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ドリルを買う人が欲しいのは「穴」である■ ソリューションの売り上げはアクセスと連動しない
マーケティングの世界で古くから使われている格言に「ドリルを買いに来た人が欲しいのはドリルではなく穴である」というものがある。ソリューションを売る難しさの本質を表現している言葉だが、これが未だに理解されていない。 高額な CRM を導入して検索性と決済機能の優れた Web を作り、アフィリエイトやリスティング広告でアクセス数を増やしても、Web からの売り上げや資料請求が伸びない場合、考えてみる必要があるのは、自社の扱っている製品やサービスが「ソリューション」なのか「非ソリューション」なのか、という視点である。もしソリューションだった場合、売り上げや資料請求は Web へのアクセスとは連動しない。これは BtoC にも BtoB にも存在する問題である。 ■ あなたの商材は「ソリューション」か「非ソリューション」か ソリューションとは文字通り「問題の解決」だから、例えば退職金の運用方法について迷っている人がいれば、安全で利回りの良い金融商品はソリューションになる。「初めての株式投資セミナー」なども同様の問題を解決するソリューションとしてカテゴライズすることが出来る。BtoB であれば、採用、教育研修、マネージメントから生産、マーケティング、営業までほとんどの製品やサービスはソリューションにカテゴライズすることができる。 では非ソリューションとは何か。それはそれを購入することが問題の解決にはならないケースだ。婦人服やバッグ、靴などのファッション性のあるものや音楽や書籍などは基本的に非ソリューションにカテゴライズされる。 例えば Amazon.com で「指輪物語」を購入する人は何かの問題を解決したいわけではなく、それが読みたいから買うのだ。その人が求めるのは、この小説を元に作られた映画「ロードオブザリング」について書かれた本であり、同じ JR・トールキンによって書かれた別の本のリストであり、同じようにヨーロッパで書かれたファンタジー小説のリストである。だから最速で欲しい情報を表示してくれる検索機能が重要なのだ。 このように非ソリューションの製品やサービスの世界で競合優位性を作る要点は「価格競争力」「豊富な在庫」「検索機能」「決済機能」「ロジスティック」などに集約される。各地のアウトレットが大賑わいなのは「在庫量」と「価格」で優位性を作り出しているからだし、Amazon.com が短期間で世界最大の書籍販売企業になったのは価格で優位性を作れなかった代わりに「在庫量」と「検索機能」と「ロジスティック」で圧倒的な優位性を作れたからだ。 ■ ソリューションに不可欠な「正しい理解と整理」のプロセス では売っている製品やサービスが「ソリューション」だった場合、いったいどうやって競合優位性を作り出したら良いのだろうか。 最初に書いた「ドリルを買いに来た人が欲しいのはドリルではなく穴である」という言葉が本質的な答えになる。もしホームセンターの販売員がこのドリルを買いに来た人に最適のドリルを販売しようと思えばモーターなどのスペックをいくら説明しても意味が無い。 「今日はどんなドリルをお探しですか?」という質問も曖昧過ぎて適当とは言えない。この質問は買いにきた人が自分の解決すべき問題を正しく理解しているという前提に立っているからだ。ソリューションの世界ではそんなことはめったにあり得ない。 この販売員が目の前の顧客のために売場に並ぶ数多いドリルの中から最適の1個を選ぼうと思えば、まず知らなければならない情報は「どんな大きさの穴をあけたいのか」「相手の材質は何か(木材か、コンクリートか、鉄板か)」「誰が使うのか(屈強な男なのか、女性なのか、子供なのか)」「数個の穴をあければ良いのか、毎日多くの穴をあけなければならないのか」といったものであり、さらに突っ込んで「何をするための穴なのか」という目的までを聞かなければならないかもしれない。 これらの要点を正しく理解してはじめて必要なスペックが見えてくる。そのスペックと在庫商品をマッチングさせることで最適なドリルを選び出して薦めることができるのだ。もし穴をあけるのが3週間先という時間軸の情報も持っていれば、売り場に最適なドリルが無い場合でも、最適のドリルを取り寄せることができる。解決すべき問題を正しく理解しなければ最適の解決策を出せるはずがないのだ。 こうした「問題の本質的な理解と整理」というプロセスが必要な「ソリューション」の世界では、豊富な在庫と利便性の高い検索機能や決済機能だけでは残念ながら競合優位性は築けない。 それどころか、付加価値のつもりで揃えた豊富な在庫情報の中で多くの顧客が迷子になっているかもしれない。だとしたら Web も含めたマーケティングの基本構造を早急に変える必要がある。今までとは違う角度から自社の製品やサービスがソリューションなのか、非ソリューションなのか、を顧客の立場に立って検討する時間を作ると大きな収穫が得られるかも知れない。 関連記事 最新トップニュース
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