![]() ![]() ![]() ![]() 安心この記事のURLhttp://japan.internet.com/public/technology/20041208/5.html
著者:日本ユニシス 松井弘子
国内internet.com発の記事
患者が真に安心して医療行為を受けられる環境が見直されつつあり、この一要素として病院のリスクマネジメントに対する取り組みが上げられる。
昨今では医療過誤や、手術に関する危険度への説明不足、情報隠蔽など、数々の医療事故がマスコミ各紙を騒がせており、こういった事態への対策として医療機関に対するインシデント・アクシデントレポート義務や、こういった情報を共有する仕組みなどに IT を活用するといった取り組みも報告されている。 とはいえ、筆者は、こういった IT を活用した取り組みが医療安全のために、どの部分で効力を発揮しているのかという観点からの議論はあまりなされていないように感じている。 IT によって情報を提供・共有することは十分可能であるが、これらの情報を有効に利用するためには別の検討が必要になる。 すなわち医療分野においては、こういった取り組みが、患者の利益としてフィードバックされるという最終目的を達成するものか否かについての議論が不可欠で、本稿においては特に、インシデント報告の現状という観点から考察を進めていきたい。 医療現場でのミスは生命に関わる医療過誤につながる可能性があるため、患者は医療ミス前後の病院の対応・取り組みについて注視している。院内掲示板や病院の Web サイトにてインシデント報告を発表している病院に対する患者の評価が高いことがそれを物語っているといえよう。 患者はミスの全く起こらない医療現場など存在しないことは承知しているが、だからこそ医療過誤が起こらないような最善の対策を医療機関に求めていると考えられる。 これに対する厚生労働省の取り組みとしては、医療機関に対する医療安全を目的としたインシデント等の院内報告の義務付けおよび院外の第三者機関への自主的な報告の推奨があげられる。 既に多くの医療機関でインシデントレポートの提出が積極的に行われており、さらに、これら全国的に収集したインシデントレポートの有効活用に関する事例も挙がっている。こういった事例データベースの構築により、院内および全国の病院横断的な情報共有やその利活用が可能になることで、すべての医療従事者間においてインシデント、アクシデントをなくそうという動機付けに寄与できることが望ましい形であると筆者は考える。 しかしこのような報告制度に関する現状は、下記のような様々な課題を抱えている。 院内報告制度に関しては、こういったレポートが紙媒体のまま院内関係者間で共有されているのみにとどまっていたり、担当者による主観的な事例分類や分析が行われている医療機関が多い。また主旨を十分に理解していない医療スタッフの反省文レポートも見受けられるという話を聞く。 院外への報告に関しては、それぞれの病院独自の用語の存在や複数提出先の独自フォーマット規定により、担当者が報告用の入力作業に膨大な手間がかかるなどの課題が明確になっている。 また、全国の病院からのインシデント事例の収集、分析および情報提供を目的として、ヒヤリ・ハット事例検索システムが一般に公開されているが、この事例検索システムにおいては、頻繁に報告されるインシデントの統計情報だけではなく、予防対策の困難な特徴的な事例およびその対応が検索しにくい。 こういった課題解決のために、院内報告と院外報告の促進やそれに伴う業務の効率化のバランス、病院スタッフへのインシデントレポート目的の周知の徹底、フィードバック情報の院内活用方法に対する工夫が必要であると考える。 具体的には、病院情報システムのイントラネットを用いた病院スタッフ間のコミュニケーションの円滑化や報告業務を効率化するためのレポーティングシステムの構築など様々なシステム上の対応が有効であると考えられる。 さらに、収集した情報を効果的にインシデント予防に活用するためのデータ形式やこれらの事例検索や統計ツールなどは IT の得意とする範疇である。 報告業務の課題のうち IT サポートが可能な部分を切り分けることで、医療機関にインシデント報告の慣習が根付き、病院スタッフのインシデントに対する意識を高く維持する支援につながると考える。 医療機関がこれらを実現することで、患者は医療機関に対して「情報隠蔽の(少)ない、透明性の高い診療」を提供してもらえるという安心感を得ることができる。さらには、病院スタッフ間での情報共有が頻繁に行われることで、適切な対応が迅速になされることによる安心感をも得ることができる。 これらの実現を支援する IT 適用としてはインシデントレポーティングシステムや、汎用的なデータマイニングソフトウエア、ナレッジマネジメントツールなどがあげられる。医療分野に限らず、IT 導入は、目的があって初めて意味をなし、運用に心を砕くことで初めて効果を発揮するものであると強く確信している。
|