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タブーを打ち破るか、Oracle の挑戦久々に Linux オープンソース業界に激震が走った。
米国 Oracle の CEO、Larry Ellison が10月25日に「Oracle OpenWorld」カンファレンスで行った基調講演の中で、Oracle が Red Hat のサポートを行うという爆弾発表を行った。
この発表のあと、市場は敏感に反応し、NASDAQ 市場での Red Hat の株価が急落した。25日の終値の19.51ドルが、26日は結局14.83ドルで引け、約5ドルも下げた。つまり25%も下がったのである。 これは1999年に Red Hat が上場して以来の最大の事件だ。そしてこれは Red Hat だけの問題ではない。というのも Lunux ベンダーが Linux のサポートを行うというビジネスモデルのあり方が真剣に問われるもので、今後起きる大きな変化の前触れとなる可能性があるからだ。 ■Oracle の JBoss 買収失敗に端を発した… 「Oracle による Linux サポート」はおそらく、Red Hat による JBoss 買収に端を発している。当時、Oracle も JBoss 買収に意欲を示していたが、それを Red Hat に横から掠め取られた、という経緯がある。 JBoss の買収に失敗した Oracle は、Oracle が稼動している Red Hat に関しては、Oracle 自らがサポートする、という結論に達しただけでなく、その範囲をエンタープライズ領域の Linux 全体にまで広げることを決意した。 ■Red Hat はこの苦境をいかにして乗り越えるか 「Oracle による Linux サポート」は、Oracle にとっては単に新たなメニューを追加しただけの、痛くも痒くもないことだが、これによって Red Hat はその株価が示すように一か八かの戦いを強いられることになった。 現状の Linux のサポートは、前回のコラムでも言及したように、ハードウェアベンダーが肩代わりして行っている。実際はどこがサポートしているのかがあいまいにされたまま、本来なら Red Hat が受け取るべきでないサポート料を、顧客は Red Hat に支払っている。 Red Hat のメニューにはサポートが掲載されているが、実はその機能は持っていない、ということを「Oracle による Red Hat サポート」で Oracle は暴いてしまった。Oracle はハードウェアベンダーでないので、かえって、あいまいな Linux サポート部分に第三者的立場から踏み込むことができた。 現在、Red Hat の Linux の売り上げの15%前後が Oracle がらみと見られている。今回の発表で、それがそっくりなくなってしまう可能性があるのだ。それだけでもインパクトの大きさが想像できよう。Red Hat の株価が急速に動いたのはこのためだ。「Oracle による Linux サポート」爆弾発表の決着には、いくつかの選択肢が考えられるが、そのひとつは Red Hat が JBoss を Oracle に譲り、OS に専念する、というものだが、そのようなことで収まる問題ではないだろう。 ■Oracle が Red Hat をサポートするという意味 Red Hat サポートには何種類かの価格体系はあるが、「Oracle による Red Hat サポート」で、今後これらのすべてを Oracle が Red Hat より低価格で販売する。Oracle ユーザーは、Oracle から Unbreakable Linux を調達すれば、Red Hat からはサブスクリプションやサポートを購入する必要がなくなる。Oracle の言い分は、Linux のエンタープライズサポートは Oracle のような経験豊富なベンダーが代わりに行うことで、より質の高いものを、低価格で供給できるというものである。特にプレミアムサポートのような24時間365日サポートは、Oracle 自体、すでに全世界規模のインフラが確立しており、ユーザーの信頼は厚いだろう。 要するに、顧客ユーザーは Red Hat と同等の Linux を無償で導入し、サポートは Oracle から購入すればいい、と言ことになる。 これは Oracle だからこそ、実現可能な話だ。というのも Oracle にはエンタープライズ向けのサポート要員がすでに全世界で7,000人いるという。この数は、現状では必ずしも全員が Linux 要員ではない。