Marketing
マーケティング
絶大な信頼感を醸成するソーシャルコマース…通販大手ニッセンのオンラインショッピング
■まだこれからの日本の「ソーシャルコマース」
前回のコラム『急成長の秘密は、「体験」と「コミュニケーション」のデザイン。映画ファンのための巨大 SNS“Flixster”』で、映画ファンのための巨大 SNS “Flixster”は、極めて優れた「ソーシャルコマース」であることによって、急成長したということを述べた。EC と SNS を取って付けたように融合するのではなく、リアルな映画ファンの行動に基づいた「情報」、「交流」、「体験」をシームレスにサポートしているということが、重要な成功要因であった。
日本でも、徐々に EC サイトのソーシャルコマース化が進んでいるが、海外に比べると、ユーザー視点のシナリオが十分でないことなどから、ユーザーの参加が少なく、まだこれからといった段階である。
EC サイトへの商品レビューやクチコミの導入については、かなり一般的になってきているが、投稿数が少なかったり、ユーザーのプロフィールがあっても年齢や性別のみに留まっているため、信頼度は、サイトの運営会社やブランドに依存しなければならないことが多い。
こうした状況において、通販大手のニッセンが自社 EC サイト「ニッセンのオンラインショッピング」に顧客参加の仕組みを取り入れ、ソーシャルコマース化した。
■ニッセンのコミュニティサイト「ハピテラ」
書店などで無料カタログを配布していて「カタログ通販」のイメージが強いニッセンだが、実は、EC への取り組みは2000年からと早く、インターネットでの顧客数もここ数年は毎年100万人ペースで急速に増加しており、現在500万人を超えている。売上高も、1,554億円(2008年12月期連結)のうち、インターネット経由が約3割、携帯だけでも売上高147億円で約1割に上っている。
2007年11月、このニッセンが運営する EC サイト「ニッセンのオンラインショップ」の会員向けに、SNS を採用した顧客参加型コミュニティサイト「ハピテラ」を新設した。
・ハピテラ http://happy.nissen.co.jp/
ハピテラでは、既存の EC サイトの顧客データベースを活用するために、シングルサインオンによるサイト間連携を行っている。これにより、500万人を超える既存顧客をハピテラのコミュニティに無理なく誘導することが可能となり、顧客は EC サイトとコミュニティサイトを自由に行き来することができる。
巨大な EC サイトがソーシャルコマースへと変貌を遂げたのである。
■「信頼」と「同好」に基づいた絶大な信頼感を醸成
ハピテラの口コミで Amazon と異なるのは、実際に商品を購入したユーザーしか書き込めないことだ。ネット上での購入に限らず、電話や FAX で購入したユーザーも、購入した商品に関しては口コミを投稿したり、星印によって評価を行なったりすることができる。これにより口コミが信頼性は大幅にアップしている。
口コミは EC サイトの各商品ページに表示されることはもちろん、各ユーザーのマイページで一括管理することが可能だ。口コミを閲覧したユーザーはこれが「参考になった」かを評価することができ、この評価はユーザーのランキングに活用されるため、投稿を促す大きなインセンティブとなっている。
顧客同士で商品についてコメントを交換することも可能だ。また、顧客は、日記をつけたり、コミュニティを開設して、様々な話題について、顧客同士で会話を楽しむことも出来る。
商品レビューを導入している EC サイトも多くなってきているが、誰もがレビューを投稿できたり、プロフィールが無いために、「メーカーや販売者の書き込みや、ヤラセではないか」と疑われることもある。
ハピテラが、このような単なる商品レビューや口コミを導入した EC サイトと一線を画すのは、「信頼」と「同好」に基づいた絶大な信頼感があるということだ。
ハピテラでは、口コミの投稿者のプロフィールや他にどのような商品を買ってどのような感想をもったかを知ることができるので、自分と似た趣味・嗜好の会員が投稿した口コミを参考にすることができ、さらに購入を検討している商品について気にかかることがあれば、その商品を買って、商品レビューを投稿している会員に直接質問することもできる。
■ランキングで「ついで買い」も促進
口コミの表示も、個別の商品レビューのみでなく、新着順、評価順、役に立った順、件数順などの様々なランキングが表示されるために、自分と似た趣味・嗜好の人のみではなく、みんなの意見としてはどうかということも確認することができる。
企業の販売戦略や一方的な思いによって作られた「ランキング」ではなく、言わば「群衆の叡智」や「集合知」によるランキングである。
