電子政府とエンジニアリング業界
1. e-Japan 構想
長引く不況を脱出すべく官民を挙げての必死の努力が続けられているが、おおかたの予想どおり、小手先の構造改革は何等の抜本的な問題解決をもたらさず、失われた10年から失われつつある20年に突入しつつある、との指摘がある。今後どのような道筋を経て復活を果たすのかは、まだ全くの未知数であるが、国際競争力の回復の手段として、IT技術の活用が大きな要素であることは衆目の一致するところである。 日本政府でも e-Japan 構想の下に、さまざまな政策が進められている。これらは対象とする、G(政府)、B(企業)、C(消費者)の略号を用いた表現として、1)insideG、2)GtoG(省庁間または中央省庁と地方自治体など)、3)GtoB、4)GtoC、5)insideB、6)BtoB、7)BtoC のように表わすことができる。 その中で政府自らの政策として「電子政府」として捉えられるのが 1)から 4)であり、現実に最も力が入れられているのは 1)> 4)> 3)のように感じられる。この中でエンジニアリング業界が深く関わる 3)GtoB の接点として、(1)国土交通省の進める電子応札と電子納品への対応と、(2)工場の建設に関わる各種「官庁申請の電子化」問題への対応という二つの課題がある。 2. プラント関連官庁申請業務で多くの無駄が 工場建設や保守の際には、保安4法(内容は後述)をはじめとするさまざまな法律や関連規則・条令に基づいて、膨大な書類と図面の提出が求められ、多大なる労力を強いられている。 現状のプラント関連官庁申請は、多くの官庁にまたがり、また地方自治体や諸協会が関与し、各々独自の審査要綱が適用されるために、申請側である個別企業がその差を考慮し、事前協議や相談等で主体的に調整しながら、申請手続きに多大な労力を割いて対応している。その中には重複したデータ項目も多く、また地方自治体の担当官により解釈が異なるなど、わが国の産業の高コスト構造の要因の一つとも言える。 3. ペガ研究会 (財)エンジニアリング振興協会では昨年度より PeGA(Plant e-Government Application)研究会として、主として電子データ化とその標準化の観点からこの問題に取り組んでいる。 昨年度の報告書には次の検討結果が集約されている。 a.現状の申請手続きに係る課題について、三つの視点に分けて整理 (1)申請側、(2)受理・許可側、および(3)共通。 b. プラント関連官庁申請で扱われるデータの整理 プラントに係る代表的な法律には、以下のものがある。また、各々所轄の官庁も異なっている。 ・保安4法(高圧ガス法、消防法、コンビナート法、労働安全衛生法) ・各種環境関連法規(大気・水質・騒音の規制、環境アセスメント) ・その他 c. 上記法律が扱うデータの整合性と標準化の検討 4. 高価値データを目指そう 「高価値データ」とは、別名「モデリングデータ」とも言われ、そのデータのもつ根源的な意味合いを解析し、他のデータとの関連付けを明らかにして構築されるものである。 これを利用することでさまざまな領域のデータをリンクしたり、整合性を保ったりすることが従来よりもはるかに容易になり、何よりも「要求仕様が変化した時」への対応が取り易くなる。 プラント関連官庁申請では消防法に関わる申請の電子化が先行開発されているが、その多くは手続き的な書類の XML によるオンライン化であり、そこに添付される膨大な図面については当面 PDF のようなレベルのデータが想定されている。 システム構築に要するコストよりも、時代の変化に対応させながらそのシステムを維持していくコストの方がはるかに大きい。「単なる電子化」ではなく、モデル化を指向した電子化に取り組んでいくべきである。 5. 法律モデルの可能性 PeGA 研究会の今年度の活動として、官庁申請の元になる関連法規そのものの電子モデルデータ化ができないか、Semantic Web 技術の適用の切り口から、経済産業省、(財)エンジニアリング振興協会、プラントオーナ、システム専門家、および電子データによる法律出版社の有志が集まって調査を行っている。極めて難易度の高いテーマであるが、もし実現すればその経済効果は計り知れないものとなろう。
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