![]() ![]() ![]() ![]() 「Microsoft Office 2010」のマーケティング戦略とは?【パート3】―サイコス青葉氏が訊くこの記事のURLhttp://japan.internet.com/wmnews/20100707/5.html
著者:japan.internet.com 編集部
国内internet.com発の記事
2010年6月17日、「Microsoft Office 2010」が一般向けに発売となった。マイクロソフト在籍時にはマーケティング部のプロダクトマネージャだった青葉哲郎氏(サイコス株式会社)とともに、通常聞くことのできない「Microsoft Office 2010」のマーケティング戦略についてお話をうかがった。パート1、パート2に引き続き、3日連続掲載の最終回である。
答えてくださったのは、マイクロソフト株式会社 インフォメーションワーカービジネス本部 業務執行役員 本部長(役職は取材当時。7月1日より業務執行役員 コミュニケーションズ・セクター担当)の横井伸好氏。今回は Office 製品のマーケティング戦略などを紹介しよう。 ● 街を見ればみんな Office ユーザー…だからこそ難しい マーケティング戦略に関しても、Office 2010 はかつてとは違ったアプローチで進められている。青葉氏は、以前のマイクロソフトは、雑誌・テレビ CM を中心に予算を使っていたが、そういったマスメディアへの露出があまり目立っていないと指摘した。 横井氏によると、発売前のマスメディア露出はあまり行っていないという。現在は、テレビ CM よりも twitter や販売店の店頭キャンペーンやカタログ配布、雑誌などを中心に様々なチャネルに対して臨機応変にマーケティング施策を仕掛けているそうだ。 「この時代に横井氏が『店頭のカタログ』を重視しているのは、大変面白い」と青葉氏が指摘すると、横井氏は「家電量販店で商品を検討する場合、カタログを集める人が多い。そういう人たちこそが大事な見込み顧客であり、狙ったリーチに適した方法を用意することは、マーケティングには欠かせなくなっている」。製品を検討してくれる人が重視する接触ポイントに確実に Office の情報を届けることが重要なのだ。 一方、Office のマーケティング戦略には難しさもある。横井氏はこの対談を行ったマイクロソフト新宿オフィスの窓から外を眺め、「このオフィスのビルから外を眺めると、ここから見える窓の一つ一つでいったいいくつの Office が動いているんだろうか? と考えるのです。道を歩いている人もそう。それが非常に誇らしく思える反面、その一人ひとりにいったいどうやってリーチし、新しい Office の素晴らしさを伝えていけばいいのだろうと考えると頭を抱えてしまいます」と、デファクトスタンダードになり市場が成熟した製品ならではの悩みを明かした。 インターネット、携帯電話の普及や接触メディアの多様化により、消費者が受け取る情報量は昔とは比べ物にならないぐらい膨大になっている。その膨大な情報の中から、新しい Office の情報をピックアップしてもらうことは至難の業だ。 しかも、現在では、今使っているツール=古いバージョンの Office 製品に満足しており、バージョンアップに対して関心を持たなくなっている=「耳をふさいでいる」状態の消費者が増加してきたという。そういった消費者にリーチし、耳を傾けてもらうことが、横井氏に課せられたミッションだ。 ひとつの事例として横井氏は、Office 2007のマーケティング施策として芸人の「バナナマン」を起用したキャンペーンを用意し、「リボン」の活用法や Office 製品の家庭への導入などを訴求した。このキャンペーンのポイントは「誤解を解く」。Office 2007で新採用された機能などに対するネガティブな意見を「誤解」と説明し、本当のメリットを訴求する内容で、企画段階では横井氏も「自虐的」とも思えるこの企画に消極的だったという。しかし、不安とは裏腹にこのキャンペーンは大きな反響を呼び、「リボン」の利便性が広く認知され、売り上げの増加にもつながったという。 ● 大量投下型からセグメンテーション型へ―マーケティング戦略の変化 横井氏によると、「消費者の意識や志向性は多様化の一途を辿っており、各層にどのようなコミュニケーションを仕掛けるか、そのセグメンテーションとリーチ手段がマーケティング戦略の鍵となる」という。twitter など流行のマーケティングツールはもちろん使っているという横井氏だが、「いかに多面的にやるか」がこれからは重要だという。 青葉氏も「マス広告だけやっていればいいという時代は終わり、多面的な展開がより重要になった。限られた予算で効果を最大化させる戦略・戦術を練ることは、組織のマーケティング力の強化につながる」と話す。「このセグメンテーションによる多面的かつコストを最適化したマーケティング戦略のあり方は、グローバルに見てもトレンドである」ということは横井氏も青葉氏も認めるところだ。 横井氏は、「ATL(Above the line)=広告キャンペーン」と「BTL(Below The Line)=地に足の着いたフィールドプロモーションのバランスが重要」と話す。続いて、青葉氏は「何かに偏ることなく、丁寧に各セグメントに的確にリーチしていくことが求められる。」と話す。 「Office ほど売れている商材はなかなかありません。いくらヒットした携帯電話でもこれだけの数は出ません。それだけにユニークな悩みがあり、シンプルなマーケティングでは追いつきません。膨大な数のユーザー全員にリーチしていく必要があるわけです」という横井氏。青葉氏も、マーケティング予算を最小限に圧縮しながら多面的なセグメンテーションによる細やかなターゲットリーチを目指す横井氏の戦略に共感を示した。 ● 対談を終えて―サイコス青葉氏から マイクロソフトが、世界で成功してきた理由。それは、横井氏の「月間数テラバイトの情報をすべて分析している、それが私たちの財産」という言葉に成功の理由が隠されています。 数テラバイトの情報を生かすも殺すも、マーケティング部門が、正しく機能しているかどうかだと思います。 成功しているメーカーは、マーケティング部門と開発部門に正しい緊張感があり、切磋琢磨しながら商品やサービスを磨きこんでいきます。「Mr.Office」と言われる横井氏のリクエストは、日本の細やかな消費者の代理人として、米国にフィードバックされています。そして、日本のためだけではなく、マイクロソフトのグローバルなモノづくりをサポートしているのです。 世界市場に対してどのような組織でどのように動くべきか。この10年でグローバル化とローカライゼーションに成功したマイクロソフトの動きは、日系メーカーのマーケティング部門が参考にすべき点が多々あるのではないでしょうか。
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