人材育成とeラーニングの活用お客様の人事部門あるいは研修部門の方から“人は重要な経営資源であり、したがって人材育成は重要な経営課題であるという認識はあるものの、経済環境やビジネス環境などにより、必ずしも十分な対応ができているわけではない”という話をよく耳にする。
今年の6月に実施した調査(当社:日本ユニシス・ラーニング)によれば、人材育成について“おおいに悩んでいる”という企業が約50%あった(参考までに、課題が全くないという企業は約2%)。 多くの企業において人材育成が課題となっているということである。これがITを活用した人材育成、すなわちeラーニングへの関心が高まっている背景ではないかと考える。同じ調査によれば、人材育成の手段としてeラーニングを導入もしくは検討中の企業が38%(導入の予定はないが興味はあるという企業を含めると95%)という結果が得られた。日本では、既に100社を越える企業がこの分野に参入しており、新規参入も継続している。 日本ユニシス・グループでも平成9年より企業内教育の手段として、eラーニングを導入した。当初はPC関連ソフトウェアの利用方法に関するコンテンツが主体であったが、現在はIT、ビジネススキル、ヒューマンスキル系を含め、約250種のコンテンツを導入している。 今年度は、環境対応、コンプライアンス、情報セキュリティといった、全従業員を対象としたコンテンツも開発・導入した。引き続きコンテンツの拡充に努めているところである。もちろん、従来からある集合研修も実施しており、今年度は新入社員研修を除き、約15,000人日程度の研修を実施する予定となっている。 そこで、人材育成手段としての集合研修とeラーニングをどのように使い分けるかが課題となる。この課題は、行政の世界でも、ビジネスの世界でもなんら変わらない。 教育工学の分野で著名な B.S.Bloom は、認知領域における教授=学習の到達レベルを6段階設定している。知識、理解、応用、分析、総合、評価である。ここで、知識、理解は“学習した内容の想起、あるいは学習した内容間の推論ができる”レベルであり、応用は“学習した内容を別の場面に適用できる”レベルをいう。最上位の評価は“判断のための基準を策定し、その妥当性を検証し、その基準にしたがってある物事の是非を判断できる”レベルである。 教授=学習では、最終的にこのレベルを目標とする場合が多いが、このレベルに到達するためにはやはり各種の訓練が必要となる。訓練としては、ケーススタディ、ロールプレイ、OJT などが考えられる。このような観点からeラーニングによる教授=学習には、その到達レベルについての制限があるということになる。 認知領域における学習手段としてのeラーニングは、やはり知識、理解がその到達レベルであると考える。そうであれば、逆にeラーニングの活用方針が明確になる。情報伝達を目的とした教育はeラーニングで対応する、応用レベル以上の到達レベルを目標とした教育の事前学習(あるいはレディネスの統一)としての利用するなどの方法である。このように考えれば、eラーニングを活用した人材育成の新たな視点が見えてくる。 最近、企業における人材育成あるいは評価制度の一貫としてコンピテンシーと呼ばれる指標の導入が活発化している。この背景には知識・技術レベルは同一であっても、高い業績を上げる人間とそうでない人間がいることの分析によるものであり、行動特性あるいは業務遂行能力というように呼ばれることもある。先に延べた B.S.Bloom は、この分野(情意領域)についても到達レベルを定義している。簡単に言えばコンピテンシーの強化には“気づき”が重要であり、いかに“気づかせるか”が課題となる。 コンピテンシーは一般に測定が可能な様式で表現することが難しいが、人材育成という観点からは、教育・訓練によって強化・向上が期待できるものでなければならない。実はこのような分野にもeラーニングを導入する動きが活発化している。いろいろな意味でeラーニングの有効性が認識されてきたということであろう。そして、このように多様化する人材育成の手段について、それぞれの長所・短所を判断し、必要に応じた人材育成の仕組みを提供することが、当該部門の重要な役割りとなっていると考える。
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