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IT 資本によるパフォーマンスの管理(最終回)

この記事のURLhttp://japan.internet.com/public/technology/20041201/1.html
著者:日本ユニシス おお津 昌三
国内internet.com発の記事
1. ふたたび生産性と IT 資本について
「労働生産性と IT 資本の間には、マクロ的にもミクロ的にも正の相関があることが知られている」ということを第一回で述べた。

ミクロ的な相関についての代表的な研究は Brynjolfsson のもので、1,300社を超える個別企業の生産性についての調査結果からこの結論を導いている。またマクロ的な研究でいえば経済産業省の2004年度版通商白書の第1章がよくそれを総括している。

IT 資本ストックと労働生産性の推移などの日米比較分析が行われており、IT 資本増強のための投資、つまり IT 投資は一般論としては生産性の向上につながると信じてよさそうだ。

しかしそれはあくまでも一般論であり、個別の企業や行政機関が IT 投資を行ったとしてもその効果は一様ではない。それどころかミクロベースで捉えると IT 投資それ単独では生産性の低下につながる可能性もあるということが Brynjolfsson の研究では示唆されているように見える。

Brynjolfsson と通商白書の両者が共通して着目しているのは、IT 投資による生産性向上を最大化したければ、それと同期して強化しなければならないものがあるという点である。組織資本と人的資本に対する投資がそれだ。

2. 組織資本、人的資本
組織資本というのは、主にビジネスモデル、業務プロセスや管理システムなどの組織としての成熟度や知財をさすと考えてよい。一方、人的資本とは組織に属する個人の属性であり、個々の管理者や職員が保有する経験、判断、知性などがその代表である。

これらの資本がそれ自体で生産性に影響を与えることは明らかである。Brynjolfsson の分析では組織資本に人的資本を含めているが、IT 投資とこれの組み合わせの重要性を述べている。

興味深いのは IT 資本の大きさと組織資本の成熟度の平均的な組み合わせは相対的に企業価値向上に役立っていないという分析だ。行政機関でいえば「他所の府省でもやっているから同じレベルで最適化計画を立てなければ」という発想ではよい結果が得られないことがありうるということかもしれない。

しかし、これはなぜなのだろうか?上述した組織資本も人的資本もその説明を見る限り、一見してそれ自体が生産性に対して良い影響を与えるものに見える。それぞれの資本を増強した場合に生産性を下げる効果があるなどということがありうるのだろうか?

経験的に著者の頭は「ありうる」と告げている。例えば ERP の導入、つまり IT 投資はビジネスプロセスのリエンジニアリングとその定着なくしては成功しないどころかオーバーヘッドになりうる。

また、プロジェクトマネジャの育成、つまり人的資本への投資を行っても、プロジェクトマネジメントプロセスの標準化がなされていなければ企業としてはプロジェクトの成功は運任せということになる。しかしこれはどういうメカニズムなのだろうか?

3. 各資本と生産性の関係をネットワークとして捉える
ここまで考察してきて著者がその類似に思い至ったのは、Barabasi の「新ネットワーク思考」という書籍にかかれている病気と遺伝子の関係についての記述だった。

この書籍の主張は、ネットワークの視点からみることが、自然、社会、ビジネスにおいてさまざまな問題を理解する枠組みになるというものだ。

その書籍の中で Barabasi は、さまざまな病気には、どれかひとつの遺伝子ではなく細胞内ネットワークを介して相互作用するいくつもの遺伝子が同時に関与しているという最近の研究について触れている。

これをここでの議論に置き換えるならば「生産性はどれかひとつの資本ではなくネットワークを介して相互作用するいくつもの資本が同時関与している」ということになるのではないか。ここでのネットワークとは IP 網などの物理的なものではなく資本相互の相関性である。

この仮説にたった場合、通商白書の中で紹介されている Bresnahan の各資本間の相関性についての研究は重要である。この相関係数は、どの資本の増強を並行的に実施することが生産性の向上につながるかのガイドになるかもしれない。

4. 国民の利便性向上にむけて
電子政府構想の目標は国民の利便性の向上と予算効率である。これらの目標に向けての施策を考える場合、バランスト・スコアカード(BSC)の戦略マップが重要であることについて第二回で述べた。

BSC の戦略マップに記述される各戦略間の依存関係はすなわち上述のネットワークととらえることができる。KGI と KPI 間、あるいは KPI と KPI 間の相関が明らかになれば戦略の優先順位の意思決定に役立つだろう。

各府省の電子政府構想実現においても、どの施策が国民の利便性向上に相関が強いかという分析がなされることを期待したい。

参考文献
Brynjolfsson,「インタンジブル・アセット」,ダイヤモンド社,2004年
経済産業省,「2004年度版通商白書」,経済産業省,2004年
バラバシ,「新ネットワーク思考」,NHK 出版,2002年


おお津 昌三

日本ユニシス株式会社
システムサービスマネジメント部
サービス戦略推進室長


提供:日本ユニシスユニシス


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