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ノー インフォメーション ノー アクセスド ――サーチは万能か?

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サーチは万能か?

前回、ディレクトリ管理との比較を中心にタグ付けの威力について考えてみました。しかし、そもそも強力なサーチさえあれば、タグ付けのような人手に依存する手法は必要ない、という主張をされる方もいらっしゃるかもしれません。

本当に、サーチは万能なのでしょうか?

もちろん、そんな魔法の杖のような意味で「サーチさえあれば」と語られるわけではないでしょう。あくまでも、サーチの性能が完璧ではないことは理解した上で、それでも文書などを探し出すには十分に実用的なのだから、あえて整理整頓を試みるよりもサーチに任せた方がかえって効率的だ、という意味なのだと思います。

しかし、サーチの性能の問題だけでなく、情報アクセスの目的によっては、他の手段の方がずっと効率的だということは、身近にいくらでもあります。

例えば、もしあなたが japan.internet.com の Web サイトを頻繁に閲覧するとして、その際のアクセス方法を考えてみましょう。

ひとつ目の方法はサーチです。閲覧しようとする都度、まず Google で検索して、結果の一覧の中から正しいリンクをクリックして、このサイトを開くことも可能です(ローカルのデスクトップサーチでブラウザの履歴から検索する方が効率的かもしれませんが、サーチの利用手順として本質的な違いはないので、他の手段との比較上では、どちらでも同じです)。

この方法の操作数を整理してみると次のステップとなります。

( 操作 1 )何らかの手段で Google のサイトを開く
( 操作 2 )検索ボックスに「japan.internet.com」と入力し、検索ボタンを押す
( 操作 3 )検索結果の一覧を眺めて、その中から、japan.internet.com そのもののサイトを選んで、クリックする

サーチ以外の方法として、ブックマークを使用する場合を考えてみます。

( 操作 1 )ブラウザのブックマークから、登録してある japan.internet.com のリンクを選ぶ

この一操作で済んでしまいます。明らかに、このブックマークを使用する方が、毎回、サーチを利用するよりも楽です。

情報アクセス行動のパターン

確かに、サーチが情報にアクセスするための強力なツールであることに間違いはありません。しかし、上述の例のように、明らかにサーチが不向きなパターンがあることもまた、間違いないでしょう。

では、サーチの適性は何に左右されているのでしょうか?

以前、私は、ぼんやりと、その鍵はアクセスの頻度にあると考えていました。アドホックなアクセスにサーチは適するが、繰り返しアクセスするような場合にはサーチは非効率だ、という単純な考えです。

Amazon の創業者 Jeff Bezos が「discovery」と「recovery」という表現で、Amazon の検索サービスであるA9での検索行動を考察していたと、John Battelle が著書「ザ サーチ」の中で述べていました。

その概念を表すネーミングのセンスに感心する一方で、もう少しだけ、考えを整理できるように思います。「discovery」と「recovery」は、情報へアクセスする行為、あるいはアクセスした結果としての経験を類型化するものです。

アクセス行為(もしくは経験)から、もう一歩、遡及すれば、そもそもアクセスする対象によって行為(もしくは経験)が異なる、ということに気づきます。アクセスする主体との関係として考えることによって、情報は次のふたつの観点で分類できるでしょう。

・アクセス者は、情報がどこに存在するかを知っているか?
・アクセス者は、情報の内容を知っているか?

このふたつの観点の組み合わせによって、アクセスする対象の情報が4つのタイプに分類できます。そして、アクセスする行為はアクセス対象の情報の特徴に依存するために、それぞれのタイプへアクセスする行為(もしくは経験)も分類できるというのが、私の考えです。




「discovery」と「recovery」というネーミングセンスに習って、勝手に「call(訪問)」と「recall(再訪)」と名づけてみました。

(Type1)場所も知らず、内容も知らない情報へのアクセス:「discovery」
(Type2)場所は知らないが、内容は知っている情報へのアクセス:「recovery」
(Type3)場所は知っているが、内容はわからない情報へのアクセス:「call」
(Type4)場所は知っていて、内容も知っている情報へのアクセス:「recall」

例えば、(Type3)の「call」は、本日のニュースとして何が掲載されているかは知らないでニュースサイトへアクセスするような行為で、(Type4)の「recall」は、自分でどこかに保存したファイルにアクセスするような行為が該当します。

ナビゲーション方法の適材適所

ところで、今回のコラムのタイトルは、Bob Marley の「No woman no cry」を強引に真似たために、おそらく妙な英語で、意味も伝わりにくいことは承知で、敢えてつけたものです。私の本意としては、「アクセスされない情報はない」ではなくて、「アクセスされないと情報ではない」ということを表現したかったのです。

このタイトルの件は、誰にも理解されないとそれは情報ではない、という好例になりそうですが、そもそも、「理解されないと」という段階の前に、ある情報が誰にもアクセスされないとすれば、その情報は存在しているといえないのではないでしょうか。

例えば「discovery」と「recovery」のように(願わくは、「call」と「recall」もそうであって欲しいのですが)、適切な名前がつけられて初めて、人々に存在そのものが認知される、ということはありがちです。この例からも、うまく認知されて初めて、情報は意味を発揮するということが確認できると思います。

このように、情報の価値が、アクセスされてこそ発現するのだとすれば、正しい情報に私たちをナビゲートしてくれる仕組みは、情報の本来の価値そのものと同じように、とても重要なはずです。

さて、ここで冒頭の疑問に戻ります。その重要なナビゲーションをサーチにすべて依存することが果たして効率的なのでしょうか?

情報アクセス行為のタイプを整理できた今、サーチが適するタイプと不適なタイプは自明だと思います。

サーチは、曖昧な条件での再現率(網羅度)が高いので、「discovery」に適しているといえます。つまり、漏れが少ないため、未知の情報を発掘できる可能性が高いのです。一方で、それ以外のタイプの情報へのアクセスでは、精度が決して100%にはならないため、目的の対象以外の情報も検索結果に含まれることが多くなってしまいます。そのせいで、ノイズが多い中から目的の対象を選別しなければならず、サーチは最善の手段とはならないでしょう。

他のアクセス行為のタイプそれぞれに適したナビゲーション方法が、それぞれにあります。「call」には、例えば RSS Reader のようなフィードアグリゲーションや、あるいはブックマークが適しているはずです。そして「recall」には、ブックマークや、タグ付けがナビゲーションに威力を発揮するのではないかと思います。「recovery」については、サーチも役立つとは思いますが、やはりタグ付けが有効ではないでしょうか。

きっと誰もが日常的に、このような使い分けを無意識に行っているはずです。ただ私は、このような情報への様々なナビゲーションを、アクセス行為の本質に応じて適切に提供してくれるソフトウェアがあれば便利なのではないか、ということを夢想するのです。






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