航空手荷物管理における RFID の活用近年、成田空港を利用して海外旅行に出かけた方は、
インターネットカフェなど空港内の様々な箇所にブロードバンドインターネット環境が整備されていることにお気づきだろう。
このインターネットサービスをはじめとして、 わが国最大の玄関口である成田空港に最先端の IT を用いて、 より快適に空港を利用できる新しいサービスを実現し、 その姿を広く世界にアピールしていくプロジェクトがすすめられている。 これらは、e-エアポート構想と呼ばれ、 国土交通省、成田国際空港株式会社を中心として様々な取組が行われている。 今回はこのe-エアポート構想のひとつの「e-タグ」と呼ばれる、 RFID を利用した航空手荷物管理実証実験および手ぶら旅行について、 概要と今後の課題を述べていくこととする。 現在、空港における手荷物管理はバーコードタグが主流であり、 空港内のコンベア上に設置されているバーコードリーダーで自動的に光学的に読み取るのであるが、 バーコードタグの方向などに大きく左右されるため、 読み取り精度が良くない。 読み取れなかったものについては、 作業員の手で読み取り作業をする必要があり、 工数がかかってしまうのと同時に、 手荷物紛失の危険性を高めてしまうのである。 そうなってしまうと、航空会社に補償が発生するのであるが、 補償には限度額が定められているため、 旅行客にとっても負担を強いられる可能性がある。 この問題を解決するため、 バーコードに代わりに RFID 技術を利用したe-タグを手荷物に取り付けて読み取り精度を向上させる取組が、 国土交通省所管の次世代空港システム技術研究組合(ASTREC)ですすめられている。 この組合には成田国際空港株式会社、航空会社、タグベンダー、 SIer など国内の多数の企業が参加している。 ■e-タグ認証技術検証試験 チェックインカウンターで 13.56MHz のe-タグを発行し、 受け取った手荷物に取り付け、 空港内のコンベアライン上に設置されているRFIDアンテナでタグの情報を読み取っている。 また、ジョン・F・ケネディ空港(米)、バンクーバー空港(カナダ)、 フランクフルト空港(ドイツ)、スキポール空港(オランダ)と連携し、 相互読み取り実験などを行っている。 ■UHF 帯を利用した RFID タグの相互運用検証試験 成田−ホノルル間で異なるUHF帯(日本 950MHz 帯、米国 915MHz 帯)によるe-タグの相互読み取り実験を行っている。 日本から出発する場合、 成田空港チェックインカウンターで 950〜956MHz のe-タグを発行する。 このタグをホノルル到着後、 ホノルル空港に設置した 915MHz のアンテナで読み取る。 ホノルルから出発する場合は、915MHz のe-タグを発行し、 成田空港に設置されている 950〜956MHz のアンテナで読み取りを行っている。 ■e-タグを利用した手ぶら旅行 e-タグを利用した旅行客への新たなサービスモデルとして、 手ぶら旅行サービスの試行運用が現在進められている。 手ぶら旅行とは旅行客が事前に宅配会社に手荷物を預託し、 成田空港で手荷物に触れることなく手ぶらでチェックイン、 搭乗した後、目的地である海外空港のターンテーブルで手荷物を受け取ることができるサービスである。 すでに存在している空港宅配サービスと違い、 成田空港内の宅配カウンターで手荷物を受け取り、 チェックインカウンターで預ける必要が無いのが特徴である。 手ぶら旅行サービスの流れは以下のようになる。 (1)成田発の国際線(JAL 便、ANA 便)で手ぶら旅行を希望する場合、 空港宅配会社(JAL エービーシーまたは新東京旅客サービス)に手ぶら旅行の利用を申し込む。 (2)宅配会社(福山通運、佐川急便)が、利用者の自宅などで手荷物を受け取り、 成田空港に搬送する。 手荷物にはe-タグがつけられる。 (3)成田空港に搬送された手荷物は、 EDS(Explosive Detection System:爆発物検査装置)を利用しセキュリティ検査が行われる。 (4)出発当日、旅行者は手ぶらで成田空港に赴き、 搭乗手続き(チェックイン)を行う。 搭乗手続き終了後、手荷物は航空機に搬送・搭載される。 (5)目的地到着後、 旅行者は渡航先空港のターンテーブルで手荷物をピックアップする。 このように手ぶら旅行は旅行客にとって大変便利なものであるが、 さらにサービスの浸透、拡大していくためには、いくつかの課題もある。 まず、サービスの範囲が限られていることである。 現状では航空会社として組合に参加している JAL、ANA の便しか利用できない。 海外旅行には JAL、ANA 以外の航空会社を利用して行かれる方も多いだろう。 今後は JAL、ANA 便以外の旅行客や宅配事業者などへの申込窓口を拡大するなどのサービスを展開できるように考慮していくべきである。 次にセキュリティに対するさらなる配慮である。 現在航空分野では世界的に出入国管理を徹底すべく、 パスポートにバイオメトリクス(本人固有の身体的特徴)を格納させる取組を進めている。 本人しか持ち得ないバイオメトリクスを利用することによってセキュリティを高めようとする考えが、手荷物管理にも及ぶ可能性もある。 EDS を利用したセキュリティ検査など十分な配慮をしているものの、 「その手荷物は本当に旅行客のものである」、 「手荷物輸送中に不審物を混入されていない」を証明する仕組みが必要になるかもしれない。 事実、アメリカにおいても BAGS 社がホテルで手荷物を受け取り、 空港で旅行客に渡すことなく航空機に搭載するアメリカ版手ぶら旅行サービスを行っているが、 BAGS 社の従業員は TSA(Transportation Security Administration:米運輸保安局)にサービスの認可を受け、 FBI(Federal Bureau of Investigation:米連邦捜査局)に対して自身の安全性を証明するため、 バックグラウンドチェックを受けているのである。 以上のように、今後、 手ぶら旅行サービスが拡大していくための課題としては、 技術的な側面よりもむしろ社会的・運用的な側面が大きく、 想定される課題に対してクリアしていくことが成功の鍵となるのである。 筆者も次世代空港システム技術研究組合の一員として各企業、 各関係機関とともにe-タグを利用した手荷物管理、 手ぶら旅行の拡大に向けて研究を進めており、 上記の課題を解決すべく最適な解を見つけ出す取組を行っていく所存である。
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