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2007年6月6日 12:30

広告代理店も知らないリスティング広告の罠

■集客を増やせばコンバージョンが上がる?
先日、インターネット広告代理店の方から相談を受けた。話の主旨は、「1年前から、クライアントの Web サイトのコンバージョンが落ちてきているのだが、どうすれば良いか?」という内容だった。その Web サイトのコンバージョンは、社長が主催するセミナーに訪問者を申し込みさせることなのだが、代理店が考えている施策は、『集客を増やすために SEM を強化する』ことと、『サイトの全面リニューアル』だった。

広告代理店に、「なぜ集客を増やせばコンバージョンが上がるのか?」と問うと、「コンバージョンを増やしたければ、母数を増やせば良いからです」という答えが返ってきた。訪問が10,000件あってコンバージョン率が0.1%なら10件。訪問者が20,000件あってコンバージョン率が0.1%なら20件。確かに集客が増えれば申し込みが増える計算だ。

「どんなキーワードで出稿するのですか?」と尋ねてキーワードのチョイスを見せてもらうと、ビッグワード(ビッグワードとは「転職」「中古車」など月間10万件以上検索されるキーワード)が多い。確かに集客はできるだろうが、本気のお客さんを取り込める見込みは低そうだ。しかも、ビッグワードなので、クライアントにかなりの出費を強いるのは間違いない。

■広告は課題解決のための特効薬?
ビッグワードの出稿も認知という意味では必要だろう。ただ、どれくらい効果が上がるかは疑問が残る。クライアントにしてみれば、「広告費用の半分を無駄にしていることはわかっている。ただ、どの半分かがわからないのだ!」(ジョン・ワナメーカー)といったところだろう。

さて、広告代理店の話が広告(集客)に終始するのは何故だろうか?それはビジネスモデルに起因する。広告代理店ビジネスは広告枠を広告主(クライアント)に売り、手数料を得ることで成り立っている。インターネット広告代理店なら、手数料以外に、その枠に載せる広告の制作を指示したり、ランディングページを制作することでも収益を得ている。だから、クライアントが「広告を出して効果が上がらなかった」と言えば、例えば「広告のクリエイティブをもっと良くしましょう」と動画広告を提案し、「それでも効果が上がらなかった」と言えば、例えば「ランディングページをもっと良くしましょう」と新しいランディングページの企画を提案してくるのだ。

申し込み数が減ったという課題に対し、リスティング広告を解決策として出すのは間違いではない。確かに、集客を増やさなければ認知の向上も売り上げ増も叶わない。実はこの状態、人間に例えるならインフルエンザにかかった時に熱が出たからといって熱さましを飲んでしまったり、咳が出るからといって咳止めを飲むのに似ている。インフルエンザにかかって、なぜ咳、くしゃみ、鼻水が出るかと言えば、体の外にウィルスを出すためであり、なぜ発熱するかといえば、ウィルスが一番繁殖しやすい35〜36度よりも体温を高くし増えないように抑えるためだ。それを、ウィルスを体の外に追い出す前に熱を下げてしまえば、ウィルスを繁殖させる結果となる。

本当に大事なのは、高熱でウィルスを抑えている間に免疫力を高めることだ。Web サイトにも同じことが言える。まず問題を特定し、悪い箇所を直してから集客を図るのが正しいアプローチだ。悪い箇所をそのままに集客してしまえば、せっかく来てくれた訪問者を逃がしてしまったり、ブランド価値の低下を招きかねない。リスティング広告は時に劇的に来訪者を増やせる効果のある薬だが、Web サイトの問題すべてを解決してくれる万能薬ではない。問題を把握しないまま良かれと思って使った薬が実は逆に作用することは人間の体でも起こりうることだが、Web サイトにとってのリスティング広告も同じ危険性があるのだ。

■集客の薬を飲む前に Web サイトの診察を受けよう
もちろん、立派な Web サイトをもっているのに何の集客施策も講じていないのなら、今すぐ広告をはじめとした集客に着手する必要がある。しかし、既に集客ができているなら、まずは Web サイトの現状把握を行うことが必要だ。

手段として、定量的に問題箇所を把握できるアクセス解析ツールの活用をお勧めする。その際、訪問者の入り口となるランディングページとコンバージョンページだけをチェックするだけでは不十分だ。私が担当しているクライアントの Web サイトでよく見かける問題は、サービスやセミナー、購入等の入り口ページからコンバージョンページに至る間での離脱だ。離脱率85%はざら。限りなく100%に近い離脱率を示すこともある。これはもう、「ランディングページのコンバージョン率が50%だから何とかしないと」という次元の話ではない。考えてみて欲しい。訪問者が申し込みのプロセスを踏み始めたということは、その商品/サービスへの興味関心度が高いのはもちろん、入手したい、という気持ちが高まっている状態だ。そんな見込み客の大半を逃してしまっているのだからもったいない。このような場合は、集客よりも先に申し込みプロセスを改善すべきだ。

さて、あなたのサイトは、どこがボトルネックになっているだろうか?なんとなく気になる場合には、一度、Web サイトの健康診断を実施することをお勧めする。

(株式会社デジタルフォレスト コンサルティング部 部長 前野有美)


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