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| ■ 実効があがる行政マネジメントシステム構築の秘訣はプロセスにあり |
レポート・バックナンバー |
| 著者: 日本総合研究所 村田 丈二 | プリント用画面 | メールで記事を転送する |
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筆者は、行政評価システム、バランスト・スコアカード(BSC)などの新たな経営手法の導入、組織・人事制度改革、業務改善等の行政マネジメント関連のコンサルティングを専門としている。ここ数年、行政評価(事務事業評価)システムが全国的に普及していることもあり、導入支援の機会が多くなっている。
最近の特徴は、BSCに代表される行政評価システムを進化・発展させた統合的なマネジメントシステムの構築に関する支援依頼が増えていることだ。具体的には、BSCをプラットフォームとして行政評価システムや他の管理システム(総合計画の進行管理、予算システム、定員管理、人事制度等)を統合していく手法で、既に、兵庫県姫路市をはじめ、いくつかの自治体で手がけている。自治体の関心がこのような経営手法に集まってきているのは、特に事務事業評価システムのみを単独の経営システムとして導入しただけでは、導入効果に限界が見えてきたからだと考えられる。
行政活動の基本単位である事務事業を評価することは、確かに自治体経営を改革するための第一歩であるが、分析や評価の結果から読み取った情報を活用して、次に展開していかなければそのような情報を得るために費やした労力や資金が無駄になってしまう。
自治体経営の根幹であるマネジメントシステムを構築するためには、それを機能させるプロセスの設計、言い換えればサブシステムを同時並行的に構築、あるいは再構築していくことが前提条件となる。筆者がマネジメントシステム(BSC)の構築を支援する場合でも、まず行政評価システムをコアに設計するが、同時に他の管理システム・制度との連携や評価結果の活用を含めた運用方法の開発に取り組むようにしている。行政評価システムの効力を最大限発揮させるためには、こうした一体的かつ統合的な仕組みの構築を目指すべきであるからだ。
こうした新たな取り組みにチャレンジする自治体にとっては、これまでの業務の在り方を大きく変えることであるだけに、このようなハードルを超えるためのプロセスが重要になってくる。企業経営で活用される発想や手法を導入するため、当然これまでの行政管理にはなかったような概念や専門知識が導入されるわけであるから、受け入れ側である自治体の現状に合った形に翻訳し、段階的に取り組んでいくことが大切である。
ただ、筆者が関与する自治体やその他いろんな自治体の動向を見ていると、自治体の考え方や導入のプロセスに問題があるケースが散見される。以下にその例の一部を示すので、新たなマネジメントシステムを構築される際の参考にしていただければと思う。
◆まずは自己分析(問題認識)と全体像(最終ゴール)を描くこと
健康状態や病名が分からなければ処方箋の書きようがないのと同じで、組織の実態、特に弱点を正確に把握していないと、どのような機能や特徴を持った行政評価システムや他の新しい手法を導入すればよいかを特定することは難しいし、仮に導入したとしても有効に活用できる可能性は低い。行政評価を導入する際の入門コースのような位置付けとなっている事務事業評価も、マネジメントシステムのコンセプトを明確にしてから着手しないと、有効に活用できず、制度として形骸化してしまう恐れがある。NPMの理論をベースに全体像を描いた上で、評価システムに取り組むようなプロセスを踏んでいなかった自治体でこのような傾向が見られる。
◆身の丈に合った仕組みの構築が必要
行政評価システムやその他の手法を導入する場合、外部に委託する場合が多いが、その際コンセプト策定から仕組みの設計まですべてを委託先に任せても、自分たちが理解し、身の丈に合ったものでなければマネジメントシステムとしては機能しない。自己分析の結果を踏まえて、自分たちの考え方、組織の体制などに合った仕組みを構築することが重要である。
例えば、他市での導入実績や過去に受託したいくつかの自治体間に共通する指標のデータベースなどを売りにするコンサルタント会社が提案する評価システムの仕組みをそのまま導入するケースがある。しかし、他市で成功したとしても、自分たちの考え方や組織体制にフィットしていなければ結局使い道のない道具になってしまう。さらに、地域の実情や施策に対する考え方が異なれば、指標やその数値が持つ意味は自治体間で異なるはずだ。
また、行政評価システムの普及に伴い、運用を支援する情報システムのパッケージ商品が提供されるようになってきた。評価に関連する作業負担を軽減するためには必要なツールであるが、導入プロセスを間違えるとせっかくのマネジメントシステムが機能しなくなるリスクがある。
例えば、実際のユーザー、使用目的、運用方法などが明らかにされていない状況で導入してしまうと、パッケージのコンセプトにユーザー側が引きずられる恐れがある。また評価や分析の実務トレーニングが十分でない段階で入れてしまうと原課では使いこなせず、現場はパニック状態に陥り、業務効率はかえって低下する。一般に、開発した会社のコンセプトとユーザー側の思いとがピッタリと一致することは少ないと考えられ、このような商品の導入には慎重に対応する必要がある。
本稿で論じているような機能するマネジメントシステム(行政評価システム)の場合は、自治体ごとにコンセプト、運用プロセスも異なってくると考えられる。そのため、基本的にはオーダーメイド型のシステムが必要と考えられ、筆者が支援している自治体に対してはそのような方向でアドバイスしている。
◆理屈より実践
昨今のインターネットの普及や文献での紹介などにより、他自治体が取り組んでいる行政評価システムなどの経営手法の情報は容易に入手できるようになり、また各地へ視察に出向く職員も多い。しかし、あまり理論武装に労力を注ぐよりも、職員が、問題意識を持ち、新しい仕組みの必要性や活用方法などについて納得できるようトレーニング(実務研修)を徹底的に行うことが必要である。そして、自分たちが描いたプランが実行可能なものか、職員にとって運用しやすいかを十分検証するとともに、仕組み自体に慣れることが最優先課題である。
ただ、このような未知の専門領域にチャレンジするには、自治体単独では限界があり、我々のような自治体経営改革のプロのサポートが不可欠となる。このような研修では、講師が一方的に話すことを聴講するだけでなく、出席者全員が参加し、実務体験をできるような研修の方が実践的で身に付く方法である。著名人を講師に呼んで、理論ばかりの講演を1回聴いた程度では、実務には活かせない。
◆改革の主役は自治体職員
このような経営改革を実践していく際の我々専門家のミッションは、まず自治体の組織構造、業務体制・ルール、首長の考え方や職員の意識などを十分把握した上で、どのような処方箋が適しているのか、自治体の身の丈にあったプラン(マネジメントシステムの全体像)を描き、それを導入していく過程で適切なアドバイスをし、実行の際のサポートをすることである。
自治体側は、自分たちの課題を認識し、解決手段として何が適しているか、実行していくためにどのような障害を取り払わなければならないかを考えなければならない。この種の委託業務は、本来我々専門家が全てを請負って進めるものではなく、自治体と共同で取り組むべきものである。いくら我々の支援を受けても、自治体が自分たちの基本スタンスを明確にしていないと、機能する仕組みを構築することは難しい。自治体経営を改革するためのマネジメントシステム構築の主役は、あくまでも自治体職員である。
(c) 日本総合研究所
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村田 丈二
株式会社 日本総合研究所
行政マネジメントクラスター長 主任研究員
専門分野:行政マネジメント、組織活動評価(バランスト・スコアカード)、行政評価
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