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驚異的なV字回復を果たした無印良品の秘密■西友のプライベートブランドとして始まった無印良品
2008年の日経 MJ ヒット商品番付の横綱に、小売業のプライベートブランド(PB)の「セブンプレミアム」「トップバリュー」が選ばれた。昨年前半の原料・燃料の値上がり、年後半の金融危機で、消費者の生活防衛意識の高まりを反映したものだ。 1980年、第二次オイルショックで同じように消費マインドが冷え込んだ時に、「わけあって、安い」をコンセプトに、西友のプライベートブランドとして生まれたのが「無印良品」であった。その後、独立店舗を構え専門店化し、西友グループから脱皮。海外展開も含め、品揃えや店舗展開を拡大し、順調に業績を伸ばしてきた。 しかし、順調に見える無印良品にも経営危機があった。会社を設立以来、増収増益で発展し続けてきた同社だが、2000年ごろから突如低迷しはじめる。2001年には急激な業績不振に陥り、株価も1万7,350円から2,750円まで急落、時価総額が75%も目減りした。創業20年目にしてはじめて減益に転じた無印良品だが、その後の経営改革により、5年で驚異的なV字回復を果たすことになる。 この時、無印良品が断行した経営改革はどのようなものであったのだろうか。 ■2001年の業績急落 最悪の状況であった2001年8月期連結中間決算の数字を調べてみよう。 急激な出店攻勢と店舗の大型化で、なんと51%も売場面積が拡大したにも係わらず、売上高は1.2%の増収に留まっている。既存店売上は前年比18.6%も減少し、坪販売効率も35%急落。過去2年で既存店の買上客数は坪当たり31%減少。客離れに客単価ダウンが加わり、わずか2年で月坪効率が31.7万円から17.5万円と、45%近くも低下した。 これに衣料品の在庫処分38億3,000万円、海外子会社関連損失17億4,500万円など、計63億6,000万円の特別損失が加わり、創業以来、初の最終赤字(38億1,800万円)に転落している。 店舗の大型化と平行して進めてきたのが品目数の拡充で、1,000坪級のプラッツ近鉄店(京都)出店時の総品目数は5,959品目と前年から1.5倍近くも拡大。品目数の急増で商品開発が後手にまわり、無印良品の「こだわり」が薄れてしまっていたのだ。 「わけあって安い」を謳い神話を築いてきた無印だが、成長神話に安住して「ユニクロ」や「ダイソー」に低価格商品開発で追い抜かれ、その存在意義を原点から問われる事態に陥ったのが急激な凋落の最大要因だ。 ■V字回復の経営改革 このように、最悪の状態であった2001年に社長に就任したのが松井忠三氏(現会長)である。松井氏は、それまでの成長神話と成功体験による驕りが経営を蝕んだとし、新たな仕組みを構築すべく経営改革に着手する。 まずは、出血を止めるために、不採算店の閉鎖や海外事業のリストラなどを実施。次に、しまむらの藤原秀次郎会長にも教えを請い、経営改革プロジェクトを発足した。従来のマニュアルを全て見直して業務改革を実施するとともに、取引先を絞り込み、直接取引を拡大して仕入原価を圧縮、在庫圧縮による販売管理経費削減にも取り組み、増収増益体制を復活させた。 そして、業績急落の最大の原因であった商品力の復活に取り組む。急拡大して薄まっていた商品の品目を絞って、競争力のある商品の開発に注力したのである。その結果、2007年には売り上げ1,620億円、経常利益186億円と見事なV字回復を果したのだ。 いったん傷ついたブランドを復活させるのは並大抵のことではない。では、どのようにして、商品力を復活させることができたのだろうか。 ■モノづくりコミュニティ 元々、セゾングループ元代表の堤清二氏と、希代のクリエイティブディレクター故・田中一光氏が、既存ブランドに対するアンチテーゼとしてコンセプトをつくったのが無印良品であった。 当初は素材、工程、包装などを省略することで「わけあって安い」が顧客に支持されていた。しかしながら、商品そのものの差別化が不足していたため、顧客ニーズとのギャップが大きくなっていた。 こうした危機の中、2001年9月25日に生活者視点の商品開発を推進するために、顧客と「声のキャッチボール」をしながら商品開発を行なう、「モノづくりコミュニティ」を開設したのである。 当時の商品本部生活雑貨2部部長の高橋幸平氏は「オンラインコミュニティによるモノづくり」について、次のように語っている。 「企業と生活者の関係においては、企業が伝えたいことが必ずしも生活者に100%イコールで伝わるわけではありませんよね。また逆に、生活者が伝えたいメッセージを企業が受け取るときには、どうしても自分の都合のいいように受け取ってしまう…。なぜこのようなモノを作るにいたったかや、モノづくりの途中経過を Web 上で公開し、お客様の意見を聞きながら商品開発を進めていこうというのがモノづくりコミュニティです。」 このオンラインコミュニティによるモノづくりのステップは、 (1)顧客がアイディアを投稿 (2)アイディアに投票 (3)デザインに投票 (4)プロジェクト進捗をレポート (5)購入の予約 (6)商品化決定 という流れで、予約が一定数を超えると商品化するというものである。 無印良品のコンセプトは保ちながら、生活者視点を取り込むという、コンセプトアウトとマーケットインを上手に両立させようとするものだ。そして、このオンラインコミュニティにおける生活者との「声のキャッチボール」から、様々なヒット商品、ロングセラー商品が生まれることになる。 生活者との「声のキャッチボール」によって、素材、機能、デザインを見直す商品改善と、生活者ならではの気づきを活用した商品企画・開発を実現し、無印良品の商品は、不断の進化を遂げることになったのだ。シンプルだけど、飽きられない無印良品。これこそが無印良品復活の秘密である。 次回は具体的な例で、この「モノづくりコミュニティ」による商品開発について見てみよう。 執筆:株式会社ワールド・カフェ 代表取締役 笠原 造 監修:株式会社ループス・コミュニケーションズ 代表取締役 斉藤 徹 関連記事 最新トップニュース
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