教育の質の向上に寄与するプログラム作成手法■高等教育機関に対する産業界からのニーズ
近年、グローバル化が進み、顧客のニーズがますます多様化していく中で、産業界はめまぐるしく変わるビジネス環境への対応を迫られている。 このような中で、顧客のニーズに応えたサービスや製品を提供していくには、これまでの経営者、技術者といった役割を越えた新たな人材の育成が必要となり、当然、人材を輩出する役割を担う大学などの高等教育機関に対しても、時代に見合った人材を輩出するための教育を行うことが求められており、例えば技術と経営という視点から MOT(Management Of Technology)といった取り組みが開始されている。 ■教育の品質を高めるためのインストラクショナルデザイン 高等教育機関における授業形態は、LMS(Learning Management System)や VOD(Video On Demand)を始めとするeラーニング基盤システムの普及・発展に伴って、これまでの「先生と生徒が同じ教室にいて、主に先生が生徒へ向かって講義をする」といった単方向知識提供型の授業から、遠隔地、非同期でありながら双方向性のある新しい形態での授業が実施できる環境が整ってきた。また、産官学連携の推進に伴って、多様なプレイヤー活用の道も開かれてきている。 このような環境の下、どのようなIT技術を使って授業をするかという観点から、いかにして教育プログラムの品質を保証するかという観点に変化してきている。特に、教育プログラムの品質の点から注目されているのが「インストラクショナルデザイン(Instructional Design)」という手法である。 インストラクショナルデザイン(以下ID)は教育を短期間で効率よく効果的に行う手法で、歴史的には米軍における新兵教育を短期間で効率よく効果的に行う手法の研究成果が元になっている。 教育プログラムにIDを適応すると「分析」−「設計」−「開発」−「実施」−「評価」というプログラムの一連のサイクルを学習目標にあわせて回すことができるため、品質の高いプログラムを作成することができる。 また、サイクルを継続的に回せば、時代の流れや教授内容の変化に合わせ、常にプログラムを柔軟に効率よく作成、修正することができる。 日本ユニシスグループでは、長年にわたる経験と研究を元に独自のID技法「UNIKIDS」を発表している。さらに、支援ツールを活用して、経済産業省の委託事業「ITスキル標準(ITSS)準拠eラーニング教材26コースを開発した他、青山学院大学において、産学協同でIDを適用した授業開発に取り組んでいる。 ■問われる教育内容の品質 6月25日にIT戦略本部より発表された e-Japan 重点計画-2004の中では、学校教育のIT活用について、2006年度以降に向けての布石として、“教育の情報化を進めるための基盤を有効に活用し、ITの持つメリットを最大限に活用して、いかに教育効果を高めていくかが課題になる”と述べられている。 加えて、1998年の大学審議会答申で「第三者機関による評価」という言葉が挙げられて以来、大学に対して様々な観点から評価する動きが加速しており、民間企業と同じような財務の視点以外にも、工学系の教育プログラムの評価を行う JABEE(日本技術者教育認定機構)に代表されるように、教育の品質までもが評価の対象となっている。 このように、高等教育機関は、これまでの入学難易度などの「入り口」と就職先、研究成果などの「出口」のほかに、教育の内容という新たな視点に対しても、社会からの要求に応えていく必要がある。 現在、ID手法の適用については企業内教育での導入が多く、大学などの高等教育機関での導入はまだ少ないが、eラーニング環境を効果的に活用し、教育の質を高めていくためにIDを適用した授業カリキュラム開発は効果的であろう。大学における根幹の活動である授業の情報化として、ID技法と支援ツールの活用は品質向上に貢献するものであり、極めて必然的である。
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