モデル駆動アプローチの技術
1. 参照モデルと駆動(driven)アプローチ
モデルと聞いて、プラモデルやファッションモデル、モックアップモデル等を連想する人も多いだろう。一般にITでいうモデルとは「ある性質で対象を決め、恣意的に条件を設定して変数化することによって作られた、現実の雛形」である。この雛形、すなわちモデルは、ある場合には「重力の法則」のような数式であったり、社会情報システムのようなアーキテクチャ図であったりする。 モデルを分類すれば、1) 対象システムの性質にもとづく(具体的←模型/プラネタリウム/マネキン、概念的←建築物、形式的←運動予測)、2) モデルの機能にもとづく(発見的←流体、説明的←組織図、操作的←風洞内模型、定式化・自動化←経営シミュレーション/アプリケーションプログラム)、3) モデルの働く原理にもとづく(縮尺←模型/アイコン、相似←地図、観念←暗箱、構造←ミニチュア、数学←数式、抽象←言語)、となる。 システム工学でいわれる(参照)モデルとは、関係する人々(ステークホルダ)が相互参照と緊密な協調を可能とする、特定の枠組み(フレームワーク)によって描かれたアーキテクチャのことを指している。 かってプログラミングの方法として、機能をプロセスモデルで表現するイベント(事象)駆動や、実行構造モデルで表現するデータ駆動などの方式があった。さらにメッセージ駆動型や顧客駆動型、工学駆動型など、「駆動方式(アプローチ)」の用語が定着している。 駆動という言葉は、「準拠すべきモデルを定義することで、アプリケーションやサービスの骨格が自動的に決定され、実装や要素管理などもモデルを巡って容易に行える」という意味を持っている。ここで使われる「モデル」が「参照モデル」を意味している。 2. ビジネス駆動アプローチ 以上から、ビジネス駆動の意味は明らかだ。行政とビジネスの決定的な違いは、前者が所与の使命に忠実であるのに対し、後者は自ら使命を創出するという点にある。米国連邦政府が国をあげて推進する Federal Enterprise Architecture が「ビジネス駆動」を標榜するのは、旧来の行政のあり方を変え、新たな使命を定義しようとする決意の表明である。 情報システムの統合に関連した最近の諸問題は、情報システムの統合というレベルではなく、「ビジネスの統合」あるいは「ビジネスと情報システムの再統合」という課題への不適応から生じている。従来の情報システム開発の方法と体制では、この課題に適切に対処できなくなってきた。そこからビジネス駆動アプローチという、加えてモデル駆動アプローチという、情報システム構築のアプローチが登場する。 モデル駆動アプローチは、オブジェクト指向アプローチやWebサービスアプローチといった方法論に依存するのではなく、これを実装するための参照アーキテクチャである。高速、高品質、廉価に変化するIT環境では、オープンな標準技術も変わらざるをえない。現在の標準技術が、組織体の情報基盤として適用され続ける保証はまったくないのだ 。 以前「システム統合の技術」で解説したように、企業や行政機関の変革と進化の原動力には、いくつかのタイプがある:1) 修正型(不具合の解消)、2) 適応型(技術変化へ、要求変化へ)、3) 完全化型(再構築、システムの統合)、4) 新規型(更なる情報化)。 こうした課題を担う主体は、ITのユーザーにある。扱うものがユーザーのビジネスである限り、結果を受け入れるのはユーザーであり、ベンダーに期待されるのはせいぜいが次善の提案である。高度情報化社会へ立ち向かうには、ビジネスと情報システムを一体化した明確な設計図(エンタープライズ・アーキテクチャ)を描き上げ、それをもとに必要な技術やソリューション、サービスを使っていくしかない。 3. モデル駆動アプローチ エンタープライズ・アーキテクチャの方法は、実装技術主導で行われることが多かった従来の情報システム開発の方法と大きく異なる。上位の方法がビジネス駆動アプローチであり、下位の方法がモデル駆動アプローチである。 2002年6月、オープン・グループ(TOG)とオブジェクト・マネジメント・グループ(OMG)が締結したパートナーシップは、各 The Open Group Architectural Framework (TOGAF)と OMG/MDA(Model Driven Architecture)という2つのイニシアティブを生んだ。TOGAF はビジネス駆動型アーキテクチャを開発するためのフレームワークで、段階的な方法論とITアーキテクチャを設計するためのサポートツールのセットを提供する。MDA は、モデルベースの堅実な設計を保証するアーキテクチャを基本とした包括的アプローチで、モデルに基づき、実装やプラットフォームに依存しない開発環境、急速に変化する標準やアプリケーション基盤技術の変化にあわせたアプリケーションの再実装を可能にする。 MDA は、広くサポートされている統一モデリング言語 UML (Unified Modeling Language)を核とし、相互運用するための XMI (XMLMetadata Interchange)、モデリング実装技術である CWM(Common Warehouse Metamodel)、MOF(Meta Object Facility)そしてミドルウェアである CORBA (Common Object Request Broker Architecture)や Java、.NET などを含む。最も重要なのは、MDA により特定の産業分野に特化した標準モデルを構築でき、新しい技術の登場や既存技術の趨勢に関わらず将来にわたるシステム統合を容易とする点だ。 もちろんアプリケーションを開発するためには、ユニバーサル・コンピューティングやセキュリティ、J2EE や SOAP、802.11や TRON といった実装技術が必要だ。いずれもビジネス・ソリューションや多様な製品として展開されており、多くの選択肢を提供している。
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