顧客による口コミをベースとしたランキングは、信頼性が高く、顧客にとっても役立つ。このランキングを見ることによって、ついで買いが促進されるという効果も出ているようだ。
■ハピテラによるソーシャルコマース化の大きな効果
ハピテラによるソーシャルコマース化の目的としては、(1)巨大な EC サイトの人気(ヒトケ)を見える化し、賑わいを感じられるようにすること、(2)既存客の活性化、(3)コンバージョン率の向上、(4)新規顧客層の拡大などによる売上のアップが中心と考えられる。実際に、ハピテラを利用している会員の売上は、利用していない会員よりも高いとのことだ。しかし、それ以外にも、大きな効果があると思われる。
ひとつは、商品の改善や新商品の企画開発に役立てるということである。ハピテラの口コミや日記、コミュニティなどに集まる膨大な「顧客の声」は貴重なマーケティングの宝である。「顧客の声」を「見える化」して、分析することにより、従来は気がつかなかった、顧客視点ならではのニーズやウォンツを知ることができる。
また、顧客離反の回避がある。通販の場合、どうしても写真と実物に差があり、「購入してみたら、イメージと違っていて失敗したので、利用するのを辞めた」というケースが多い。ハピテラの口コミや会員同士の情報交換により、このような問題を減らし、顧客離反を回避することができる。
さらに通販会社にとって大きな効果は、返品率の削減である。通販を利用する場合、とりあえず気になったものを全て取り寄せてみて、現物を見て、本当に気に入ったもの以外は気軽に返品するということも多く、通販各社は、このような返品コストが経営を圧迫するほどの経費となっている。ハピテラは、事前に様々な角度から商品を検討できるので、返品率を下げる効果があると思われる。この効果は大きい。
今まで顧客に対して一方的に商品と情報を提供してきた企業にとって、商品レビューやアフィリエイトなどの部分的な顧客参加に留まらず、商品に対する批判的な意見も掲載し、顧客との率直な対話をオープンに行なうということは、大変な勇気と努力を必要とすることである。しかし、その果実は余りあるだろう。
参考文献:「Web コミュニティでいちばん大切なこと。CGM ビジネス“成功請負人”たちの考え方」 インプレス出版
執筆:株式会社ワールド・カフェ 代表取締役 笠原 造
監修:株式会社ループス・コミュニケーションズ 代表取締役 斉藤 徹
前回のコラム『急成長の秘密は、「体験」と「コミュニケーション」のデザイン。映画ファンのための巨大 SNS“Flixster”』で、映画ファンのための巨大 SNS “Flixster”は、極めて優れた「ソーシャルコマース」であることによって、急成長したということを述べた。EC と SNS を取って付けたように融合するのではなく、リアルな映画ファンの行動に基づいた「情報」、「交流」、「体験」をシームレスにサポートしているということが、重要な成功要因であった。
日本でも、徐々に EC サイトのソーシャルコマース化が進んでいるが、海外に比べると、ユーザー視点のシナリオが十分でないことなどから、ユーザーの参加が少なく、まだこれからといった段階である。
EC サイトへの商品レビューやクチコミの導入については、かなり一般的になってきているが、投稿数が少なかったり、ユーザーのプロフィールがあっても年齢や性別のみに留まっているため、信頼度は、サイトの運営会社やブランドに依存しなければならないことが多い。
こうした状況において、通販大手のニッセンが自社 EC サイト「ニッセンのオンラインショッピング」に顧客参加の仕組みを取り入れ、ソーシャルコマース化した。
■ニッセンのコミュニティサイト「ハピテラ」
書店などで無料カタログを配布していて「カタログ通販」のイメージが強いニッセンだが、実は、EC への取り組みは2000年からと早く、インターネットでの顧客数もここ数年は毎年100万人ペースで急速に増加しており、現在500万人を超えている。売上高も、1,554億円(2008年12月期連結)のうち、インターネット経由が約3割、携帯だけでも売上高147億円で約1割に上っている。
2007年11月、このニッセンが運営する EC サイト「ニッセンのオンラインショップ」の会員向けに、SNS を採用した顧客参加型コミュニティサイト「ハピテラ」を新設した。
・ハピテラ http://happy.nissen.co.jp/
ハピテラでは、既存の EC サイトの顧客データベースを活用するために、シングルサインオンによるサイト間連携を行っている。これにより、500万人を超える既存顧客をハピテラのコミュニティに無理なく誘導することが可能となり、顧客は EC サイトとコミュニティサイトを自由に行き来することができる。
