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2002年8月7日 00:00

原油とIPアドレスとの共通項〜IPv6は必要か

「地球上の原油の確認埋蔵量はあとXX年、つまり、あとXX年で原油は枯渇する」というような記事を読み、将来への漠然とした不安を抱いたことのある人は多いだろう。

筆者の小学生時代(1980年代前半)には、原油は残り30年で枯渇すると言われていた。自動車が無用の長物と化し、火力発電所が送電を停止する光景を思い浮かべ、しばし憂鬱な気分になったものだ。

しかし、筆者が大人になった現在でも、自動車は走り続け、火力発電所は運転を続けている。原油埋蔵量はと言えば、いつの間にやら、何と40年以上へと伸びているではないか。結局のところ、「原油30年枯渇」説は採掘技術の進歩や価格メカニズムの機能を無視した稚拙な試算に基づくものだったのだ。

ところで最近、同じような話をインターネット関連のトピックにおいても聞いたことはないだろうか。現状の消費ペースのままでは、残りXX年でIPアドレスが枯渇し、インターネットへの接続に支障をきたすというIPアドレス枯渇説である。果たして、IPアドレスが枯渇し、インターネットに接続できない端末が出現する時代はやってくるのであろうか。

現在、日本政府は、IPアドレス枯渇説を主要な根拠の一つとして、「e-Japan重点計画」において、IPアドレス空間をほぼ無限大にまで拡張するIPv6の普及促進政策を進めている。しかしながら、IPアドレス枯渇説は、原油枯渇説と同様の稚拙な前提に基づくものであり、日本政府が「e-Japan重点計画」において主張するようにIPv6の導入を国策として早急に進める必然性は、かなり疑わしいと論ずるのが、下記に紹介する池田信夫氏のディスカッション・ペーパーである。

池田氏はペーパーにおいて

  • IPアドレスは現状のままでも、今後15年は枯渇せず、未利用IPアドレスの再配分やNATによる有効利用の効果も考えれば、半永久的に枯渇はあり得ず、

  • IPv6は4チャンネル・ステレオやAPS(Advanced Photo System)のように、既存技術を漸進的に改良した持続的技術の典型であり、

  • IPv6導入が不可欠なキラー・アプリも見当たらない現状では、既にまごうことなきデ・ファクト・スタンダードであるIPv4を代替しようとすれば、失敗することは必至であって、

  • 現状では、IPアドレス枯渇問題よりも、むしろ、インターネットが大前提としてきた「ベスト・エフォート」文化からの脱皮やモバイル対応の動的ルーティングを視野にいれたプロトコル開発が急務であるが、政府が特定の要素技術を後押しすることは、むしろ有害である。

と明快に説く。

筆者にとっては、常日頃から漠然と感じていたIPv6導入政策(およびIPv6導入対応を社長マターとして推進する某電機メーカーのインターネット戦略)への違和感が見事に整理されたペーパーであった。

読者諸氏にも是非、ご一読頂き、自ら判断を頂きたい。

IPv6は必要か 池田信夫 経済産業研究所 上席研究員 http://www.rieti.go.jp/jp/publications/summary/02012500.html


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