ここが変だよ eCRM 〜付加情報よりも、まずは基本情報を!〜
先日、自宅にIP電話を設置した時のことである。マニュアルの説明が分かりづらかったので、プロバイダのウェブサイトにアクセスした。しかし、サイトにも簡単な FAQ(よくある質問)が載っている程度で、詳しい情報が載っていなかった。仕方ないので、次の日、カスタマーセンターに電話をした。10分近く待たされた後、オペレータに言われた言葉が「ここでは設定に関する質問のみ受けつけております。そのような技術的な質問はご自分で調べて下さい。」さすがに腹が立ち、クレームメールを出した。その後、謝罪のメールが届いたが、なんとも後味の悪い一件であった。
一時の eCRM ブームは過ぎた感もあるが、多くの企業が顧客の囲い込みを図るべく、ウェブサイトやeメールを通じた顧客とのコミュニケーション活動に力を入れている。しかし、一部の先進事例が華々しく紹介されたせいか、顧客に、「付加的な情報やサービス」を提供することに目が行き過ぎ、もっと基本的で重要なことを実践できていない企業が少なくない気がする。ここでいう「付加的な情報やサービス」とは、例えば、顧客データをもとに、それぞれの顧客の嗜好や趣味に合った商品をウェブサイトに表示する、自社の商品・サービスに関わる情報だけでなく生活情報などを合わせて提供する、などである。 冒頭で紹介したインターネット・プロバイダも、会員向けのメールマガジンを発行し、その中でエンターテイメントやレジャーの情報などを配信している。これらの取組みが悪いとは言わない。しかし、果たしてユーザは、加入しているインターネット・プロバイダに、エンターテイメントやレジャー情報の提供を求めているであろうか。基本は、あくまでも安くて良いインターネット・サービスの提供を期待しているはずだ。そして、求める情報という観点から言えば、機器の設定方法やトラブルへの対処法の情報をきめ細かく提供してくれることを望むのではないか。実際、上述のケースでも、そもそも、サイトに必要な情報が詳しく載っていれば、わざわざコールセンターに電話をして10分も待つ必要はなかったのである。 もっとも、このプロバイダが抱える問題はもっと根深い。マニュアルに載っているような事柄に関する質問に回答できないのは、社員間の情報共有や部門間の連携が行われていないことの証である。また、長々と待たせた顧客に「自分で調べてください」などと言えてしまうのは、社員の意識やその裏にある社員教育、企業風土に問題があると言わざるを得ない。このような状態で、いくらITを活用して付加的な情報・サービスを提供しても、顧客満足を高められるわけがない。 この企業の例は少し極端かもしれないが、同じように、ウェブサイトやeメールを通じた付加的な情報やサービスの提供に力を入れる一方で、ウェブサイトでユーザが最も必要としているベーシックな情報を提供していなかったり、それ以前の問題として、顧客対応の基本が実践できていなかったりする企業は少なくない。 このような状態にある企業は、顧客とのコミュニケーションの高度化を急ぐべきではない。まず取り組むべきことは、顧客の求めるベーシックな情報、例えば、商品に関する基本的な情報、アフターサービス情報などを、ウェブサイトやコールセンターなどのチャネルで確実に提供できるようにすることである。すぐに実現することが難しいとしても、少なくともそのような状態に向かって努力していくことが重要だ。 実際に、これを実現しようとすると、顧客とのコミュニケーションを行うための社内基盤(業務のやり方、体制、情報システムなど)を地道に整備していくことが求められる。この辺りについては、次回のコラムで紹介したい。(次回に続く) (c) 日本総合研究所
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