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2007年9月4日 09:00

第六十回 「Enterprise 2.0 の事例研究(3)ユーザー参加の仕組みを利用した市場調査」

消費者が Web 上に情報を発信するためのツールが整備され、「ソーシャルメディア」とも呼ぶべき一大メディアが形成されると、その影響力の大きさを踏まえたマーケティング戦略が企業に求められるようになった。

今回は、そうした試みの一つとして、ユーザー参加型の仕組みを利用したマーケティングリサーチの方法を取り上げてみよう。企業内部の集合知を活用するという意味ではないため、いわゆる「Enterprise 2.0」の考えとは少々趣を異にするが、集合知をビジネスに活用するという意味では依然として重要だ。

1. 顧客のニーズを直接収集する

一般個人消費者を対象としたビジネスの場合、商品やサービスに対する細かなクレームや評価、潜在的なニーズ、顧客のデモグラフィック属性、市場の価格動向、購入の決め手となったポイントなど、消費者が発信する情報をうまく汲み取る方法を見つけることは死活の問題だ。このための最もシンプルな方法は、Web 上で消費者に直接レビューを書いてもらうというものだ。

この分野では、Web 上で配布できるソフトウェアに対して、ユーザーからのフィードバックを受け取るためのコミュニティを企業側が設け、そこでユーザー相互サポートや、製品改善のためのニーズ調査などを行うという手法が従来行われてきた。この手法は、ユーザーとの直接対話が可能だが、そもそも企業に好意的なユーザーしか集まらないという可能性もある。そこで、第三者が運営するサイトに集まった、自社に関するクチコミ情報を収集するという方法が役に立つ。

サンフランシスコに拠点を置く yelp は、消費者向けビジネスに関する巨大レビューサイトで、米国内で月間150万人が訪問する。ここでは、レストラン、病院、大工、自動車整備サービス、ホテル、教育機関、不動産、金融機関、宗教施設など、ありとあらゆるローカルビジネスについてユーザーのレビューを集めている。サンフランシスコの商店主は毎朝 yelp を訪問し、顧客の評判をチェックすることが日課となっているという。

こうした第三者サイトは、ユーザーの率直な意見やニーズ、客観的なトレンドを調査することに向いており、何より運営コストもかからない。リアルビジネスに関するレビューだけでなく、BazaarvoiceBuzzillions といった、EC サイトにクチコミを加えるためのツールも現れている。

図1 yelp:ローカルビジネス・レビューの収集


2. 情報を統合・検索する

ユーザーは一か所に情報を発信するとは限らず、発信形態は多様である。Blog の記事であったり、サポートサイトへの質問投稿であったり、レビューサイトへの投稿であったりするだろう。そこでこうした雑多な情報を整理統合することが必要となる。

最もシンプルなのは、ユーザーの声として最も普及している Blog を検索するという方法だ。Google Blog SearchTechnorati といった Blog 検索エンジンの利用がこれにあたる。

また、こうした Blog 記事からキーワードを抽出し、市場の盛り上がり具合や、ポジティブ/ネガティブ評判の検索を可能にするサービスも成長してきている。BuzzLogic は、こうしたマーケティングデータを加工してビジュアル化し、自社商品を市場に広める「インフルエンサー」を特定したり、その波及効果をマップ状に表示したりするサービスを提供している。企業は一般消費者を導くインフルエンサーの動向に注力することで、より効果的なマーケティングが可能となる。

図2 BuzzLogic:ユーザー発信情報の加工


このように、ユーザー参加型の仕組みをマーケティングリサーチに活用することで、次のようなメリットが得られるだろう。

1. 一次情報を利用できる

Web 上に発信されるユーザーの声は、まさしくユーザー自身の生の声、一次情報だ。調査会社やマスメディアのバイアスがかかっていることもなく、またポジティブな情報もネガティブな情報も織り交ぜた収集が可能となる。直接的なコミュニケーションにより得られるユーザーの一次情報はもっとも価値がある。

2. リアルタイムに情報収集ができる

Blog の更新と ping 送信を活用すると、Blog 検索エンジンにほぼリアルタイムに近い頻度で情報を提供することができる。また、Blog を使わずとも、メール通知や RSS 配信によって、従来に比較して情報の波及スピードは極めて向上している。昨今のユーザー参加ツールは、こうした情報の流通をリアルタイムに行うための仕組みが当初から充実しており、その特性はマーケティングリサーチに役立つだろう。

3. 情報収集コストを低減できる

ユーザー参加の仕組みを取り入れることで、ユーザー相互にもコミュニケーションが生まれると、必ずその中で強い影響力を持つ「インフルエンサー」が現れる。彼らへうまくアプローチすることでユーザーとのやり取りを省力化することができるだろう。

一方で、マーケティングデータの一部となることをユーザーに意識させず、かつユーザーに楽しく情報を発信してもらう仕組みが必要だ。ただ、ユーザー参加の仕組みを整えると、情報収集のコストは低減することができるが、得られた情報の分析にはそれなりのコストをかける必要がある。

ユーザーは今や Web 上のあらゆる場所で情報を発信しており、この声を効率的に収集し、マーケティングリサーチを行うことは企業活動に資することはあっても害することはない。そして、ユーザーの情報発信は今後ますます増えてくるだろう。企業に求められるのは、マーケティングリサーチのための仕組みを素早く取り入れること、そしてユーザーの一次情報の持つ価値に気づくことだろう。

【当コラム執筆は、Looops Communications 代表である斉藤徹と、同社企画部長の大迫正治が担当しています】


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