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2008年10月11日
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Webテクノロジー2005年10月14日 12:00

ソフトウェアのコモディティ化は Linux で始まる

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Linux はコモディティ

ソフトウェアのコモデティ化の話が最近よく話題になる。 結論を先に言えば、今後ソフトウェアはコモデティ化していくだろう。

実は、Linux こそソフトウェア業界初のコモディティである。 Linux を導入して何がいいか。ベンダーロックインを回避できるからだ、という人がいるが、それはまったく正しい指摘だ。

Linux が載るハードウェアは一般的に Intel マシンならどれでもいい。 確かに Dell も IBM で富士通もみんな Intel サーバーを販売している。 Linux のディストリビューションもどれを使ってもいい。 Red Hat を採用しても Red Hat ロックインということにはならない。

ところが、この上に Oracle DB を載せたらどうなるか。

Intel サーバーと Linux でベンダーロックインを回避しても、今度は Oracle ロックインになってしまう。Oracle はコモディティというよりもデファクトスタンダードだからだ。

Windows の場合もコモディティではなくデファクトスタンダードだ。 デファクトもコモディティもある種コンセンサスではあるが、デファクトの場合は市場で勝ち残ったものだから、メーカーは価格をコントロールしやすいし、使う側も何かと制約を受ける。

ハードウェアの場合はデファクト化、コモディティ化がかなり進行し、現在は Intel はコモディティの代表選手になっている。しかし突然そうなったわけではない。それまでの長い歴史がある。

あまり知られていないが、おそらく最初にハードウェアのコモディティ化を無意識にやった会社は、なんと Sun Microsystems だ。

Sun が当初狙ったのは、当時のミニコン市場だったが、プロが使う高性能パソコンというイメージもあり、ワークステーション(WS)という新しいジャンルを作った。その業界には DEC とか Deta General などの企業が存在していたが、Intel や Motorola などの汎用のマイクロプロセッサチップセットを使うのではなく、OS も各社独自のものだった。ここに後発の Sun が心臓部に汎用部品である Motorola の CPU を使ってハードウエアを組み上げたのだ。OS はバークレー版(BSD)UNIX を搭載するという画期的なことをやった。Sun がこのまま、この路線で突き進めば、Motorola と BSD の組み合わせが WS のコモディティのテンプレートとなったかもしれない。

ところが、Sun は企業としての力を付けるにつれ、“コモディティ化”の道を逆行して、SPARC を作り、OS も Solaris としてクローズ化の道を突き進む。SPARC アーキテクチャによる Sun のベンダーロックインが始まった。

もし、Motorola+BSD の組み合わせがコモディティとして定着していたら、現在のようなIntel サーバーは登場しなかったかもしれない。パソコンは Intel と MS-DOS、Windows の組み合わせて定着しただろうが、サーバーは Motorola と BSD の組み合わせが定番となったかもしれないのだ。しかし実際はそうはならなず、その後 Intel は PC 市場で Microsoft と合体し、遂にはサーバー分野にまで市場を広げた。

そして、Intel のコモディティ化に寄与した Windows はデファクトスタンダードとなり、サーバーは独自アーキテクチャ+UNIX という組み合わせで落ち着いたが、UNIX そのものは Solaris、AIX など、ハードウエアに依存するような進化を余儀なくされ、本来互換であったはずのものが、ベンダーの独自 OS のような形になってしまった。今思えば非常に皮肉な現象だったし、Motorola にしても悔いが残っただろう。

技術が枯れてコモディティ化が始まる

ソフトウェアにはコモディティという考え方は存在しない、と断言する人もいる。少なくとも2、3年前まではそれが定説だった。なるほど、ソフトウェアはコモディティ化しづらいものだ、コモディティという考え方にふさわしくない、というのが一般的な認識だった。

しかし、ソフトウェアのコモディティ化が話題になるということ自体、ソフトウェアもついにそこまで枯れてきた、という感がある。Linux がオープンソースとして広く普及したのは、技術が枯れているからだ。技術が枯れるのは大変重要なことで、そもそもコモディティ化の条件はよい意味で技術が枯れていることだ。そうでないと不毛な競争が起きてしまうからだ。

現在のコンピュータはほとんど、von Neumann(フォン ノイマン)が1945年に発表した Neumann(ノイマン)型アーキテクチャを踏襲して使っているだけだ。TRON にしろなんにしろ、OS がプログラムを実行する Neumann 型にのっとっている。

Linux はそもそも UNIX クローンであり、新しい技術ではない。Linus は最初のスペックを Solaris のマニュアルを見ながら書いた、と公言している。にも関わらずできあがった Linux がすばらしいものだった。

それはなぜかというと、フレームワークが確定していても中身の書き方が問題だからだ。OS の進化がやっと飽和してきた段階でソースコードを公開し、いいものをどんどん作っていこう、というのが Linux オープンソースの開発スタイルだ。そこにオープンソースのよさがある。

