自社でネットコミュニティを立上げ/運営する場合のコストとリスク今までは、メーカ、サービス提供者などが、自社で運営しているのではないネットコミュニティを、どのように活用できるかをみてきた。その前提として、メーカやサービス提供者などが自前でゼロからネットコミュニティを企画して立上げ、運営していくのは多大なコストとリスクを背負い込むことになるので、できるだけやめたほうが良い、という筆者の判断がある。
今回は、それでも「自社でコミュニティを立ち上げたい」という方々のために、そのコストとリスクとしてどのようなものを考えなくてはならないのかを見ていきたいと思う。 ネットコミュニティを運営するコスト 【ネットワーク/システムのインフラ】 ネットコミュニティは、どのような形のものであれ、ひとたびサービス開始すると、その設計者/運営者の思惑を離れて、一人歩きしていくものである。設計者/運営者は、あくまでもコミュニティという箱を用意するだけであり、箱の中身は、そこに集まってきたユーザーが好き勝手に作り上げていく。 ユーザーが好き勝手に作り上げたもの(=コミュニティのコアコンテンツである、書込みなど)が、さらに他のユーザーを集客していき、徐々に自律した生態系が形成されていく。 コミュニティとしての規模が大きくなり、ある臨界点を超えると、運営者が特に集客施策を打たずとも、クチコミで新規ユーザーが集まってきて、規模が自然と大きくなっていく。 PVは上がり、訪問者数も増え、ユーザー滞在時間、書込み件数なども自然と膨張していくことだろう。これらに連動して、ネットワーク負荷、システム負荷も、日々重くなっていく。ネットワーク/システムを重いままにしておくと、ユーザーの不満に直結してしまうので、放置しておく訳にはいかず、これらは逐次増強していかなくてはならない。 ネットコミュニティを企画運営している価格.comでも毎月のように追加投資を迫られている状況であり、頭が痛い。 【人的な監視、保守】 ある程度の匿名性が確保されているネットコミュニティの場であれば、特定の企業・個人攻撃を含む誹謗中傷、荒らしの類が発生することを避けることは出来ない。運営者として、これらにどのように対応していくのかポリシーを設定した上で、監視、保守業務を行うことが必要になる。 価格.com においては、コミュニティ上の書込みをこまめに目視にて確認し、社内ガイドラインに抵触するものは全て即時削除を行っている。何らかのツールの類を用いることも検討して入るが、最終的には人による目視確認が必要であり、これを省くことは出来ない。 特に、特定の企業・個人攻撃や、個人情報の曝露などは、運営者にとっても訴訟リスクを抱えることになってしまうので、迅速な対応が必要だ。 コミュニティの規模の拡大に伴い、ユーザーからの様々な問合せも増えていくことだろう。価格.comにも、「パスワード忘れました。教えて下さい」、「発言番号○△番の書込みを、×○□の理由で削除して下さい」などのユーザーからのメールが、毎日、山のように押し寄せている。 当然、これらは、コミュニティとしての規模が大きくなればなるほど、負担が重くなっていくものだ。 【人的なモデレーション】 ネットコミュニティの場は、前述のように、ある程度育ってくると自律した生態系をもって一人歩きしていき、設計者/運営者のコントロールが効かなくなってしまう。 他方、運営者としては、コミュニティの中での議論の方向性や、話し合いのテーマなどをある程度コントロールしたい場合もあるだろう。その場合のやり方の一つとして、「司会者」、「シスオペ」、「管理人」など、運営者サイドの人物であることを明示した上で、その人物が場の取りまとめを行っていくという手法がある。 一定の範囲内では有効な手法であるが、ひとたびモデレーションを行うと、途中でやめる訳にはいかず、半永久的に継続して行っていかなくてはならないし、その負担は重い。 なお、価格.comではこの種のモデレーションは一切行っていない。 【その他】 ネットコミュニティ事業者は、多かれ少なかれ個人情報を持つことになるため、社内ガイドラインを設定し、CPO(チーフ プライバシ オフィサ)や専任の個人情報取扱責任者を設置したり、システムのセキュリティを強化したり……といったように、関連するコストが様々に発生する。 昨今、個人情報漏洩事件が多発しているが、主な原因は内部犯行だ。どれほど綿密な漏洩防止の仕組みを設けたとしても、発生する可能性を完全にゼロにすることは難しい。万が一、個人情報が漏洩したときの場合の被害のために、関連する損害保険に加入しておくことなども検討したほうが良いだろう。 ネットコミュニティを運営するリスク 【法務リスク】 不特定多数のユーザーが集まる以上、様々な訴訟リスクも存在する。コミュニティの場で誹謗中傷を受けたり、個人情報を曝露されてしまったユーザーによる訴訟では、ネットコミュニティ事業者が敗訴するケースもある。 また、何らかの形で個人情報を扱う場合は、前述のように、これが漏洩する可能性を考慮しておく必要がある。 この分野はまだまだ法制度が確立していない部分も多く、新しい情報をフォローし続けていくことも必要だ。 【レピュテーションリスク/信用リスク】 万が一、裁判沙汰、個人情報漏洩などの問題が発生すれば、運営企業全体の信用にキズがついてしまう。本業の売上利益にも甚大な悪影響が出てくることだろう。また、個人情報漏洩の場合は、漏洩したユーザーに対してお詫びもしなくてはならない。中小規模の企業であれば、場合によっては再起不能なほど壊滅的なダメージを被ってしまうこともあり得るだろう。 【途中でやめられないリスク】 ひとたびネットコミュニティのサービスを開始し、それユーザーの支持を受けて自律した生態系を持って動き始めると、運営企業の都合で一方的に閉鎖することは、極めて難しい。サービスを開始するに当たっては、半永久的にサービスを継続していく覚悟と準備が必要だ。(記事提供:価格.com) 関連記事 最新トップニュース
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