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2010年2月10日
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サーバーフリー・コンピューティングの来光

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1.新世代のインターネット技術−サーバーフリー・コンピューティング

ピアコンピューティングとグリッドコンピューティングに代表されるインターネット利用技術は、別名サーバーフリー・コンピューティングとも呼ばれ、コンテントベースの P2P 型ファイル交換やファイル共有、リアルタイムのデータ公開(BBS)やデータ交換(チャット)、資源(メモリや CPU 資源、ディスク資源)共有、を末端のホストPC同士で実現するばかりでなく、データアドレス(URL/格納アドレス)共有やさらにはコンテキスト(メタデータ)共有といった、新しい形態の情報共有手段を提供するものとなってきた。

インターネットの利用形態は、HTTP プロトコルを利用した単純な Web アクセスから、ストリーム配信や(XML)Web サービスなど、新たな利用形態に大きく比重を移しつつある。それに伴いバックボーンで発生する膨大なトラフィック要求は、帯域幅と優先順位に基づいた回線運用を可能とする QoS や中継装置(ASIC マルチレイヤスィッチや光ルータ等)の高速化により継続的な通信回線の増強やコスト増加を回避してきたが、常に目先の限界を見据えていた:=クライアント/サーバー間トラッフィックの存在だ。

サーバーフリー(サーバー不要)コンピューティングのネットワークは、ネットワークのノード(多くは末端のホストPC)自身が世界中に配置された ISP サーバー群(DNS クラスタ)を透過的に使って自律的に P2P 機能(下記)を実行する、といった類のネットワーク形態で、Web サーバー等目的サーバーの処理性能や通信回線速度にボトルネックが遍在するという、現在のインターネット・モデルが持つ根本的欠陥を解消させる。

マイケル・ミラー(「P2P コンピューティング入門」)による P2P の機能定義:1)データまたはメッセージをピア間でリアルタイムに伝送することができる。2)ピアは、クライアントとサーバーの両方として機能できる。3)ネットワークの主要なコンテンツは、ピアによって提供される。4)ネットワークの制御と自治権はピアが握っている。5)常時接続していないピアや、固定IPアドレスを持たないピアも受け入れる(=DNS の迂回)。

2.新世代のインターネット技術がもたらすもの

ビジネスとして、1)インスタントメッセージング(利用者間でリアルタイムにメッセージを掲示/送受)、2)ファイル交換・ファイル共有(利用者間でファイルを交換・共有)、3)分散検索エンジン(組織やインターネット内に分散している情報を効率的に検索/収集)、4)グリッドコンピューティング(複数のコンピュータの処理能力・資源を共有)、5)コラボレーション(複数の利用者の効率的な共同作業と支援)、がすでに始まっている。

ユビキタス社会を、誰でもが気軽に自分の所有しているデジタル情報を他人と共有することのできる社会であるとすれば、不特定多数の個人間で即時に直接、情報のやり取りを可能とするサーバーフリー・コンピューティングはすでにこれを実現していることになる。

KaZaA や freenet、WinMX、Winny など、今やありふれた P2P ソフトを使えば、誰でも簡単に文書・音楽・写真・映像・知識などを他のインターネット上のPCとやり取りできる。ユビキタスコンピュータや携帯電話でも、いずれ可能になる。

P2P 技術の最先端を標榜する最恐のファイル交換・共有ツール「Clustone」は、サーバーの要らない BBSと、音声・映像を含む多彩な会話・探索手段を売りにしている。これを使えば、現在のサーバーベースの Web サイトに替わるインタラクティブかつリアルタイムに離合集散する Web コミュニティサイトを、思い立った時に簡単に設営できる。

末端のPCのハードディスクに保存されているファイルに対して BBS 上から直接リンクを貼れるようにする機能が核となる技術で、これはあらゆるデジタル化データを「直接」公開できることを意味している。公開するのは、ファイル名と、ハードウェアのネット上のアドレスや暗号化方式などの基本属性、それとファイルの真正性を示すハッシュコードといった「ユニバーサルid」の一種で、これが交換・共有(及び検索)の対象となる。同種のツール「URLBlaze」も、ダウンロードしたファイルのアドレスを「URL 共有」する。

利用のされ方によっては、映画や音楽、アニメやコミック、商業ソフトウェアやゲーム、放送や出版、その他様々な産業が多大な影響をこうむる。逆に言えば、利用のされ方によっては、コンピュータネットワークの限りない可能性を発掘できるということだ。

3.サーバーフリー・コンピューティングの歴史?

P2P をコンピュータネットワークにおける資源共用技術として捉えたとき、インターネット技術の年表は実は P2P の歴史年表そのものであることが明らかにされる。

1969年に米国国防省の【ARPA(高等研究計画局)NET】が出現した。1986年に学術機関中心の【NSF(全米科学財団)NET】に変わり、母体の ARPANET が消滅したとき(1989年)NSFNETは自らを「internet」と呼称し、ARPANETを「ピアツーピア」と呼んだ。

1991年には商用利用が認可され【コマーシャルネット】の時代が始まったが、P2P 型とクライアント/サーバー型の処理形態が混在していた。主力サービスは P2P 型の UUNET(メール/ニュースのUUCP配信)や IRC(AOLのチャット/IM)だった。

1994年、マルチメデイア対応の WWW ブラウザ Mosaic(Netscape Navigator の原型)が登場するに及んで、クライアント/サーバー型の BBS と現在見る Web サイトの開設ブームが到来した。あわせてプライベートIPアドレス規格が普及したことから、イントラネット/エクストラネットを組み合わせた本格的なコマーシャルネットの時代へ突入した。

1995年には NSF が世話人組織を解散し、ここに、全体を誰も管理できない、誰も止められないインターネット網が誕生した。

1996年の ICQ サービス、1997年の暗号解読グリッド、1999年の napster 等、一連の P2P 技術のリニューアルから始まった衝撃は、クライアント/サーバー型主体の利用概念を覆し【グローカルネット(複合利用形態)】の時代を出現させることとなった。

サーバーフリー・コンピューティングは、サーバーベーストコンピューティングやサーバーコンソリデーション(統合)、サーバープール、サーバークラスタなど、先端のクライアントサーバー概念と真っ向から対立する技術概念を提示する。利用者の側から将来どちらを選択するかとなれば、多くの統計が示すように、帰趨は明らかだろう。

ネットワークコンピューティングの世界に強烈なパラダイムシフトが起き、誰もが追随を余儀なくされるだろう。インターネットはベテランのシステム技術者にとって無情の世界となるばかりでなく、e-Japan 計画の施策にも再考を迫る、カオスの技術領域である。

河上 一郎

日本ユニシス株式会社
官公庁営業/技術主幹


提供:日本ユニシス基盤ソリューション



 
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