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2009年7月4日
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インターネットにおけるファイル共有・交換コミュニティの成立

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1.ファイル共有・交換コミュニティの隆盛

インターネットにおけるアンダーグラウンド(第4セクターの社会活動に分類される非合法活動)文化は、時に新種ITを生み出す大きな原動力となることがある。

歴史から学ぶとすれば、(遺憾ながら)ポルノ画像の広まりがネットワークの普及と集金技術、PCの GUI 技術や画像圧縮技術、コンテンツ流通のe-ビジネスモデルの進展に大きく寄与したし、非合法活動のためのチャットの普及がIM(Instant Messaging)やビデオ会議に、そして通信を含めた QoS(Quality of Service)技術の発展につながった。

さらに暗号アルゴリズム解読のためのPCグリッドがグリッド コンピューティングに、非合法コンテンツの複製・共有・交換のための mp3 や ogg、ape、また変種の avi や mkv など音楽や動画等の新たな圧縮形式が、コンテンツの梱包・高速転送技術に進化した。いずれも、商業主義・合法を旨とするグラウンド文化だけでは達成しかねただろう技術である。

e-ビジネスモデルが旧来の流通モデルにおける仲介業者たちの淘汰を早めつつあるように、ファイル共有・交換コミュニティの隆盛も、出版権、販売権に依存する仲介業者たちを慌てさせるコンテンツ交換モデルを出現させることになった。

日本における出だしは、一部の先駆者たちが米国で成立していたコミュニティへ参加し始めたことだった。誰もが、自分の愛好する写真や音楽、映像、プログラム、古書籍やレア文書がいとも無造作に手元に届くことに爽快な驚きを経験した。

しかしながら人々はすぐにその危うさに気づいた――ファイルの内容やファイル共有・交換のやり方によっては、各国の法に照らして違法性を問われる、ということだ。事実2001年7月、米国で隆盛を誇った Napster への業務停止命令が出されている。

表向き、非合法活動の最前線はアプリケーションやエミュレータ、音楽や動画・映画、TVドラマや書籍などを対象に急速に拡大する無料のファイル交換・共有にある。この勢いの前にはさすがのポルノ動画配信ビジネスも衰えつつある。P2P ファイル共有・交換のツールは、WinMX や KaZaA、freenet、winny、clustone など130を数える。

2.自由を求める P2P コミュニティ

公開(オープン)非公開(クローズド)の違いはあれ、P2P による非合法ファイル共有・交換アプリケーションの利用(経験)者は全世界で5,000万人を超えると見られており、今や P2P 方式が、少なくとも個人や小規模グループでは WWW で主流のクライアント/サーバー型電子データ交換標準プロトコルに取って代わるのは、時間の問題とされる。

米国で始まったレコード/映画会社による1,445人規模の著作権法違反容疑訴訟は一時実利用者数を半減させたが、ホスト型の P2P からハイブリッド型、さらには検閲できない完全分散型 P2P への進化と再興は瞬く間だった。分散型ファイル共有・交換のツール自体の配布は合法である、との米連邦地裁判決は、非合法コミュニティにとって朗報となった。

日本においても、どちらかといえば現実世界に上手く適応できない人間たちが始めた「2チャンネル BBS」で違法性が盛んに論議された。WinMX での違法性を「UL0 パッチ」で逃れる試みは世界中に広まった。WinMX の次に来るものはなんなんだ?スレがダウソ板に立てられ、追跡がほぼ不可能なファイル共有ソフトの仕様が論議された。

47氏(47番目の投稿から命名された)の発言『freenet みたいだけど2chネラー向きのファイル共有ソフトつーのを作ってみるわ。もちろん Windows ネイティブな。少しまちなー』があったのは2002年4月1日で、5月6日には著作権表示「Copyright 47@download.2ch」なる匿名 BBS/ファイル共有ソフト Winny(WinMX の換字)が初公開され、日本独自のコミュニティが勢い良く立ち上がった。Winny はファイルのハッシュと暗号化通信技術を使ってピアの匿名性を高め、当時の米国製に比しても遜色ないものだった。

もともとインターネットで成立する非合法コミュニティは反体制的で、「違法の事実をどう逃れるか」という方向に走りやすかった。「知的財産の自由な共有」という考え方では、オープンソースソフトウェア(OSS)の活動倫理に近い。

名だたるハッカー「メンター」が身を引くときの言葉が耳に残る――『この世界こそ、僕の生きることのできる場所だった。現実世界は、社会秩序を維持するのに不自由が皆の利益のためだと信じ込ませようとする。私を止める事はできてもすべてを止める事はできない。皆も私も、共に犯罪者だ。』

3.コミュニティの変質と融和

日本においては「村社会」を好む性向が世界のコミュニティとの隔絶を生み、また日本人コミュニティの「平等・抜け駆け」精神が、クラック版一派と原著版一派、及び旧来の「厨」や「神」たちとの軋轢と内部抗争へ発展した。47氏はより匿名性の高い Winny Ver.2 を頻繁に更新する孤高の闘いに乗り出したが、利用者たちの非公式な支援が支えとなった。結果、クラック版一派の Winny1 コミュニティは衰退し、Winny2 は盛況である。

47氏は『モデルとしたかったのはコンテンツ提供者(制作者)の権利保護と集金方式で、非合法利用が排除不可能と解れば自然に別のビジネスモデルが立ち上がって、コンテンツ流通のパラダイムシフトが起こるだろうと期待したが、どうも一向に出る気配がない。問題は可能なのにやろうとせず、思考停止していることではないか?』と問いかけている。

47氏の権利保護の狙いはようやく結実しつつある。米国の P2P ネット上で広告によるビジネスモデルが立ち上がった。また最初は Apple、続いて Amazon、RealNetworks の音楽ダウンロード販売ビジネスが活況を呈し、質の高い、無料では手に入らないコンテンツの急増で非合法コンテンツの逆淘汰が始まった。OSS が P2P ネットを配布手段として使い始めた。日本では、IPv6 を使って、閉じた(専用の)P2P ネットワークサービスも始まった。

ファイル共有・交換コミュニティは創生期の「厨」たちの収集嗜好と異なり、録画し損ねたり見逃したりした放送メディアのコンテンツや何年も前の映像や文献など、入手困難なものや、物理的媒体(パッケージ)に依存する商業主義の犠牲で絶版、廃盤になったものを共有するといった、カジュアルな利用形態へ変貌しつつある、という。コピーガード付き商品など、別媒体では再生・愛蔵できないコンテンツは高い対価に値する魅力はないとし、欲しいものがあるときだけアクセスする――こうした目的の利用者も多くなった。

他方バックボーンを圧迫することから ISP が帯域規制し、既得権保持者が違法利用者を糾弾するなど、対立するビジネスの活動が頻発している。これを放置せず、行政府レベルが世界に先駆けて健全な P2P サービスや P2P ビジネスモデルの研究・開発・実証を行うことで、P2P コミュニティとビジネスが協調・融和できる方策を講じる時期にきている。

ユニシス e-Japanニュース編集室(社外寄稿)


提供:日本ユニシスコンサルティング サービス



 
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