![]() ![]() ![]() ![]() 「パワー・トゥ・ザ・エンタープライズ」この記事のURLhttp://japan.internet.com/webtech/20060728/6.html
著者:高塚直樹
国内internet.com発の記事
■ Power to the People ― Web 2.0 という潮流
この数年のインターネットでの各種アプリケーション(サービス)の進化は著しいものがあります。賛否はあるでしょうが、「Web 2.0」という言葉が、その象徴であることは間違いないでしょう。 賛否と言ったのは、実は Web 2.0 という言葉はかなり多義的であって、ややもすると、人によって喚起されるイメージが異なる可能性を孕んでいるからです。 Tim O’Reilly の提起の中で、 例えば私の場合は、「参加のアーキテクチャ」「集合知」「データが次世代のインテル インサイド」というコンセプトこそ「Web 2.0」がこれまでの Web の世界と一線を画す最大のポイントだと考えています。 O’Reilly の文章でも取り上げられていますが、「参加のアーキテクチャ」「集合知」という観点で、Wikipedia は実に Web 2.0 的ではないでしょうか。 草の根的な編集作業によって、Wikipedia 日本語版には実に20万本以上もの記事が作成されていて、個人の労力の集積が Wikipedia のサイトとしての魅力に帰結しているのです。 それはまさに、Web のテクノロジーによって、多くの人々が「参加」し、その成果として「集合知」が形成されて、データのパワーが発揮されている好例です。 John Lennon は「Power to the People」と歌いましたが、結果として、Web 2.0 は個人の集合にパワーをもたらしました。 ■ 市場型の情報トレード ― エンタープライズでの過去の取り組み そうなると、インターネットの世界で個人の集合にパワーを付与した Web 2.0 的なアプローチを、企業内でも利用しない手はありません。 そもそも企業は目的を持って従業員を組織したものであり、組織としてのパフォーマンスは一般の個人以上に重視されるはずなのですから。 思い返してみると、過去にも、エンタープライズアプリケーションとしてナレッジマネジメントという試みが提唱されたことがありました。 それはやはり、個人が保持しているナレッジを組織的に活用することを目的としているという点では、一見、Web 2.0 と似たコンセプトに思えます。 しかし、ナレッジマネジメントは必ずしも成功したとは評価されていません。そして、成功へのハードルとして、情報を提供する側の意識と提供する手間(コスト)ということが、よく指摘されました。 その解決のために、情報提供に対して何らかのインセンティブを付与することによって、情報提供者の動機付けを図るという発想はありがちです。 しかし、そのような解決策が必ずしも奏功しなかったからこそ、ナレッジマネジメントという流行は廃れてしまったのではないでしょうか? なぜ、インセンティブ付与型の解決策が奏功しなかったのか? ここからは私の仮説です。 情報提供のコストをなんらかのインセンティブで補償することは、結果的に手間(コスト)とインセンティブ(便益)が比較可能でなければなりません。しかも便益がコストを上回らないと魅力とはなりません。 その図式が成立しないとインセンティブは形骸化するでしょうし、成立してしまうと、情報提供が打算的なトレードとして評価されてしまいかねません。 そうなると、インセンティブによほどの魅力を持たせられないと、情報提供が進まなくなります。 インセンティブの魅力を保障するために、擬似的に定量化して何らかの兌換性を持たせると(例えば業績評価への反映など)、その兌換性ゆえに供給量を制限する必要が発生してしまいます。 供給量が不足すると、情報提供の意欲は減退する可能性があります。それはあたかも、経済不況時にマネー供給が不足し、企業の設備投資意欲が減退するようなものかもしれません。 しかし一方で、むやみにインセンティブを乱発行すると、ちょうどインフレ経済と同じように、インセンティブの価値が劇的に低下してしまいます。 まさに紙切れ同然なんてことになり、インセンティブの役を果たさなくなるでしょう。 コスト対便益という構図はわかりやすいのですが、Web 2.0 の成功事例を目の当たりにした今となっては、直接対決の陥穽にはまっていたように思えます。 ■ 循環する情報のエコシステム化 ― 管理から自律的なアプローチへ インセンティブによる解決は、あたかも市場経済でのトレードのように情報を流通させるアプローチでした。 そして現実の経済と同じように、安定した経済成長を実現するためには、おそらく、一定の政府(統治者)によるサポートが必要となります。 そのような、統治者として何らかの管理者が介入しなければならないシステムでは、その管理者がボトルネックとなったりもします。 では、どうすればいいのでしょうか? 答えのひとつとして、コストを直接的に保障するというアプローチではなく、コストをそもそも意識させないこと、トレードという図式に陥らないこと、が考えられます。 それはまさに、「参加のアーキテクチャ」化と言えるでしょう。 O’Reilly の文章の中でも「参加のアーキテクチャ」について、利用者の行動が自動的に他者に寄与すること、利己的な活動が他者へ寄与すること、が紹介されています。 利己的な行動であれば、コストと便益を天秤にかけるということは端から考慮されませんし、利己的な活動が自動的に情報提供となる仕組みがあれば、そこに情報提供のコストは発生しません。 つまり、各個人の利己的な活動が自然と全体の情報生態系に寄与する、そういう情報循環のエコシステムこそ、エンタープライズアプリケーションにおいても、Web 2.0 の洗礼を受けた新しいコラボレーションツールとしての可能性を感じさせます。 情報の共有、コラボレーションをテクノロジーで効率的に実現するエンタープライズアプリケーションには、潜在的なニーズと期待感があるのではないでしょうか。 その実現のためのアプローチやアイディアなどを、次回以降、考察していく予定です。
記事提供:
アリエル・ネットワーク株式会社
|