Webマーケティング 2007年11月6日 09:00

第六十五回 「Enterprise 2.0の事例研究(8)オンラインオフィスツールによる共同編集」

著者: 斉藤 徹・大迫 正治
2007年11月6日 09:00 付の記事
□国内internet.com発の記事

前回までに取り上げた事例は、Wiki やソーシャルブックマークなど、主に一般の個人ユーザー向けに普及したユーザー参加型サービスを企業内に活かす手法だった。しかし、企業内で最もよく利用されているアプリケーションと言えば、Microsoft 社の Office シリーズに代表されるような、文書作成・表計算・プレゼンテーションの「オフィスツール三点セット」である。

今回は、このオフィスツールを Web ベースのものへと進化させた、新しい取り組みを取り上げてみよう。

オンラインオフィスツールと呼ばれるこの分野は、今まさに百花繚乱の様相を呈している。文書作成・表計算・プレゼンテーションの全てを揃えた統合型のものといえば、Google DocumentthinkfreeZoho などが成長している。また、個別のアプリケーションに特化したものでは、表計算の分野では EditGridxcelleryNumbler などが台頭しており、プレゼンテーションの分野では slideliveSpresent などが成長している。また、ダイアグラム作成などに特化した gliffymxGraph、プロジェクト管理に特化した Solodox なども現れてきている。  

こうしたオンラインオフィスツールの特徴としては、次のような点が挙げられる。

1. 共同編集できる

他のユーザーと同時に同じドキュメントをブラウザで開き、編集することができることは、こうしたオンラインオフィスツールの最大の特徴だ。この機能は特に、集計作業や情報集約作業によく利用される表計算サービスにおいて役立つもので、Google Spreadsheets や Zoho Sheet、EditGrid などで導入されている。ユーザーは他に誰がドキュメント閲覧しているか確認しながら作業を進めることができ、必要に応じてチャットをすることで問題を解決することができる。

また、共同編集することでドキュメントサイズを最小限に維持することができたり、再編集の手間も軽減されたりするほか、他のユーザーによる編集の過程を垣間見ることで、新しいアイデアの創造を促す効果もある。ブレーンストーミングにも有効だ。

2. 他のサイト内にエンベッド(埋め込み表示)ができる

オンラインオフィスツールだけでなく、Wiki、グループウェア、マッシュアップポータル、Blog、SNS など業務に利用されるアプリケーションが次々と Web をベースとしたものになるにつれ、これらのサービスの相互に乗り入れがいかに簡単にできるかが重要となってくる。Zoho や EditGrid を始め多くのサービスでは、YouTube の動画を Blog に貼り付けるような感覚で、手軽に他のサイトにエンベッドすることを許可している。

これにより、サービス間のスムーズな連携がなされ、ユーザーの利便性は飛躍的に向上するとともに、例えば Web サイトの問い合わせフォームを Zoho Creator などのデータベースツールと連携させたり、セミナーで使用したプレゼンテーション資料をサイトに埋め込んで公開したりすることが可能となる。

3. 公開制限ができる

共同作業の場が Web 上に作られたとはいえ、上司と部下の関係、メイン編集者とアシスタントの関係、執筆者と校正担当者の関係など、リアルな世界ではドキュメント編集をめぐって多様な人間関係が作られている。このため、オンラインオフィスツールの世界でも、これに見合った機能を盛り込むことが求められる。

Thinkfree や Zoho では、公開する相手を選択して通知メールを送信したり、閲覧のみならず編集する権限を付与したりすることができる。ドキュメントを共有するユーザーが編集した場合には、通知メールを受け取ることも可能だ。

4. オフラインでも利用できる

オンラインオフィスツールの弱点の一つは、使いやすさが通信状態の良し悪しに大きく依存している点だ。この点を考慮して、Thinkfree などのサービスでは、オフライン状態でも利用可能なサービスを提供している。

5. Web 2.0サービスの基本的要素を備えている

多くのサービスでは、ドキュメントへのタギング、五つの星マークによるレーティング、コメントの付加など、ユーザーが気軽に参加し、集合知形成に寄与できるような機能を用意している。こうしたノウハウは、flickr や YouTube といった消費者向けの Web 2.0サービスで培われたものだ。

このように、デスクトップで利用するオフィスツールに匹敵するほどの機能だけでなく、時にそれらを凌駕するほど洗練された機能を持つオンラインオフィスツールだが、Web サービスゆえのストレージの制限や、通信に起因するレスポンスのスピード低下、Microsoft という揺ぎないデファクトスタンダードへの対応など、まだまだ課題も残っている。

しかし、小規模の事業者や局所的なワーキンググループを中心に、着実にオンラインオフィスツールは導入されており、メーラーやスケジューラーを一括して提供することで業務環境の統合も進んできている。企業が本格的に Enterprise 2.0への道を歩むにつれて、オンラインオフィスツールが業務の中心になる日もそう遠くはないのかもしれない。

【当コラム執筆は、Looops Communications 代表である斉藤徹と、同社企画部長の大迫正治が担当しています】

記事提供:株式会社 Looops Communications(ループス・コミュニケーションズ)



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