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マーケティング2010年7月6日 10:50
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「Microsoft Office 2010」のマーケティング戦略とは?【パート2】―サイコス青葉氏が訊く

この記事のURLhttp://japan.internet.com/wmnews/20100706/5.html
著者:japan.internet.com 編集部
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2010年6月17日、「Microsoft Office 2010」が一般向けに発売となった。マイクロソフト在籍時にはマーケティング部のプロダクトマネージャだった青葉哲郎氏(サイコス株式会社)とともに、通常聞くことのできない「Microsoft Office 2010」のマーケティング戦略についてお話をうかがった。前回に引き続き、3日連続掲載の本日が2回目である。

答えてくださったのは、マイクロソフト株式会社 インフォメーションワーカービジネス本部 業務執行役員 本部長(役職は取材当時。7月1日より業務執行役員 コミュニケーションズ・セクター担当)の横井伸好氏。今回はマイクロソフトのプロダクトマーケティングへの考え方などから紹介しよう。

左:マイクロソフト株式会社 インフォメーションワーカービジネス本部 業務執行役員 本部長 横井伸好氏。右:サイコス株式会社 代表取締役 青葉哲郎氏
左:マイクロソフト株式会社
インフォメーションワーカービジネス本部
業務執行役員 本部長 横井伸好氏
右:サイコス株式会社 代表取締役 青葉哲郎氏

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● 月間数テラバイトの声なき声を聞け−ユーザーからのフィードバック情報をどう製品開発に活かすか


青葉氏は、「マイクロソフトほど顧客の声をしっかり聴いてモノづくりをしている企業はない」と説明する。例えば、先日発売された Windows 7 は、「ユーザーからの声を徹底的に製品に反映させた」と言われているが、青葉氏も体験した「ユーザーの声を聞く」とはどのようなプロセスなのか。Office 製品の開発ではどのような考えでユーザーのフィードバックを活用しているか、横井氏に説明していただいた。

横井氏「製品はユーザーのニーズに応えてこそ。ニーズを正確に把握し、製品開発に反映させることがまずは絶対条件だ。『これなら気に入ってくれるはずだ』という開発側の一方的な考えがユーザーのニーズと離れていれば、Office ユーザー5億人の期待を裏切ることになりかねない」

青葉氏が、「保守と革新のバランスをとることは大きなチャレンジでもあるが、矛盾が生まれることもある。迅速な意思決定はどのようにしているのか」をたずねると、横井氏は「意思決定はすべてにおいて、我々の思い込みでは決められない」ときっぱり答えた。

ユーザーインターフェイスのユーザビリティに関しては、マイクロソフト内にある研究機関などが日々研究しており、1つの操作にかかるクリック数などの操作傾向などを、膨大な時間をかけて検証し、開発チームにフィードバックしている。この膨大で正確なデータが、開発チームがインターフェイスのデザインを決定する際の根拠となり新しい Office 製品が生まれているのだ。

そして、それ以上に影響力を持っているのが Office 製品に実装されている「フィードバックプログラム」だ。マイクロソフト製品を使用していると「プログラムに参加しますか?」のようなダイアログが表示されることがある。そこで「はい」を選んだユーザーからは、マイクロソフトに自動的に製品の細かい機能の使用状況やエラーログなどが送信されている。

顧客からのフィードバック情報はワールドワイドで1か月に数 TB(テラバイト)にも上るという。横井氏は数 TB のフィードバックこそが「一番の財産だ」としており、機能を使う順番や使い方、どの機能が良く使われているのかなどわかるのだ。

フィードバックプログラムのデータから、最もよく使われている機能が「コピー&ペースト」であり、「コピー&ペースト」を使ったユーザーがその次に利用する機能として一番多いのが「アンドゥ」(やり直し)であることがわかった。

このふたつの機能には相関性がある。つまり、1)文字列をコピーする、2)場所を決めてペースト(貼付け)する、3)イメージ通りペーストできなかったからアンドゥ(やり直し)する、というユーザーの動きだ。イメージ通りのコピー&ペーストを実現してあげれば、ユーザーからこのような手間を軽減することができる。そのようなユーザーの利用動向、フィードバックを踏まえて、Office 2010 では事前に貼り付けた後のイメージを事前に確認できるクリップボードのプレビュー機能が実装された。

横井氏は「思いつきで機能をつけてもダメ、声の大きな人の意見が勝ってもいけない」と述べる。声は上がらないが、実は重要な改善のヒントを秘めている「声なき声」をこのフィードバックプログラムで見つけ出し、使いやすさを向上させることが重要なのだ。

青葉氏は「こうしたマーケティング(顧客志向を製品に反映させる仕組み)を持つことができたからこそ、常に後発でありながらロータス1.2.3、一太郎、ネットスケープに勝つことができた。競争に勝つために何が必要かを知っている会社」と話す。

「一方、声なき声に応え、改善しているだけでは、そこからイノベーションは生まれづらい。声なき声を真摯に受け止めつつも、ユーザーに新しいエクスペリエンスの提案をしていかなければならないのがマイクロソフトである」と横井氏は言う。その答えが Office 2007における「リボン」であり、今回はブラウザやスマートフォンへの対応だったのだ。

ちなみに、Office 2007から実装された「リボン」のインパクトは大きく賛否が分かれることもあったが、2週間使えば慣れて、以前のユーザーインターフェイス以上に使いこなすことができるというリサーチ結果も出ているという。フィードバックプログラムを通じて届けられる「声なき声」が、今回の「リボン」をより使いやすいものに育てている。

