公営ギャンブルと施行者の将来ビジョン
東京都のお台場を始め、カジノ構想が全国で沸き起こっているが、地方自治体が施行者となっている公営ギャンブル(公営競技)といえば、地方競馬、競艇、競輪、オートレースである。施行自治体数は、平成13年度で延べ380、実数で320自治体にのぼる。実数の内訳は、道府県21、市211、町80、村8、区23である。33自治体が2種以上の公営競技を施行している。単独で施行者となっている自治体のほか、組合や企業団をつくり施行している自治体が多い。
公営ギャンブルは市民の余暇、娯楽の目的のほかに、地方自治体にとっては、道路、学校、病院、下水道など社会公益事業を補助するための財源として位置づけられ、実際大きな役割を果たしてきた。しかし、バブルの崩壊以降、各競走場の入場者数、売上の減少により、事業収支が赤字の施行者がでてきた。地方競馬やオートレースでは、大半の開催自治体が単年度赤字になっており、より深刻な事態に陥っている。 これまでは、事業の悪化から撤退する市町村が増えても、別の市町村が肩代わりして継続するケースが多かったが、競走場が廃止になったところもある。兵庫県市町競輪事務組合(西宮市や尼崎市など19市1町で構成)は、「収益事業としての意義がなく、廃止もやむを得ない」と判断し、昨年3月西宮、甲子園の両競輪場は閉鎖となった。 そのような状況の中、公営ギャンブルからの寄付金で2005年日本国際博覧会(愛知万博)の会場建設資金の一部を賄おうという計画もある。会場建設費1,350億円のうち約220億円を公営ギャンブルや宝くじからの寄付金で賄おうというのだ。 昨年9月、愛知万博の会場建設資金を集める競艇の協賛レースが蒲郡競艇場で初めて開催された。協賛レースでは売上の3%が万博協会に寄付される。また今年2月には常滑競艇場でも協賛レースが開催される。協賛レースだけでなく、一般レースからの収益を充てることも検討しなればならなくなりそうだが、開催自治体の財政状況を考えるともっと身近に充当すべき補助事業も多く、単純に売上からの寄付に対する課題は多い。 過去、1985年つくば科学博や1990年大阪花博の際にこれらの公営ギャンブルからそれぞれ計196億円、計101億円が寄付されたという実績はあるものの、現在の社会経済情勢から判断して、それほどの寄付ができるとは考えにくい。 レジャー市場全般も沈滞を続けており、レジャー白書2002((財)自由時間デザイン協会)によると、ゲーム、ギャンブルなどの娯楽市場は前年比2.6%の減である。宝くじが前年比12.6%増と唯一市場を拡大しているものの公営競技は全てマイナス成長である。 各競走場は、ナイターレースや、3連単などの新しい投票券システム、充実した飲食施設などを導入して活性化を図り、なんとか売上の下げ止まりを抑える工夫をしている。中でも成功している競走場は、民間的マーケティング手法に基づいて、利用者のニーズの把握し、ターゲットを設定し、明確な将来ビジョンを策定しているところが多い。 場外投票券売場の増設に加えて、電話投票、インターネット投票、ケータイ電話での投票など、公営ギャンブルへの参加形態は広く開かれ、益々身近なものになっており、潜在するポテンシャルは大きなものがある。公営ギャンブルの今後を考える上で、施行者である地方自治体は、厳しい状況におかれているが、経営を活性化し、事業が健全に行われるためには、以下のような視点で総合的な事業計画の策定を行っていく必要があるのではないかと考える。 1.中長期的な収支予測 社会経済情勢と余暇市場の動向を踏まえ、中長期的な視野で利用者数、売上および収支予測を行う必要がある。 2.適正な設備投資 収支予測に基づき、過大投資を見直し、収入に見合った設備投資計画を策定する必要がある。 3.安定的な経営体制 運営、管理面の合理化を進め、景気や売上の変化に左右されない経営体質に改善していく必要がある。 4.ターゲットを明確にした集客対策 限られた予算で効果的に収入増を図るため、マーケティング手法によるターゲット分析を基にした効果的な手段の開発を行うとともに、収入機会の拡大を図る事業の導入、強化を図る必要がある。 5.イメージアップ戦略 公営ギャンブルに参加するファンへのサービスを向上するだけでなく、参加しない一般市民に対しても事業の公共性、公益性を社会に広くアピールし、公営競技のイメージアップを図る必要がある。 これらは、民間企業では従来から当たり前に行われてきたことであり、公営ギャンブルも硬直化した自治体経営からの脱却が求められている。カジノの実現も視野に入れ、健全で、より市民に開かれた公営ギャンブルが各地で開催されることを期待する。 (c) 日本総合研究所
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