障害者自立支援法の施行に伴う地方自治体の情報システム構築
これまで地方自治体は、障害者を対象とした福祉サービスを複数の法律に基づき実施してきた。国は行政改革の一環として、これまで障害種別ごとに異なる法律に基づいてきた福祉サービス等を、共通の制度の下で一元的に提供する仕組みを創設することとした(障害者自立支援法)。
このことは、地方自治体の情報システムに新たな課題を投げかけることになり、障害者自立支援法に基づくシステム構築が必要になった。しかしながら、各地方自治体の取り組みは、それぞれの情報システムに関わる事情から異なっている現状が見受けられる。ここでは、独自事情により個別にシステム構築に取り組んでいる事例を紹介し、地方自治体が抱える情報化の取り組みの一端を紹介すると共に国の施策への提言をする。 1.障害者自立支援法による改革のねらい 障害者の福祉サービスを「一元化」することにより、サービス提供主体を市町村に一元化し、障害の種類(身体障害、知的障害、精神障害)にかかわらず障害者の自立支援を目的とした共通の福祉サービスは共通の制度により提供する。これまでの関連する法制度は、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、精神保健福祉法、児童福祉法である。 2.障害者自立支援法の施行期日 (1)平成18年4月1日 新たな利用手続き、在宅福祉サービスに係る国等の負担(義務的負担化)に関する事項、福祉サービスや公費負担医療の利用者負担の見直しに関する事項等 (2)平成18年10月1日 新たな施設・事業体系への移行に関する事項等 3.地方自治体の対応 現在、地方自治体は新制度に伴うシステム構築対応に追われている状況である。従来の複数制度による福祉システム導入・運用形態は、それぞれの個別事情もあり差異がある。 代表的な導入・運用形態及び対応方法としては、以下の事例がある。 (1)総合福祉システムとして、複数制度に伴う業務を単一ベンダーにより開発している。 対応方法としては、福祉システム構築ベンダーまたは業務プロセスが類似している介護保険システム構築ベンダーへ随契して「自立支援法システム」として構築委託している。 (2)それぞれの制度を個別にシステムとして、複数ベンダーにより開発している。 対応方法としては、複数のシステムを統合化し大改修するケースと個別構築を既存ベンダーに随契委託して構築している。 その他のケースもあるが(システム化していない等)、ここでは省略する。 4.地方自治体の対応に対する考察 (1)多くの地方自治体は、本年4月施行に向け勧奨申請の作業に取り組んでいる。勧奨申請の必要性は、これまで該当する福祉サービスを受給していた住民に対して、制度が変わることにより申請をし直すことを強いられるからである。 このことは、1度だけではあるが行政側と住民側へ負担をかけている。 (2)自立支援法システムの構築については、法律だけで要求仕様を作成できず、政省令(特に、省令)等の提示がないと設計作業に取り組めない。しかしながら、本年4月と10月の施行に対応するためには、不確定要素を多く抱え開発作業に着手しなければならない状況であり、この点が既存のシステムの開発ベンダーまたは類似業務を開発したベンダーに随契する理由となっている。国の政省令提示等の対応遅れについては、介護保険制度の時も同様であった。 5.国の対応に対する提言 現在、地方自治体の情報化は電子自治体構築、レガシー・システムの全体最適による再構築及び市町村合併に伴うシステム統合に取り組んでいるところである。地方分権化に伴う三位一体改革や財政難もあり、地方自治体は予算削減(TCO 削減)にも取り組んでいるところである。このような状況下において新たなシステム構築または大改修を短期間で実現しなければならない現状を少ない職員で取り組んでいる(介護保険制度に比べ)。また、開発ベンダーも要求仕様が不確定な状況で、手戻りを覚悟で取り組んでいる状況でもある。 国への提言としては、障害者自立支援法の施行を急ぎすぎたこと、制度の実施主体である地方自治体の情報システムを考慮していないことが問題と考える。それでは、どうしたらいいか。事例としては、平成6年に戸籍の電子化を認める改正に向けて戸籍システムの個別構築を避けるために、基本設計(帳票レイアウト、画面レイアウト、ファイル・フォーマット等)を国の事業の一環として実施し、開発ベンダーに対してはパッケージ開発を要求すると共に地方自治体に対してはパッケージ導入以外を容認していない。このような国の取り組みがあっても良いのではないかと思う。 関連記事 関連テーマ 最新トップニュース
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