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2008年10月12日
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デジタル化されたデータの流通

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1. デジタル化されたデータの流通特性

P2P のファイル交換について、米国の音楽業界を震撼させたナプスター訴訟の連邦控訴審判決は、「違法性」を、ユーザーが他人の MP3 ファイルをコピーする行為であるとした。「ナプスター側には防止責任を問う」というのだ。コピー可能な状態に置くだけで違法とすると、ISP 事業そのものが法に抵触するおそれがあり、幇助責任は問えないという。

全米レコード協会(RIAA)が準備している、違法ファイル交換常習者数千人規模の著作権違反訴訟に対して、電子フロンティア財団(EFF)がインターネット上で合法的にファイル交換できるしくみの構築を提案している。ファイル交換ソフトウェアの利用者達は黙殺しているが。

日本でも、ソフトウェア使用許諾契約違反の訴状で、逮捕者が続出している。これらは氷山の一角として、デジタル化されたデータの著作権、所有権(排他的財産権/使用権)等の諸権利が誰に帰属するかという、古くからの問題を改めて投げかけている。

e-Japan で紙ベースから変換される、あるいは新たに生産されるデジタル化されたデータは、現実の物と違って器に納めるという制約がなく、最適と考えるやり方で格納できる。人の社会生活は、長い間「物の流通」によって成り立ってきた。「信用」という無形物が精緻で複雑な流通機構を進化させてきたとはいえ、物の「所有」が社会の生存前提だった。

デジタル化がこの前提を覆しつつある。デジタル化されたデータの格納には、何が何処にどのようにあるかを示す「索引」が規格化された形で存在すれば、ことは足りる。器に収まっていれば個別に保管・管理・流通させられるが、デジタル化されたデータをこれと同じに扱おうというのが時代錯誤の発想、ということになる。実はこの錯誤の発想が、音楽や映像等のマルチメディアデータ、国民と行政の知的公共財・知的財産たる行政サービスの情報やプログラム、手続や最適化手法などのデジタル化されたデータの権利の帰属を曖昧にし、適切な管理を困難にしている原因だ。

デジタル化されたデータの際だった特徴は、格納場所に特定されず、他人に分け与えても減らないし、内容も変化しないという性質である。「対価を要求するデータの流通」という面から見ると、この特徴は大きな利便性を生む。

高度情報化社会、あるいは知識産業社会では分散知、すなわちデジタル化されたデータが産業の中核となる。ということは、所有財という富の奪い合いに終始した人間の闘いの歴史に終止符を打つことにもなりうる大事件なのだ。

2. 超流通への胎動

デジタル化されたデータは、物理的な媒体を介在させずに流通させることができる。インターネットを使えばデジタル商品としてネット上で販売、配送することができる。非梱包型の流通が可能で、梱包費用が不要になり、流通在庫によるコスト負担の心配もない。流通量が増加しても配送コストはほとんど増加しない。さらに単品売りやバラ売りも自在である。決済すら電子的に行える。

インターネットは、デジタル化されたデータの生産者(著作者、編集者、仲介者)と消費者(利用者、住民、顧客)とを、直接結びつけるという働きを可能にする。

旧来の、電子透かし技術等を使って不正コピーを調べる権利保護のやり方は、不正コピーを抑制する効果はあるが、防止はできない。そこで不正コピー根絶の試みとして考案、開発されてきたのが、「超流通(Superdistribution)」と呼ばれるしくみである。

1983年に筑波大の森亮一名誉教授が超流通という概念とそれを実現するためのアーキテクチャを発表した。当初の名前はソフトウェア・サービス・システム(水道 ―Water Service System― に由来)であり、有料ソフトウェアの大量かつ安全な流通を目論んだものだった。利用者がソフトウェアをコピーすることは自由であり、ファイルシステムやネットワークノードなど任意の場所へ格納し、自由に呼びだして実行でき、料金を支払うだけで、匿名で試用・利用できる方式から権利者の指定した利用者だけに限って利用を許す方式まで幅広い許諾供与方式を提供できる、といったものだった。

中核となる要素は、電子的に添付される、使用条件を規定する「超流通ラベル」にある。

1990年以降、コンピュータプログラムを主とする実行型デジタル情報ばかりでなく、音楽や映像、データベースを主とする参照型のデジタル情報の取り扱いも含められた。超流通は革新的な流通方式であり、有料のデジタルコンテンツの流通についてより適切な解を提供できるとされる。国内外の情報産業各社が発表している次世代の分散デジタルコンテンツ流通システムの多くは、この超流通の概念に典拠している。

超流通では、デジタル化されたデータの利用に応じて課金する。つまり、データの入手・流通経路を問わずに権利者の利益が守られる。知り合いや交換相手からコピーすることも正当な入手経路の一つなので、超流通の世界では不正コピーが原理的に存在しない。

生産者の権利保護と、対立する陣営の抗争については続編で解説するとして、ICタグを使った物の流通(物流)管理や電子割符(e-Tally)によるデジタル化されたデータの分割流通といった、新たな流通技術が実用化され始めた現在、分散デジタルコンテンツ流通の望ましい姿を描くのはさして困難ではなくなりつつある。

提供:日本ユニシスITコンサルティング サービス

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