スマートクライアントスマートクライアントとは、マイクロソフトが提供するリッチクライアント(注1)のこと。狭義には、XML Web サービスを呼び出すクライアントアプリケーションを指す。Microsoft Office System、.NET Framework と Windows フォーム、PDA などの諸々の利用形態も含まれ、「マイクロソフト技術によって作成するクライアントアプリケーション全般」を意味する概念と捉えるのが適切である。
また、スマートクライアントという用語そのものは、特定の技術や製品を指すという性質のものではない。「ユーザーの生産性と開発者の生産性との両立」という明確な意図を持つ一種のマーケティング用語として使われることが多い。 そもそも、リッチクライアントは、C/S システム全盛期のいわゆるファット(=fat:太った)クライアントと、その後インターネットの普及により一気に浸透した Web アプリケーション(三層)システムおけるシン(=thin:薄い、軽量な)クライアントの利点の「良いとこ取り」の発想を持つ。そして、スマートクライアントは、「スマート(=smart:利口な、賢い)」という名の示す通り、従来システムが直面している課題を超える解決策として、大きな期待を集めている。 ■今、注目されるリッチクライアント なぜ、昨今リッチクライアントが注目を浴びているのであろうか。まず、先に登場したファットクライアント、シンクライアントの特徴や違いについて簡単に整理してみよう。 (1) ファットクライアント システム的には、「クライアント側に実行環境とビジネスロジックが置かれる」アプリケーションと考えることができる。クライアントのマシンのリソースを自由に使えるので、画面の操作性・表現性に優れた高機能なアプリケーションが作成できる。 また、ファイルなどのローカルリソースとの連携も可能である。反面、アプリケーションの配布やインストール、バージョンアップ対応にかかる作業負荷が生じてしまう。また、大部分のビジネスロジックをクライアント側で実装するため、アプリケーション自体が肥大化し過ぎて実行速度に影響を及ぼすこともある。 (2) シンクライアント IT の発展によりシステムが急速に複雑化し、増え続ける管理運用コストの削減という課題を克服すべく登場してきたサーバー集約型のシステム形態である。その中で最も成功を収めたものが、Web アプリケーションシステムといえよう。 その特徴は、ビジネスロジックをユーザーインターフェイスから分離し、サーバー側で配布や運用の一元管理を行う仕組みにある。Web アプリケーションによって、クライアント側には基本的に Web ブラウザのみ導入すれば済み、メンテナンス負荷は大幅に改善された。しかし、HTML(注2)の表現力には限界があり、従来のファットクライアント相当の操作性や機能性を実現することは難しい。 加えて、クライアントの違いにより表示や動作が統一されない恐れがあり、また常にサーバー側にデータを送るために通信量が増加する問題も生じる。さらに、オンラインでのシステム利用が大前提となり、ネットワーク環境に依存せざるを得ない点もユーザーの利便性阻害の一因となっていた。 ■スマートクライアントのメリット スマートクライアントによって、具体的に何が変わるのか。注目すべき特徴をざっと列挙してみよう。 (1) ファットクライアントの利点を踏まえた特徴…優れた操作性、高い開発生産性、軽快なレスポンス Web アプリケーションシステムにおいて問題視されていた「ユーザーが使いやすいこと」が最重要視されている。いくら運用管理コストが削減できても、肝心のユーザーの使い勝手が悪くては、システムが利用されず元も子もなくなってしまうからだ。 (2) シンクライアントの利点を踏まえた…容易な配布、容易な変更管理、小さなフットプリント(注3)基本的に、サーバー側で集中的にかつ自動的にアプリケーションの配置・展開・アップデートを行う。これにより、クライアント環境のメンテナンスの手間が大幅に軽減される。具体的には、ノータッチデプロイメント(注4)、Click Once(注5)などの方法により実現される。また、アプリケーション自体が軽量化・集約されるため、動作速度も速く、可用性を高めることもできる。 (3) スマートクライアントにおける新たな利点…オフライン作業のサポート、マルチデバイス対応 アプリケーションがローカル環境にあるため、オフライン環境でもデータを扱うことができ、オンラインとの連携による作業の効率化が図れる。また、言語やプラットフォームに非依存の XML Web サービスという汎用プロトコルを用いることで、環境を選ばずさまざまなデバイスに対応可能である。 <注> 注1) リッチクライアント:本稿では、「ユーザーインターフェイスの表現力や操作性が豊かな(=rich)クライアントアプリケーション(またはクライアント環境)」を指す。 注2) Hyper Text Markup Language の略。Web ページを記述するための言語。HTML で記述された文書の閲覧には、通常 Web ブラウザを用いる。 注3) もとは機材の設置面積という意味。システム用語として使う場合には、ソフトウェアを配置するのに必要なメモリ量を意味する。 注4) 作成したアプリケーションを Web サイト上に予め配置しておく形の配布方法。ユーザーは指定 URL へアクセスして該当するリンクをクリックするだけで、アプリケーションを実行することができる。 注5).NET Framework2.0にて搭載予定の機能。ノータッチデプロイメントの発展形で、クライアントへアプリケーションをインストールする点、アプリケーションの自動アップデートに対応している点などが異なる。
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