メーカーの生産管理における、ネットコミュニティの活用今回は、メーカのサプライチェーンにおける生産管理のプロセスで、ネットコミュニティをどのように活用し得るかを論考する。
需要予測の精緻化 生産計画は、まずは販売計画に基いて立案される。 販売計画は、全社的な経営方針と、需要予測に基いて立案される。 需要予測は、過去の売上トレンドを参考にして立てられることが多い。末端の小売店までをネットワーキングしたサプライチェーン マネジメントの仕組みを構築し、小売店におけるリアルタイムの販売データを元に、需要予測を自動化しているようなメーカもあろうが、熟練したマーケターによる経験とカンに頼る部分も少なからずあろうかと思われる。 過去の売上トレンドは、あくまでも過去のものでしかない。過去のトレンドを示すグラフの線を未来に延長して引いたとしても、それはあくまでも一つのシミュレーションに過ぎない。過去が上昇トレンドであれば、シミュレーション上の数値も自ずと上がっていくものであるし、逆もまた然りである。過去の売上からだけでは、未知なる変化要因を読み取ることは出来ない。そこで、熟練したマーケターの経験とカンの出番となる。 ネットコミュニティ上には様々な種類のデータが日々蓄積されている。 これらの定量的、定性的な分析によって、メーカごと、製品ごと、あるいは製品世代ごと(製品ジャンルごと)の、 ・市場における単純な人気度、話題性(ネガティブな話題性も含む) ・具体的な購買意向を含む人気度(=これから買おうと思っているユーザーによる人気度) ・具体的な購買意向を含まない人気度(例えば、もう既に買ってしまって、使いこなし方を情報交換しているユーザーによる人気度) などが分析できる。 また、これらの相関関係も可視化することができる。 これらのネットコミュニティ分析をうまく活用することによって、熟練したマーケターによる経験とカンに頼った需要予測を、より精緻化していくことが出来る。製品(製品ジャンル)の世代交代の兆候も、いち早く察知することができるかもしれない。 生産調整/資材購買調整による、ムダの排除 需要予測を立てたら、販売計画、さらに生産計画に落とし込んでいく。 需要予測の精緻化によって、最適な生産調整、資材購買調整を行うことが出来るようになる。無駄な資材在庫、作り過ぎの製品在庫を最小化できることであろう。 【架空のケーススタディ】 傘メーカA社とB社の場合 雨季と乾季がはっきり分かれるa国の傘メーカA社は、数代続いた業界老舗で、毎年安定的に売上利益を計上している。 乾季においては雨は一切降らず、製品はまったく売れないために、需要はゼロ、工場も一切生産をストップしている。 雨季においては一日中雨が降り続くため、製品は安定的に売れていく。需要も一定で読みやすく、工場はフル稼働している。 市場環境、競合他社も研究し、毎シーズン、新しいデザインの製品を投入するなど、研究開発にも力を入れており、人気も高い。 需要予測がしやすいため、販売計画、生産計画の立案は容易であった。デザインも優れているA社の傘は、雨季においては飛ぶように売れ、a国の傘市場のトップシェアを握っていた。他方、競合傘メーカB社は、フォロワーとしてA社の後塵を拝し続けていた。 ある年、「雨濡れ健康法」なるものが、インターネット上のクチコミをきっかけとして、a国の若年女性層において局地的に密かなブームとなった。雨に濡れることによって、全身の血行がよくなり、冷え性も治り、長生きが出来る、というものである。「何を馬鹿なことを……」と、メディアでは取り上げられることもなく、A社は、例年通り、工場フル稼働の生産計画を立てて、傘の生産に入っていた。 他方、B社はこの「雨濡れ健康法」の局地的ブームを見逃さなかった。生産計画を急遽組み直し、売行きに応じてフレキシブルに生産量を調整出来る生産管理体制を整え、経営リソースを新製品「濡れても平気なスーツ」の研究開発に集中投下した。 大方の予測に反して、インターネット上のクチコミをきっかけとして「雨濡れ健康法」は、爆発的にa国全体でブームとなった。何が流行るか分からないものである。立ち上がりから、短期間で急速に全体に普及していくのがクチコミによる伝播の特徴である。傘はまったく売れなくなってしまった。工場フル稼働で製品を作り続けたA社は不良資材在庫、作り過ぎの製品在庫の山を抱え、再起不能の大打撃を被ってしまった。他方、B社は損害を最小限にとどめることができた上、新製品のヒットによって、一気に売上規模を拡大したとのことである。 (記事提供:価格.com) 関連テーマ 最新トップニュース
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