環境技術−環境技術の方法
3.情報環境技術の方法
「情報システムの環境問題」(前回シリーズ1で解説)は、環境要素が非本質的なものかどうかという、認識する側の主観性・恣意性から発生する。 問題の発生により、それまでは無視できた要素の関連づけが新たに必要となり、旧来のシステムのとらえ方に枠組みの修正を迫る。この変化は、特に人間が多様に関係する高次の情報システム(人=機械システム、社会システム)において著しい。高度な情報システムの技術は、必ず人工化された環境問題、環境不適合の問題に行き着く。 こう考えれば、採るべき対処法は次のようになる:A) システムをとらえるにあたって、一見して完全に異なると思えるシステムや構成要素間に一線を引かないこと(パラダイムをシステムの環境領域にまで広げること)、B) 複雑さを上手に取扱い、単純化する方法を考案し、取り入れること(関連するシステムや構成要素を、独自に変化する要素の集まり−プロセスの集合−とみなし、それらの階層性と創発性−Emergency:相互関連から発現する新しい性質−とを重視する全体思考を取り入れること)。 システムの環境を定義づけずにシステムを定義できないし、環境によって何がシステムであり何がシステムでないかが識別される。この理解の原則は三つである:A) 情報システムと環境の関係における見かけ上の複雑さは、接触面(インターフェース)における相互の階層性と集約度、抽象度のレベルによって決定される、B) 情報システムの挙動は、「情報状態の変化」よりも「知識状態の変化」ととらえることによって、より単純なものとして理解される、C) システムと環境の多様性は、各々の構成要素とその関係の変化を、双方の様相から記述できるパラダイムの枠組によって克服できる。 この方法と理解にならってソフトウェア工学を始めとする情報システム技術の方法原理を見直し洗練することで、システム技術を、技術者にとって能率的・効率的で、安全かつ操作し易い、理解し易い、馴染み易いものにすることができる。最近の「モデル駆動アプローチ」など、参照アーキテクチャから始まる方法論がそれだ。 4.情報環境の維持 情報システムの環境問題に適切に応えるためには二つの方策が有効である:A) 情報システムの環境の諸相を明らかにし、情報システムの処理機能を高次の、人=機械共存系の相互作用、さらには「知識状態を変化させる活動」ととらえること、B) 従来の物的情報処理機構としての理解に、抽象度のレベル(知識構造)を持つコミュニケーション機構としての理解を加えること。 システムの情報環境とは、あるシステム(の機能・構成要素)の挙動を規制する上位・下位システム、あるいは自身の依存要素・作用要素とその連合関係の集合である(下記)。 A) 制約環境(所与の使命・組織資源、標準、技術水準、契約・知識・・・)、B) 可変環境(制約環境、目標、問題、技術・・・)C) 偶変環境(動機、戦略、意図、欲求・・・)、D) 外辺環境(地域文化、外部システム・・・)E) 不変環境(時代の要請、地理的体系・・・)。 このうち、関心の対象となるシステム要素の生存を規定するシステム要素(とその要素間の関係)集合を、総称して「基盤(インフラストラクチャ)」と呼ぶ。組織基盤、経済基盤、技術基盤、社会環境基盤といった概念は、対象概念領域における環境の構成部分であって、依存関係としての性質を持つ。システムのモデル化にあたってそのライフサイクルを確たるものとするためには、生存を脅かす(可能性がある)環境の要素についてはもちろん、生存の前提である環境要素についても、何らかの形式で明確に定義し、モデルに含めておくことが重要である。これがないと、システムの生存が保証されないばかりでなく、その正常な成長(維持)も非常に困難になる。 制約環境(の一部)及び可変環境は、働きかけによって短期に変えることができる。その他の環境も、長期的には、やり方によっては、変えることができる。 情報環境をこのようにとらえることによって、情報環境整備の方策が定まる。技術アセスメントの方法が、「特定の技術によってもたらされるインパクト(影響)の正確な把握」を最初のステップとしてあげるのも、こうした理由による。
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