仮想記憶、マルチタスク、スケジューラなどいろいろ細かい話はあるが、Linux は Neumann 型のハードウェアが枯れてきて登場したものであり、これ以上の OS は望めない。Linux を超えるのは、1と0のデジタルアーキテクチャにのっとらないバイオコンピュータや、人間の直感をそのまま機能として使える人工知能コンピュータなど、Neumann 型ではない新しいアーキテクチャの登場が必要であり、それは技術革新だ。 技術革新という意味は、徐々に性能がよくなる性質のものではなく、一気に質的な部分でジャンプ(quantum jump)することだ。 自動車にたとえると、ガソリンエンジンがいきなり水素燃焼エンジンや、燃料電池に置き換わるようなものだ。

ソフトウェアのコモディティ化がやっと始まった

Neumann 型コンピュータの進歩は先が見えてきたが、だからといって、ソフトウェアの進歩が止まったわけではない。

先にガソリンエンジンを例にとった自動車業界を見てみよう。

自動車ではトヨタが今世界ナンバーワンだ。そのもっとも重要な部分であるガソリンエンジンの仕組みは、中学校の教科書に載っているほど成熟したものだ。その派生でロータリーエンジンなどがあるが、機能的なアーキテクチャは何も変わっていない。トヨタのエンジンを分解しても、やはりピストンは入っている。電子制御装置などの派生装置はいろいろあるが、基本的な構造は最初の発明から大して変わっていない。

にもかかわらず、なぜトヨタが圧倒的にナンバーワンなのか。ディーラー網や生産の効率化、あるいはアピールや広告の仕方で、日産もホンダも同じようなことをやっている。にも関わらず、なぜトヨタが一番なのか、というのが大事な点だ。

技術の進歩は非常に微妙だ。技術が飽和してくると、最終的には企業の総合的な力や差別化要因とか付加価値の話になる。トヨタが圧倒的に1位であるのは、ガソリンエンジンのアーキテクチャをトヨタが発明したからではなく、自動車のデザインや性能が圧倒的にいいからではない。企業の総合力で、他の自動車メーカーと非常に大きな差があるからだ。総合力を支えるのは、従業員数などの静的な数字ではなく、むしろ、高度な付加価値や差別化要因にある。あまりに高度すぎて、素人からは微妙な違いすら見えないかもしれない。しかし、結果は大きく違うのだ。

Linux にも同様のことが言える。SuSE と Red Hat は何が違うのか。その性能的な違いは一見しただけではわからない。実際に本質には大きな違いはない。しかし、市場シェアではっきりと差がついている。これが、一言で言うと、企業としての総合力の差であり、細かく分析すれば、たとえば戦略の構築力、マーケティング力、サービスレベル、あるいはさまざまな付加価値の差だろう。

Linux も部品としてコモディティ化していくだろうが、自動車業界と同様、企業間の競争は今後も延々と続いていく。

ソフトウェア全般について言うと、Linux はコモディティ化したが、その上はまだコモディティ化していない。Linux オープンソースの開発モデルができるのに時間がかかった、という話を以前したが、ソフトウェアのコモディティ化は、今やっと Linux で始まったのだ。

コモディティ化のシナリオ作成は Intel の先例を見る

ハードウェアのコモディティについて言えば、今やっとサーバー分野のごく一部が Intel になったところだ。モバイルやエンベデッドなどの他の分野は現在のところ Intel には分が悪い。科学技術計算用のコンピュータやメインフレームなどもそうだ。Intel を組み合わせるという発想はあっても、相変わらず NEC の HPC マシンが売れたり、IBM の z シリーズが売れたりしているのが現状で、そこまではコモディティ化していない。

ところが、一般的な中小規模のサーバー分野では、コモディティ風味がほぼできている。

Intel にとってはこれは少し困った話かもしれない。新しい CPU を開発して商品化しても価格がどんどん下がり、量ははけても売上げが伸びなくなるからだ。それに、今後、オンデマンドで大規模バーチャルマシン化が進むと、サーバーマシンがは売れなくなる可能性がある。今まで小規模事務所や商店で1台1台買っていたのが、今後は仮想化された大規模データセンターによるサービスにより、そうした企業の面倒をまとめて見る、という方向に向かっているのが明白だからだ。

Intel は CPU のコモディティ化で勝利者になったが、そのとたん危なくなるのだ。 したがって次の戦略は CPU 以外の周辺製品の販売だ。実際、Intel はマイクロプロセッサで成功を収めるまでは、メモリーチップの代名詞である D-RAM で勝負をかけたことがある。しかし、Intel の思惑どおりには成功しなかった。そして財政的にも苦しくなり、IBM などから財政的支援を受けながら、主力製品をマイクロチップにシフトした。それが成功した。だから、新しい分野を攻めるのは初めての経験ではない。高速で広範囲な無線 LAN の規格である WiMax をワンチップ化して、その販売に力を入れ始めたのも、自社のための当然のチャレンジなのだ。Intel ですら、常に危機感を持っている。これがコモディティ化の別の側面だ。

