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2008年10月14日
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Webテクノロジー2006年12月13日 09:00

アテンション節約のためのユーザビリティ

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注目される「アテンション」

インターネットを中心として情報量が飛躍的に増大する中、近年、「アテンション」というキーワードが注目されています。そもそもアテンションとは「注意」という意味ですが、ハードウェア技術の進歩とコスト低下によって、情報が事実上、無限に蓄積可能となっている一方で、その情報を利用する側の人間の「注意」は有限であるので、その「注意」を獲得することの方が重要となる、という脈略で、「アテンション」というキーワードは使用されています。

しかし、アテンションが有限で重要だということは、私たちを取り巻く情報洪水ともいえる最近の状況に直面して初めて、発生したわけではなさそうです。

Tom Stafford、Matt Webb 著「Mind Hacks」の3章「注意」で、有限な注意力を有効に使うために人間の知覚に本来的に備わっている、興味深いメカニズムがいくつか紹介されています。そこでは、そもそも人間の注意力は脳の力としての限界があり、注意を節約するためのメカニズムとして、一旦、注意を払った後には同じ対象への注意力は弱くなること(復帰抑制)、重要性を認めなった刺激に対しては無視する傾向が強くなること(負のプライミング)など、具体的な面白い事例を通して説明されています。

つまり、そもそも私たち人間は、それほど注意力に富んでいるわけではないのです。だからこそ、乏しい注意力を有効に活用する工夫が生物学的に備わっているようです。

エンタープライズアプリケーションにおけるアテンション

インターネットにおけるアテンションへの言及の多くは、他者のアテンションを獲得することが重要だという、情報の発信者側の視点に立ったものです。では、エンタープライズアプリケーション、特に複数の利用者間でのコラボレーションを目的とするアプリケーションの世界ではどうでしょうか?

エンタープライズにおけるコラボレーションの目的は、最終的には組織の生産性を向上させることであり、そのためには個々の利用者の生産性を向上させることが必要となります。そのような観点からすれば、情報の発信者、供給者側の視点よりも、情報の受信者、受給者側でこそ、有限なアテンションを有効に活用することが重要となるはずです。

逆説的ですが、質量ともに情報の蓄積に成功している組織であればあるほど、その蓄積された膨大な情報を効率的に利用して貰うために、受給者側のアテンションを無駄に浪費させないための工夫が重要になります。

ユーザビリティの工夫

ソフトウェアのユーザビリティの工夫によって、視認性や絞込みの効率を上げて、結果的にユーザーのアテンションの浪費を抑止することが期待できます。

RSS リーダーは、あらかじめ定めた範囲の更新情報だけに絞り込んで情報を確認できるという本来の目的で、そもそもアテンションを節約することに大きく貢献できるでしょう。しかもそれだけではなく、集約したフィードの見出しとサマリーが一覧表示されることで、詳細な情報を確認する対象を絞れるため、さらにアテンションの無駄使いを防止できるのではないでしょうか。

このような一覧における利便性は、Blog でも特徴的です。エントリーの一覧では、「続きを読む」というリンクが用意され、冒頭の部分だけが抜粋されている表示形式が一般的です。この工夫でもやはり、読みたいエントリーを選択するための手がかりとなります。また、自動的に時系列の情報が付与されていることも、何気ないことのように感じますが、情報へのアクセス性を高めることに貢献しています。もちろん、タグづけも有効な機能です。

こう考えると、重要な情報を効率的に発信し、またその情報へ効率的にアクセスできるように、エンタープライズ内で RSS フィードを活用したり、イントラ Blog を立ち上げたりというアプローチが試みられるのは、ごく当然のことに思えます。

エンタープライズアプリケーションでの応用

ただ、道具立てを Web2.0 的ソフトウェアとすることで、エンタープライズアプリケーションの情報活用効率を高めるだけでなく、独自のユーザビリティの洗練によって改善する余地が、まだまだあるのではないかと思います。もちろん、インターネットアプリケーションのいい面は参考にすべきです。

例えば、情報の表示密度を意図的に下げる工夫も必要かもしれません。「MIND HACKS」では、視覚的に識別できる密度よりも、脳で情報として認知できる密度はかなり低いということが紹介されています。確かに、エンタープライズポータルに、より多くの情報を掲載することにこそ価値があると考えて、結果的に情報の視認性が悪化し、目をさらのようにしなければならない、ということはありがちではないでしょうか?

あるいは、やはり「MIND HACKS」で紹介されている復帰抑制や負のプライミングの効果を考慮できれば、より利用者のアテンションを無駄にしないユーザビリティにつながるかもしれません。

これらの原理からは、画面上の同じ箇所であまりに短期間に情報を更新し続けると、利用者はそこには注意を向けなくなる可能性があることや、利用者にとって価値の低い情報ばかりが繰り返し表示されると、やはりアテンションを低下させる可能性があると考えられます。

このような面では、上述した RSS リーダーや Blog の特徴が参考になるかもしれません。そして、一定の範囲でクローズされた世界で利用されるというエンタープライズアプリケーションの性質に特化した、インターネットアプリケーションとは一線を画すアプローチも考えられないものでしょうか?

例えば、カレンダーを切り口とした時系列ビューを単純なスケジュール管理にだけ使用するのではなく、Blog のような文書の保持でも共用することも有効かもしれません。その時系列ビューにはさらに、タスク管理やプロジェクト管理などを容易に統合できるでしょうし、基幹系のエンタープライズアプリケーションの処理をワークフロー的に組み込んで、定型業務へのアテンションにもつなげることができるかもしれません。

いずれにしろ、無限の情報と有限な人間のアテンションのギャップを埋めるための工夫の余地はまだまだありそうです。そしてそこには、新しい世界観をもたらすような製品が登場する可能性が、まだ残されているのではないかと思います。




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