IT 資本によるパフォーマンスの管理(その2)■ どういう視点で「効果」を測定するか
そもそも電子政府の構築の目標は、「利用者本位の行政サービスの提供」、「予算効率の高い簡素な政府の実現」とされている。民間企業で自社の業績評価指標について悩んだことのある方であれば、この目標を見ると BSC(バランスト・スコアカード)の「顧客の視点」、「財務の視点」で設定されたものであることに気付くはずだ。 実際にこの目標を設定する上で BSC に沿って検討されたのかどうかは不明であるが(著者は残念ながらこの目標の設定過程を知らない)、結果的にはそういう目標設定がされている。ならば「費用対効果」の「効果」については、この目標が達成されたかどうかを測定すれば良いことになる。 BSC(バランスト・スコアカード)は、業績評価だけでなく、アクションや戦略とビジョンの関係を表現することのできる強力な経営ツールであり、ロバート・S・キャプランとデビッド・P・ノートンによって提唱された。従来の財務的業績評価指標の限界を打ち破るものとして、近年、民間企業を中心に導入が進んでいる。 BSC では「財務の視点」、「顧客の視点」、「業務プロセスの視点」、「学習と成長の視点」という4つの“視点”でパフォーマンスを評価するが、“視点”そのものは行政機関においても有効だろう。 ■ BSC の観点で「電子政府構築計画」を読む 先に述べた通り、「電子政府構築計画」で掲げられた「目標」は、BSC の視点とマッチしている。では、該計画の中で「施策の基本方針」として記述されているそれぞれの取り組みはどのような位置付けになるだろうか。 これらは「目標」に結び付けられる業務プロセスの改善(=業務プロセスの視点)や組織資本や人的資本の充実(=学習と成長の視点)の方針として記述されているはずだ。 例えば「オンライン利用の促進」、「ワンストップサービスの拡大」などは、業務プロセスの改善だが、明らかに「顧客の視点」に結び付けられるものだ。「内部管理業務の業務・システムの最適化」、「共通システムの最適化」などは「財務の視点」に結び付けることができる。 また「各府省における推進体制の充実・強化」は、その内容を見ると組織の明確化と人材の育成を含んでおり「学習と成長の視点」について述べているが、「顧客の視点」、「財務の視点」各々の目標に結び付くだろう。 このように個別の基本方針やアクションプランは、階層構造があったとしても最終的にいずれかの「目標」に結び付くはずであり、もしそうなっていないものがあるとすれば、「目標」から孤立した施策として優先順位は低くなければならない。 ■ 戦略マップを作ろう 施策の基本方針やアクションの相互の関係、また、それらと目標との関係を表現するのが戦略マップである。この戦略マップの意味は後で述べる指標の設定のために重要なのであるが、それだけでなく、実際に施策を推進する人たちに対して推進することの意義を明快に伝達するためにも重要である。 「施策」や「アクション」が「目標」になってしまいがちなのは何も行政機関に限ったことではないのだ。「ワンストップサービスの拡大」は、それ自体は目標ではなく、「利用者本位の行政サービスの提供」という目標を達成するための手段である。 「なぜそれを行うのか」という本質は、特に戦略が詳細化されてアクションプランにまで落ちると失われがちであり、戦略マップは、それを常に思い起こさせるツールとしても重要である。 ■ KGI と KPI を設定しよう 「利用者本位の行政サービス」「予算効率」という「目標」の達成度を測るものさしが KGI(Key Goal Indicator)である。つまり「目標」について、何を指標とし、その目標値をどうするかを具体的に表したものであり、これがなければ「電子政府構築計画」の目標達成度を測ることはできないはずだ(もちろん KGI は各府省で異なるだろうし、それぞれで設定されるべきである)。 KGI とともに重要なのが KPI(Key Performance Indicator)である。これは上で述べた戦略マップに記述した施策やアクションの単位で決定していくことになる。つまり KGI が目標の達成度を表すのに対し、KPI は具体的な施策が遂行されているかどうかを測るものである。 先の例でいえば、「利用者本位の行政サービスの提供」ができたかどうかを示すのが KGI であり、「ワンストップサービスの拡大」の遂行状況を示すのが KPI ということになる。KPI がなぜ重要か。KGI が結果指標であるのに対して KPI はプロセス指標であり、KGI で示された目標の達成可能性に対する先行指標になるからだ。 終わってみて「うまくいきませんでした」というのはあまりに稚拙である。KPI で遂行状況をモニタリングしつつ、KGI で設定された目標を追いかけることに意味があるのだ。 ■ どこまでも PDCA もし結果として KPI でのモニタリングと KGI の目標が連動しなかったとすれば、戦略マップに誤りがあった(仮説に誤りがあった)か、同じ KGI につながる戦略マップ上の他の施策がうまく機能しなかったということになる。 戦略マップはあくまでも仮説ロジックであるから当然そういうことも起こりうるのだ。 これをローリングしていくための仕組み、つまり PDCA サイクルをまわすメカニズムを「電子政府構築計画」の遂行と並行して実装しておくことが肝要である。「電子政府構築計画」自体は2005年度末までの3ヵ年計画とされているが、このメカニズムが実装されなければ、やはり PDDD…となってしまうことはいうまでもない。
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