで著作権は権利保護の観点ばかりが強調されてきたきらいがあるが、公正な利用なしに文化の発展に寄与することは出来ないだろう。複製が(違法なものも含めて)容易になれば消費者が、(合法的なものも含めて)困難になればレコード会社が有利な状況になると言えるが、デジタル化された著作物を前提として、著作者、(レコード会社などの)著作隣接権者、そして消費者といった関係者のバランスを考慮した制度設計が必要である。

「コピーコントロールCD」が問いかけているものは、意外に大きいのである。




入山 泰郎(いりやま やすお)

株式会社 日本総合研究所 研究事業本部
新社会創造クラスター 研究員

専門分野: 知的財産権、地方行政、地域振興ほか
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