Enterprise 2.0を標榜する多くのサービスの中で、本命との呼び声が高いものがある。それが Wiki だ。オンライン百科事典 Wikipedia の華々しい成功を経て、企業内に持ち込まれた Wiki は、Enterprise Wiki、Corporate Wiki と呼ばれ徐々に普及してきている。
その導入ハードルの低さと、確実で高い効果から、すでに BBC や Citigroup、Yahoo、BMW、Boeing、Accenture といった数々の大企業が採用するに至っており、調査会社の米 Gartner は、2009年には50%の企業が Wiki を採用すると予想している。今回はこの Enterprise Wiki を取り上げ、その活用法や特徴、導入の背景を明らかにしていく。
Wiki は「複数のユーザーが一つのドキュメントを編集する」「ドキュメント同士が構造化される」「編集履歴が残る」といった特徴を持っている。まずはこれらの特徴がどのように活用されているか俯瞰してみよう。
1. 複数のユーザーが一つのドキュメントを編集する
ドキュメントの編集が常に一箇所で行われることで、異なるバージョンのドキュメントがやり取りされることがなくなれば、ユーザーは唯一最新の「解」として Wiki を参照することができるようになる。
例えば企業内で皆が参照するドキュメントとして最も重要なものの一つに業務マニュアルが挙げられるが、これは Wiki と極めて親和性が高いと言える。Socialtext をはじめとする多くの Wiki ではアクセスコントロール機能も備えており、限定されたユーザーの間で共同作業を行うことも可能だ。
図1 Socialtext:履歴の管理
図2 Socialtext:アクセスコントロール
2. ドキュメント同士が構造化される
リンクの作成、タグの付与、階層化、インデックス化などを自由に行うことができる Wiki を使えば、構造化されたドキュメントを誰でも作成することができる。階層化された Wiki はファイルマネージャとして機能し、タグを付与することでフォークソノミー(ユーザーによる自由な分類)を行うことも可能だ。一定のフローに従った利用、例えばオンライン研修プログラムなどに Wiki が活用された事例もある。検索エンジンとの親和性が高いことも Wiki の特徴だ。
3. 編集履歴が残る
Wiki は誰でも編集可能なドキュメントだが、すべての編集履歴がきちんと残ることも重要な特徴である。この機能によって、過去になされたディスカッションの記録や、構想段階でやり取りされた情報なども、後から参照することができる。未開拓の分野に新たなプロジェクトを企画して取り組んでいく場合など、試行錯誤の記録を残すことでノウハウを集積することができるだろう。
こうした点が Wiki の基本的な特徴だが、昨今の Wiki では機能の大幅な拡充が図られ、他のアプリケーションを飲み込むほどに勢いを増している。例えば Atlassian が提供する Confluence という Wiki ソフトウェアでは、チャート、画像ライブラリ、地図、添付ファイルなどの基本的なプラグインだけでなく、カレンダーやタスク管理、オフィスアプリケーションとの連携など、本格的な拡張性を担保しており、広く業務アプリケーションとしての利便性を備えている。
図3 Atlassian Confluence:豊富な Wiki プラグイン
このように Wiki が次第に完成度を増し、企業への導入が進んでいる背景にはいくつかの理由がある。
1. ユーザビリティ
Wiki ではグラフィカルなユーザーインターフェイス(GUI)を進化させることで、難解なマークアップ言語を理解することなく、ボタン一つで様々なテキスト装飾を行ったり、図や表を挿入したりできるようになった。
2. 導入が早い
Wiki はシンプルなテキストの集合体であり、アプリケーションの構造もシンプルである。スモールスタートが可能で、かつ拡張性も高いため、導入へのハードルが低かったと言える。
これらのポイントが Wiki の導入の背景にあるが、Wiki と言えど課題も存在する。ケルン大学の調査によると、Wiki の問題点として最も大きなものは、「ユーザーがドキュメント編集に参加しない」というものだ。この点、ユーザー参加型のサービスが企業に受け入れられ、ユーザーが本当に参加するようになるためには、「使いやすさ」と「企業文化」という二つの大きな壁を乗り越える必要がある。