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2008年10月11日
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デジタル化されたデータの権利保護における対立

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1. 権利保護における対立の構図

流通における現在の著作権管理のしくみは流動的である。日本では旧来は「仲介業務法」に、2001年10月からはこれに替わって、規制緩和と著作物の利用実態に合わせた「著作権等管理事業法」に制度的基盤が置かれる。楽曲・歌詞の著作権を独占的に管理してきた JASRAC(日本音楽著作権協会)に加え、3社が事業参入を果たした。

政府の意向を受けて ACCS(コンピュータソフトウェア著作権協会)が設立され、日本レコード協会他の関係団体とともにデジタル著作物の権利保護啓蒙に乗り出している。

ネットワーク上で音楽や映像等デジタル化されたデータを安全に流通させられるとなれば、配信サーバーを海外に求めて権利使用料の安い管理団体と契約し、合法的に楽曲を販売することもできる。著作権者は困らないが、流通の空洞化と税収上の問題が大きい。

権利の側面と商業的なインセンティブが強調され、注目されるが、デジタル化されたデータは知的活動のための「共通の言葉」であって、これに独占的な権利を設定することは技術革新の停滞を生むという、知識自由主義からの指摘もある。

対立の構図を燻りだしたのが P2P(peer to peer)ビジネスへの提訴だ。裁かれているのは実は著作権の根底となっている(私的)所有権という近代産業の概念そのものであって、Napster や Madster ではない。早くから違法コピーの問題が顕在化したデジタル音楽CDの分野においては、Serial Copy Management System の導入と不正コピーによる見込み損失分を予め料金に上乗せする付加金制度の導入によって一応の解決を見ていた。

2. 対立の底流

インターネットが揺るがせているのは、こうした旧来の「所有という権利」の枠組みだ。

サーバーが一切要らない(つまり取締れない)タイプの P2P 技術は、権利概念自身の存立すら危うくする。単なるプログラムやデータの公開・交換手段が、知識の交換手段に、さらには権利を主張する手段に変貌している、というのが対立の構図の底流である。

ソフトウェア分野におけるオープンソース活動の公有化(自由な流通)と私有化(囲い込み)の活動は、遥かに大規模な対立の構図を鮮明にしつつある。要約すれば、技術の進歩を著作権(所有権)がどこまで妨げていいのかという問題に行き着く。

オープンソース支持者と商業ソフトウェア支持者の主要な論点を整理してみる。

2.1 オープンソース支持者の論点 オープンソースの世界では、ソフトウェアが簡単に共有でき、協力して問題解決にあたれ、コンピュータ/プログラミングに詳しい人間に自由にソフトウェアを改良してもらえる。数年でゼロからソフトウェア界の一大勢力へと成長し、数々の問題を解決しながら何百万人というユーザを獲得してきた。その動きが減速する理由はどこにも見あたらない。

オープンソースの環境では、何年も前に買ったソフトウェアがろくに使わないうちにお払箱になってしまうという不合理は回避される。排他的な所有権に基づいてソフトウェアの使用をとらえる考え方は、反社会的であり、非倫理的でもある。

2.2 商業ソフトウェア支持者の論点 商業ソフトウェア開発モデルはイノベーションを促進する。なぜなら、このモデルは「顧客」のニーズを満たし、何億人という利用者に大きな力を与えるからだ。事実このモデルは、米国内200万人以上の人員を雇用している20万社を超えるソフトウェア企業にとっての土台であり、何千億ドルもの収益を生み出している。

イノベーションに最適な環境とは、より大きな「ソフトウェア・エコシステム」内で、オープンソースソフトウェアと商業ソフトウェアが共存することだ。今ここにある環境で、ソフトウェアの作業に携わるさまざまな組織や個人利用者間で行っている相互作用サイクルによって、何十年にもわたってイノベーションが維持されてきた。

3. 対立の解消 ――権利保護の「情報倫理」

ここで、ITの標準化で高い有効性を発揮したのは、公式標準か実質(de facto)標準かという二者択一ではなく、ITにおける三セク、知的資産の無償自由流通というセクター活動を行う IETF や W3C のような任意団体の「合意による標準」だったことを思い起こそう。

対立の解消を、利害の衝突や不平等・不公正の発生を未然に防ぎ、秩序を維持するという、いわゆる「管理・統制」の論理から語ることは容易だろうが、これは旧弊にすぎる。

人の組織体制は、強力な対立軸の存在によって確固たるものとなる。共産主義国家の崩壊や e-Japan の推進による日本的官僚主義の後退がもたらしつつあるのは、資本主義経済体制や地域民主主義自体の内部分裂と変質だ。知的権利保護も、対立軸を強固にすることによって新たな権利概念の確立が期待できる。その有力な方法が情報倫理の確立だ。

不特定多数から成るインターネットにおいて、特定のコミュニティの合意は、自ずから成る情報倫理によって形成されて行く。情報倫理はどこから来るか?

インターネットという、個人の信念や理念が虚体のパーソナリティとして躍動している仮想世界にあっては、欲望が「IT道徳(善への自律的な意思)」を生み、揺れ動く情報倫理の善意・悪意の基準を決定する。基準は固定的ではなく、時と場所、場面と状況によって、個と個のネゴシエーション、交渉と合意によって、ダイナミックに変化して行く。

そして自ずから成る「村社会」、すなわちコミュニティの情報倫理を生み、自律的に成員を従わせる。知的豊かさの社会にあって、知的財産権の侵害やサイバー犯罪への許容度も変化する。悪意や恫喝は残るにしても、悪い見本として自然淘汰される。

知的生産物を、人類共通の知的資産として自由に流通させたい、というのが万人の欲望だろう。しかし欲望に沿って社会が変化するには、長い時間を要する。それまでは、情報倫理を創出する行動のせめぎ合いと、かりそめの共存・共栄が続くことになる。

提供:日本ユニシスコンサルティング サービス

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