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2009年7月4日
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電子政府活用の視点からの一考察

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1. 行政サービスへの期待

行政機関への手続きで、その煩雑さや用語の難解さなどで悩まれた経験をお持ちの方は多いと思う。これは企業にとっても同様で、組織の大きい企業などは行政関連業務専任の担当者を設置しているが、中規模以下の企業では専任体制を設置するだけのゆとりはない。そのため、社長自らが書類を抱えて役所の窓口に日参するような光景は珍しくない。

2001年10月総務省が発表した「電子政府・電子自治体推進プログラム」では、日常生活や企業活動の各場面における電子行政サービスのイメージが描かれている。そこでは、行政手続きや納税、行政情報の照会がインターネットを通じて24時間提供され、「行政運営の簡素化、効率化及び透明性の向上や国民の利便性の向上を目的と」する電子行政・電子自治体が実現するとされている。

会社を起こしたい、輸入や輸出を行いたい、証明書発行を申請したい等、利用者は常に何らかの目的を持って行政サービスを利用する。その際には、政府や自治体に対しどういう手続を行う必要があるか、またどの行政窓口がその業務を管轄しているのかなどということは、本来利用者が意識しなくてもサービスを受けられることが望ましい。

インターネットを活用することで、行政組織や窓口を横断して目的の手続きやサービスを達成することができる、これは電子政府へ最も期待することと言ってもいいだろう。

2. 行政ポータルが最初の一歩 ―― 海外先進事例に見る

その際、利用者と行政を結びつける窓口が行政ポータルである。ポータルは、複雑かつ難解な行政サービスの中から、必要な目的を導きだすナビゲーションの役割を持つ。電子政府の使い勝手はポータル設計の如何で決まると言っても決して過言ではなく、そのためには行政組織を横断した総合的なグランドデザインを行うことが必須でもある。

同時に、電子政府のポータルはインターネット時代における国の顔でもある。その国の政治・経済・文化等々の在り様がポータルを通じて世界に発信させる。これは、経済のグローバル化の今日、様々な取引がインターネットを介して行われていることを考えると、国家経済力を向上させる上で非常に重要なポイントであることが分かる。

ポータルを中心に世界の電子政府の取り組みを俯瞰すると、参考となるものが多くある。

(1)官官連携によるシームレスなサービスの実現

官官連携とは、中央政府や州政府・自治体などが縦横の線で連携が採られていることで、シームレスな総合行政サービスが実現できているケースである。その代表的な事例としてカナダの電子政府がある。

カナダの電子政府の最大の特徴は、連邦政府・州政府・自治体のサイトが、共通のデザイン、共通のサービスメニューによるサービスを提供している点で特筆すべき特徴を持っている。ポータルを利用する人は、同じ画面ストラクチャのなかで、全く違和感なしに目的の情報やサービスが得られるよう配慮がなされている。

カナダでは、126の連邦政府、州政府および関係機関の1600のプログラムとサービスが電子化されているが、高度なナビゲーション機能により、利用者がどのサイトにアクセスすれば必要とする行政サービスが得られるのか迷うことがない。また、迷ったときは、強力なナビゲーション機能(‘How Do I....’)やサーチ機能(‘Search’)を使って、最短の労力で間違いなく必要とする行政サービスが得られるように設計されている。

こうした特徴を有するカナダの電子政府は、「政府オンライン委員会(Government On-Line Advisory Panel)」の強力なリーダーシップによって推進されており、そのメンバーは公共/ビジネス/ハイテクセクター/文教/ボランティアの各民間団体代表によって成り立っている。

(2)官民連携による高付加価値サービスの実現

官民連携とは、行政情報と民間企業の展開する情報を複合的に提供することで、付加価値の高い情報をワンストップで提供しているケースである。

引越し用の専用サイトで氏名と新旧住所を入力することで、引越しに伴う行政への申請や電気・ガス・水道といった公共機関への手続き、さらには金融機関やカード会社、スポーツジムといった民間企業への手続きまでワンストップで行うことができる、英国の“I have moved.com”などがその代表的なケースである。ここでは約750社のサービスが可能である。

香港特別行政区のサイト“ESD life”は、民間企業が運営する行政サイトである。ここで展開されている市民向けサービス“Life Event Index”は、産まれてから人生の全てにわたるイベントで必要な行政サービスや関係する民間サービスまでを体系化し、総合的に提供する情報ページである。

また、米国 IRS(内国歳入庁)は、官民連携を組織的に展開している事例として、多くの示唆を与えてくれる。税務申告に伴うあらゆる処理を「適格 IRS 電子申告プロバイダ」に委託することで、納税申告を早めることで還付期間を短縮し、プロバイダに対しても新規ビジネス創出の機会を提供している。IRS の事務効率化にも当然繋がっている。

以上のように、行政サービスを官民連携により民間力を効果的に導入することで、これまでにない行政サービスの向上効果がもたらされる可能性が考えられる。

(3)多国語対応による海外への開かれた窓口

電子政府の窓口は、海外への開かれた窓口でもある。電子政府窓口を通じて、外国資本や人材の導入など様々な国際間のコラボレーションも期待できる。

先ほど紹介したカナダの電子政府の場合、カナダ連邦政府総合サイトのトップページに、外国人の入口(Services for Non-Canadians)があり、そこでは6ヶ国語による海外向け情報やサービスのためのサイトが展開されている。ベースの政策である「カナダの世界への接続(Connecting Canada to the World)」は、「カナダが新しいナレッジベースの経済の中心となることで、世界の投資家にとって魅力的な国家となる」ことを目標にした、カナダIT戦略重点分野の一つである。

3. 日本の電子政府の方向性

電子政府は国家戦略の一翼を担う重要な施策でもある。すなわち、インターネット利用の促進や行政手続の合理化等の効果のほかに、1) 企業の負担軽減と積極的な企業の育成、2) 官民パートナーシップによる企業のビジネスチャンスの拡大、3) 政府調達への参加機会の拡大、4) 電子政府システム構築を通じたIT技術開発の場の提供、5) 電子商取引市場拡大のための場の提供、といったビジョンを描くことができる。

電子政府への取り組みの過程で、新しいビジネスが創生されたり、グローバル化などによるビジネスチャンスを生じたり、効率化に伴う様々なコストの低減も可能になる。まさに電子政府は、新産業育成と既存産業高度化を推進するためのドライバであるといえよう。

「Regulation から Facilitation & Collaboration」という標語が使われだしているが、政府(行政機能と政治機能を含めて)とは国民が「税金」という名の資金を出し合って国の経営を共同で行うための仕組みであり、電子政府は国の経営上の有効な武器であるという認識をもつことが大事ではなかろうか。

海外電子政府の代表的な事例に比べて、日本の電子政府にはまだまだ多くの課題が残されている。紙面の関係で日本についての記述は割愛するが、「行政機関は民間に情報やサービスを与えるもの」という発想を一歩進め、国民と共同で国家経営を推進するための推進基盤として電子政府の活用を考えるべき時期に来ていると思われる。

安達 和夫

電子商取引推進協議会《ECOM》/主席研究員


提供:日本ユニシスRe-Enterprising 日本ユニシス

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