青葉氏は、すでに Office 2010を利用しているが「無料化された Office IME 2010 の変換効率とスピードが過去最高レベルであり、ファイルメニューの復活や新機能のバックステージ画面の登場で、印刷やネット上へのファイル保存など操作がより直感的になった」と話す。加えて、「リボンのカスタマイズが可能となったことや、Outlook 2010 の改善が本当に使いやすくなった、完成系に近い」と高評価だ。

● ツールの進化で変化するワークスタイル、その変化に乗り遅れるな

「利用者の生産性を向上させる」のが Office の使命。次に青葉氏は、Office チームが企業、ビジネスパーソンの生産性やワークスタイルをどのように考えてきたかをたずねた。

横井氏によれば、「昔、PC は“清書ツール”だった。手書きに代わり、きれいにプリントアウトされたものを出力するツールとして、Word や Excel を売っていた」という。しかし Windows 98の登場によりパソコン、インターネットが爆発的に普及するにつれ、ワークスタイルも大きく変化した。文書の作成方法も「手書きを元に清書する」から「まずパソコンで書き始める」に変化し、出来上がった文書もただプリントアウトするだけではなく、文書ファイルそのものをメールや メッセンジャーソフトなどで送受信したり、PDF や Web などへ出力したりと、文書の扱い方が多様化している。

「ワークスタイルはツールで進化している」と横井氏。文書作成はひとつの例にすぎず、ツールによって生まれるワークスタイルの変革は様々な Office 製品ですでに実現できるようになっており、使いこなす企業、ビジネスパーソンも拡大している。そのトレンドに乗れない人々の意識を変えていくことが必要だという。「“清書ツール”で意識がとまっている人を変えていかなければならない」というのが、横井氏のスタンスだ。

青葉氏も「トレンドの変化に乗れない」人々の意識を変えていくことを重視している。青葉氏によると、新しいツールを実際に使用する現場の社員はその重要性を知っているのに、そのツールの導入を決裁する経営者やシステム担当者がついていけないケースが多いという。「業務アプリケーションへの投資は大きいが、企業のインフラやコミュニケーションへの投資に対する理解がない」(青葉氏)

具体的な例として、Microsoft Outlook はメーラーとして一般的だが、「カレンダー」「連絡先」「ToDo」などの様々な機能の連携や「Exchange Server」などを活用したワークスタイルのシームレス化がリテラシーとして備えられていないようなケースだ。青葉氏によるとそれどころか「いまだに Outlook Express をビジネスに使っている会社」も目の当たりにしており、PC に Outlook クライアントが入っているにも関わらず、生産性の低いツールを使うのは、実にもったいないことだと感じているそうだ。

横井氏はツールの進化の新しい例として、Outlook を SNS と連動させてよりリッチに利用できる「アウトルック・ソーシャル・コネクター(Outlook Social Connector)」を挙げた。この機能では、メールの相手とのやりとりやアクティビティが自動でソートされ、すべて一覧で参照できるので、社内で関係の薄い人やはじめてやりとりする人でも、記憶や憶測に頼らない確実なコミュニケーションが可能だ。写真やプロフィールも参照できるので、相手の性別や立場を事前に理解した上でのコミュニケーションが可能だ。

Outlook 2010 の画面右下に出てくる Outlook Social Connector
Outlook 2010 の画面右下に出てくる
Outlook Social Connector

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● ワークスタイルの改善が企業の将来に直結する時代に

このようなツールの進化にすぐに馴染めるのは若い10代20代の世代だ。彼らが生まれたときにはすでに PC もインターネットも携帯電話も存在しており、彼らの中にネットやパソコンが「得意ではない」という人はいない。新しいものにもすぐ順応し、使いこなすことで自身のワークスタイルを向上させることができる世代だ。

彼らのような世代は、前述した「流れに乗れない」企業に入社すると、そのリテラシーの低さに驚かされるという。米国では、就職しようとする学生が企業を選ぶ際に、どのようなワークスタイルを作っているか、つまりワークスペースのインフラやシステムにどれくらい投資をしているかを判断基準のひとつにしているそうだ。日本では、郷に入れば郷に従えという考えがまだ根強いが、米国では企業が最新のトレンドを追いかけ、ワークスタイルを改善し続けなければ優秀な学生の獲得が危うくなるほど、ワークスタイルへの意識は高い。

とはいえ、日本でもそのような意識の高い経営者は少なくないそうだ。横井氏によると、「インスタントメッセンジャーを導入したある企業には、『自分にはわからないが、新人は当たり前のように使う。自分はなくても困らないが、彼らが困るから導入する』と言う経営者がいた」という。現場の生産性向上が業績に与える影響を重視している意見と言える。

青葉氏も「デジタルツールがもたらすメリットがわかる経営者とわからない経営者では、組織全体のワークスタイルにも大きな差が出てくる。ファーストリテイリング様が Office 2010 をはじめとする弊社製品群を全世界に導入したことはコミュニケーションがビジネスの生産性に直結するという一つの象徴的な事例」と指摘した。

ワークスタイルへの意識は米国はもちろん国内でも高まっている。Office 製品はこのニーズに応えるイノベーションを様々な形で提供してくれるはずだ。

6月17日に一般向けに発売されたOffice 2010。今回から「Home and Business」という新パッケージが加わる
6月17日に一般向けに発売されたOffice 2010
今回から「Home and Business」という新パッケージが加わる

次回は、Microsoft Office のプロモーション施策などからマーケティング戦略についてお話を伺う。
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