しかし Oracle はここ数か月の間に数百名規模でLinux 要員を育成したと言われており、個々の名前を挙げるのは差し控えるが、有名な Linux カーネルハッカーを他社から何人も引き抜いたというのも事実だ。 つまり JBoss 買収以来、周到に準備を進めていたことになる。それだけに、今回の Oracle の動きは短期間で収束するものではないだろう。真剣なのだ。 Oracle は、またエンタープライズのミッションクリティカルなサポート実績が数十万件ある(というデータを出している)。つまり、Linux を採用したい Oracle の顧客ユーザーにとっては、Oracle は非常に頼もしい企業なのだ。今回の対 Linux サポートの範囲として、Oracle DB はもちろん、PeopleSoft、Siebel および E-Business ソリューションなどを含むと見られている。 前回のコラムの最後で、これからは Red Hat 対 SUSE ではなく Red Hat 対 Novell だ、と言う意味のことを書いたが、これは、Red Hat Linux のサポートは Red Hat が行うが、SUSE Linux のサポートは Novell が行うというように考えるとわかりやすいということだ。つまりこれからは、Red Hat Linux のサポートに関しては、Red Hat または Oracle という2つのチョイスが生まれるということになる。 「Oracle による Linux サポート」発表をきっかけに、Red Hat は OS のパッケージングに専念し、サポートは行わない、という風にレイヤーが2つに別れるかもしれない。 ■ハードウェアベンダー そのように考えたときに、「Oracle による Linux サポート」発表で、今後の動きが気になるところだが、いくつかの可能性を探ってみよう。 注目は Oracle などの ISV ではなくハードウェアベンダー、つまり IHV であろう。これまで Linux ベンダーの肩代わりとして一種"ボランティア"でやっていたサポートを、ハードウェアベンダーが新しいサポート体系を打ち出し、本格的に有料で Linux のサポートを行う。その結果、しっかりサポートしない Linux ベンダーにはサポート料が入らなくなる。そういうきっかけになるかもしれない。 ハードウェアベンダーで最初に動きそうなのは HP だろうか。 なせかと言うと、IBM、Dell、HP の3強の中で、Linux ビジネスへの投資の割に報われていないと思われる節があるからである。今夏のサンフランシスコで開催された LinuxWorld Conference & Expo で発表された内容は特に興味深い。それは、2005年に HP にかかってきた Linux の問い合わせコールは、全部で4万8,000件あったが、そのうち、99.5%は HP 自らが対応したというのである。そして、わずか180件だけが、Red Hat と SUSE に投げられた。つまり大部分は Linux ベンダーの手を借りずに Linux のサポートを行った訳だ。 さらに HP で注目されるのは、Debian のサポートだ。これについてはすでに実績があるのは有名な話だが、本来、Red Hat と SUSE があれば十分なはずのエンタープライズ領域なのに、わざわざ Debian という選択肢を提供し、独自にサポートを提供している。 Debian のサポートの構図は、今回の Oracle のサポートと同様の図式となっている。つまり実際のサポートは、Unbreakable Linux の場合は Oracle、Debian の場合は HP が行うという訳だ。HP はかつて Debian のリーダーの一人である Bruce Perens を雇い入れたことがあるし、現在も、著名なコントリビュータである Bdale Garbee は HP のオープンソースおよび Linux 部門のチーフテクノロジストとして知られている。つまり、HP は Oracle と同様のことをすでに行えるということだ。 もちろん IBM については説明の必要もない。Red Hat や SUSE を除けば、IBM が最も多くの Linux 開発エンジニアを抱えていると言っても過言ではないだろう。ただ IBM が率先して今回の Oracle のような動きを取りづらいというだけだ。 しかし、市場やコミュニティが今回の Oracle の動きを容認し、ユーザーの賛同が得られれば、HP に続いて IBM、という順番で Linux サポートビジネスにハードウェアバンダーが参入する可能性を否定することはできない。Sun Microsystems や富士通、NEC、日立なども検討に入るだろう。 