巨大な EC サイトがソーシャルコマースへと変貌を遂げたのである。
■「信頼」と「同好」に基づいた絶大な信頼感を醸成
ハピテラの口コミで Amazon と異なるのは、実際に商品を購入したユーザーしか書き込めないことだ。ネット上での購入に限らず、電話や FAX で購入したユーザーも、購入した商品に関しては口コミを投稿したり、星印によって評価を行なったりすることができる。これにより口コミが信頼性は大幅にアップしている。
口コミは EC サイトの各商品ページに表示されることはもちろん、各ユーザーのマイページで一括管理することが可能だ。口コミを閲覧したユーザーはこれが「参考になった」かを評価することができ、この評価はユーザーのランキングに活用されるため、投稿を促す大きなインセンティブとなっている。
顧客同士で商品についてコメントを交換することも可能だ。また、顧客は、日記をつけたり、コミュニティを開設して、様々な話題について、顧客同士で会話を楽しむことも出来る。
商品レビューを導入している EC サイトも多くなってきているが、誰もがレビューを投稿できたり、プロフィールが無いために、「メーカーや販売者の書き込みや、ヤラセではないか」と疑われることもある。
ハピテラが、このような単なる商品レビューや口コミを導入した EC サイトと一線を画すのは、「信頼」と「同好」に基づいた絶大な信頼感があるということだ。
ハピテラでは、口コミの投稿者のプロフィールや他にどのような商品を買ってどのような感想をもったかを知ることができるので、自分と似た趣味・嗜好の会員が投稿した口コミを参考にすることができ、さらに購入を検討している商品について気にかかることがあれば、その商品を買って、商品レビューを投稿している会員に直接質問することもできる。
■ランキングで「ついで買い」も促進
口コミの表示も、個別の商品レビューのみでなく、新着順、評価順、役に立った順、件数順などの様々なランキングが表示されるために、自分と似た趣味・嗜好の人のみではなく、みんなの意見としてはどうかということも確認することができる。
企業の販売戦略や一方的な思いによって作られた「ランキング」ではなく、言わば「群衆の叡智」や「集合知」によるランキングである。
顧客による口コミをベースとしたランキングは、信頼性が高く、顧客にとっても役立つ。このランキングを見ることによって、ついで買いが促進されるという効果も出ているようだ。
■ハピテラによるソーシャルコマース化の大きな効果
ハピテラによるソーシャルコマース化の目的としては、(1)巨大な EC サイトの人気(ヒトケ)を見える化し、賑わいを感じられるようにすること、(2)既存客の活性化、(3)コンバージョン率の向上、(4)新規顧客層の拡大などによる売上のアップが中心と考えられる。実際に、ハピテラを利用している会員の売上は、利用していない会員よりも高いとのことだ。しかし、それ以外にも、大きな効果があると思われる。
ひとつは、商品の改善や新商品の企画開発に役立てるということである。ハピテラの口コミや日記、コミュニティなどに集まる膨大な「顧客の声」は貴重なマーケティングの宝である。「顧客の声」を「見える化」して、分析することにより、従来は気がつかなかった、顧客視点ならではのニーズやウォンツを知ることができる。
また、顧客離反の回避がある。通販の場合、どうしても写真と実物に差があり、「購入してみたら、イメージと違っていて失敗したので、利用するのを辞めた」というケースが多い。ハピテラの口コミや会員同士の情報交換により、このような問題を減らし、顧客離反を回避することができる。
さらに通販会社にとって大きな効果は、返品率の削減である。通販を利用する場合、とりあえず気になったものを全て取り寄せてみて、現物を見て、本当に気に入ったもの以外は気軽に返品するということも多く、通販各社は、このような返品コストが経営を圧迫するほどの経費となっている。ハピテラは、事前に様々な角度から商品を検討できるので、返品率を下げる効果があると思われる。この効果は大きい。
今まで顧客に対して一方的に商品と情報を提供してきた企業にとって、商品レビューやアフィリエイトなどの部分的な顧客参加に留まらず、商品に対する批判的な意見も掲載し、顧客との率直な対話をオープンに行なうということは、大変な勇気と努力を必要とすることである。しかし、その果実は余りあるだろう。
参考文献:「Web コミュニティでいちばん大切なこと。CGM ビジネス“成功請負人”たちの考え方」 インプレス出版
執筆:株式会社ワールド・カフェ 代表取締役 笠原 造
監修:株式会社ループス・コミュニケーションズ 代表取締役 斉藤 徹
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