ひとつがコモディティ化すると、次のコモディティ、また次のコモディティと行かざるを得ない。共通部品で差別化するのは難しいからだ。

Linux は偶然コモディティになったが、 幸いなことにそれ以外のソフトウェアでコモディティと呼べそうなものが見当たらない。 だからソフトウェアベンダーは今後はコモディティ化を意識的にやればいいのだ。 これからコモディティを作っていく人たちにとってはばら色の市場だ。

コモディティ化に向かうシナリオは比較的作りやすいはずだ。 なぜなら、Intel という先達の例があるからだ。 ハードウェアと同様の道を歩めばいいだけの話だ。

たとえば Oracle だ。デファクトにまでなった DB ソフトウェアだが、次は、RDB 以外に進出するか、あるいはコモディティ化しようという考えもある。Oracle が価格を下げてしまえば、現在よりもっと市場を占有できるようになるだろう。価格競争の次はオープンソース化だ。この2段階のバックアップにより Oracle が絶対負けないシナリオができあがる。

Oracle 以外のソフトウェアベンダーも、 新しい市場で一気にけりを付けようと思ったら、 コモディティ化を目指すのはすごく面白い。 そのためにオープンソースにするというのもいい選択だ。 今後オープンソース化で成功する会社が現れると、市場にもっと活気がみなぎるだろう。

Linux オープンソースのコモディティ化を阻んでいるもの

OSDL でも、Linux が普及し始めたときに、全部オープンソースで行こう、と言っていた時期がある。いわゆる LAMP(Linux、Apach、MySQL、PHP)だ。ところがあまりうまくいかなかった。「L」「A」はいいが、「M」の MySQL が思ったほど Oracle に対抗できない。

どうして MySQL や PostgreSQL などのオープンソース DB は Oracle に勝てないのか。

これは DB の根本的な発想が違うのだと思う。そもそも Oracle は最初の開発思想からして、トランザクション、ミッションクリティカルに強い商用の DB だ。ところが PostgreSQL の開発思想は商用をかならずしも意識していない。オープンソースの利点を最大限生かし、研究用にモジュールごとに機能強化できるよう、手を入れやすい構造になっている。RDB というキーワードでは似た部分はあるが、それだけでいきなりミッションクリティカルの分野で Oracle に対抗できるわけではない。

オープンソースであるという利点はいろいろあるが、だからといってプロプライエタリ製品に勝てる保証はない。Linux がなぜよかったかというと、やはりクオリティが高かったからだ。

この点について、これまでの IT 業界の経験に照らし合わせ、OSDL としてもう一度冷静に考えた結果、いいものはいいのであって、オープンソースイコールいいものとは限らない、ということに思い至った。

現実的に考えると、MySQL の支援に OSDL がフォーカスするより、産業界の当面の利益を優先させるならば、Oracle でいくほうが効率がいい。そのほうが Oracle の支援も得られる。ないものねだりしてもしようがない、と言うわけで、最近の傾向はハイブリッドだ。

また、プレゼンテーションツールだが、現実の業務では OpenOffice より PowerPoint を使ったほうがいい場合が多い。ほかの人たちとファイルを交換する場合、相手が OpenOffice を使っているとは限らないからだ。 このように、何が何でも全部オープンソースで行こうというのは、現時点では無理がある。ハイブリッドを強調しすぎると偽者だと非難する向きもあるかもしれないが、OpenOffice はまだコモディティではないので、一般のレベルでは PowerPoint の代替品にならない。

OpenOffice を PowerPoint の完全代替品にできない理由はいろいろある。PowerPoint がデファクトであることにも関係があるが、MS はチャンスがあれば OpenOffice をつぶそうとするから、ファイル変換できるようにした場合、PowerPoint の内部に存在する特許に抵触しているのではないか、と言いかねない。フォントにしてもそうだ。

また、コミュニティも問題を抱えている。

家電業界ではコモディティ化が進んでいる製品がたくさんある。冷蔵庫とか電子レンジは一種コモディティで、統一の規格があり、ブランドが違っても大して変わらない。ここに至るまでの技術革新は驚異的なものがあるが、それは発明ではなく品質の技術革新だ。ユーザーのために多くの機能の強化がなされている。これはすばらしいことだ。だから、コモディティに技術革新はない、というのもうそだ。

Linux がなぜ使いづらいかと言うと、コモディティだが、まだそれが始まったばかりだからだ。

そもそも誰が客か、という発想がまだ開発コミュニティにはない。開発コミュニティはいい面もあるが、産業界の常識と比べると、まだ“未熟”な部分がある。もう少しユーザーを意識して進化すること、そこがコミュニティの最後の問題だ。つまり社会のため、すなわち人類のためという、さらなるおおらかな見地を期待している。

記事提供:OSDL(Open Source Development Labs)米国日本

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