Oracle のように Linux ベンダーではないところでさえ Linux のサポートをするというビジネスモデルが顧客に受容されるならば、最終的には各ハードウェアベンダーが、Unbreakable Linux に並ぶ、HP Linux、IBM Linux と同等のものを出現させる可能性が非常に高くなる。 その場合、Unix で見られたような互換性維持の問題が懸念されるところだが、それを見越したように、Oracle は10月27日付けで、 Free Standard Group (FSG) にプラチナスポンサーとして加盟したと発表した。 FSG は Linux の標準化団体で、 Linux Standard Base(LSB)の策定を推進している。現在、IBM、HP、Dell、NEC、富士通、Sun Microsystems などの主要なハードウェアベンダーに加え、Intel、AMD などの CPU ベンダー、そして、Computer Associates、Veritas などの ISV、さらに、Red Hat、Novell、Debian、MySQL などのオープンソース推進企業および組織、おまけに Google まで加盟している。そこに Oracle が入るというのは意図的であり、今後は LSB を中心に Linux の標準化、特に互換性、インターオペラビリティに注力するというメッセージとなっている。 ■とばっちりを受ける Microsoft 「Oracle による Linux サポート」で Red Hat もびっくりしただろうが、Microsoft も冷や汗をかいているかもしれない。Oracle と Microsoft はもともと仲が悪いと言われているが、これに輪をかけ、Microsoftのサーバービジネスへのネガティブインパクトは大きいはずだ。 たとえば SAP がいい例だ。SAP は、今までヨーロッパ以外では Linux には積極的でなかった。その大きな理由は、内部に Linux エンジニアを抱えてまでそのサポートをしたくなかったからだという。つまり OS は Windows か Unix がメインだった。特筆すべきは、全世界に5万8,000システム以上のSAPが Windows 上で稼動しているという事実である。これは、Unix と Linux を合わせた数よりも多いと言われている。 ところが、SAP の場合、DB 部分に Oracle が採用されているケースも多い。そうしたユーザーや、今まで Linux を希望してもできなかったユーザーが Unbreakable Linux に乗ってくる可能性がある。Linux+Oracle のサポートは SAP の頭痛の種だったが、Oracle が Linux をサポートするのであれば、話は違ってくる。SAP の顧客は一気に Windows から Linux に移行するかもしれない。 ■Google にも注目 そして今回の動きの中で、やはり目が離せないのは Google である。100ドル PC で Linux クライアントを匂わせた Google だが、いきなり Oracle のような Linux サポートに走る必要はないだろう。しかし、Linux にエールを送ることは簡単にできる。それでなくても、現行の Linux バージョン 2.6 のカーネルメンテナーの Andrew Morton の加入も大きな話題だったが、クライアント PC や Web2.0 を武器に何を仕掛けてくるのであろうか。 XP−Vista の移行の過程で、Google が結果的に Microsoft を脅かす手立てを講じる可能性は極めて高い。まさに絶好のタイミングであろう。 ■やはりサポートが鍵 大きな流れの中では、Oracle の今回の動きは、Linux には追い風となるだろう。そして Linux ビジネスはやはりサポートが鍵となる。ユーザーは直ちに現在の Linux サポート契約を見直しすべきであろう。誰が何を本当にサポートするのか。価格は? 質は? サポート期間は? 対応は? 今まで当然と思われていた Linux のサブスクリプションとサポートの価値。これからはベンダーの提供する Linux のサポート内容をよく検討し、本当に価値のあるパートナーと Linux の導入を進めていくことが大事になってくる。 そして、業界全体で見ると、Microsoft の対応策にも注目したい。サーバービジネスにも影響が出てくる今回の Oracle の動き。そしてクライアント側には強敵の Google が待ち構えている。今年も残り少なくなってきたが、Oracle の“殴りこみ”によって、風雲急を告げる状況となってきたことだけは間違いない。
記事提供:Novell
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