Marketing
マーケティング
「消費者の声を聴く」を実践するインターネット調査の実態とは (第2回)
市場調査の新たな潮流として成長している「インターネット調査」。その特色を紹介した第1回では、「コストパフォーマンス」「ターゲティング」「即時性」という3つのメリットを紹介してきたが、調査の実践において重要なのは実際に回答する調査モニター、つまり調査に参加する回答者の特色である。この回答者の特色を理解した上で調査を企画しなければ、消費者の実態に即した、妥当性のある調査結果を得ることは難しいだろう。
大手調査会社の株式会社インテージが作成している資料を読むと、先に挙げたような「ネット調査のメリット」を上回る量の「"調査結果の品質"の特色」が記載されている。これは、決して「おいしい話」だけではなく、同社にとって営業上不利になるかもしれない「ネット調査のデメリット」とも受け取れる。しかし、その「良い面(メリット)」と「悪い面(留意するべき点)」を納得した上で上手にネット調査を使いこなすことで、正しく、かつ価値の高い調査を行うことができるのだ。
● 調査パネルの年齢分布を理解し、調査対象を決める
ネット調査における調査モニターの特色のひとつが「カバレッジの問題」だ。ネット調査の回答者は、当然パソコン、携帯電話などのインターネットデバイスを通じてアンケートに回答する。つまりは、インターネットを使っていない一部の消費者はネット調査の回答者の中には存在しないことになる。
2009年版総務省「通信利用動向調査」によると、日本のインターネット利用者数は9408万人で、人口普及率で78%となっているが、その中でも「ネット調査」に積極的に参加するユーザーは更に少なくなり、年齢層も偏りがある。日本の年齢分布とネット調査モニターの年齢分布を比べてみると、年齢分布では60歳が頂点になっているのに対してネット調査モニターは30代がボリュームゾーンとなる。
つまり、このような年齢属性の特色を理解した上で調査のターゲット層を決めるにより、的確に「聞きたい相手」の意見を集めることができるのである。
● 「不良回答」の可能性を考慮する
次の特色は、「モニターの募集方法」だ。ネット調査の回答者は調査会社が声を掛けて集めたものではなく、回答希望者が自ら手を挙げて調査に参加しているという特色をもつ。
そのモチベーションは様々なものだが、そのひとつが「謝礼」だ。謝礼は調査に参加したことでもらえる「ポイント」で、商品券や EC サイトのショッピングポイントと交換できる。当然全員というわけではないが、この謝礼が欲しくて調査に参加したり、一人の人が複数の参加者をなりすまして調査に参加するケースもある。このような「不良回答者」が調査結果の中にわずかだが含まれる可能性を考慮しなければならない。
一方、このような不良回答を行い調査結果の精度に影響を与えるモニターを参加させないために、参加時に本人確認を徹底することで「なりすまし参加」を防止しているほか、定期的に回答状況を確認しながら不良回答者を排除するなど、調査会社側で調査モニターのクオリティを維持する取り組みを続けている。
● 調査回答者の「離脱率」を考慮した調査対象者数を算出する
次の特色が「回答者の協力率」と「回答者の中止率」だ。例えば、1000人の回答を得たいという調査を行った場合、1000人にアンケートを送って全員から回答を得られることはない。同社の統計によれば、その協力率(回答を開始する割合)は約30%程度、スクリーニング調査(調査対象者を絞り込むための事前調査)を事前に行った場合で約70%だという。つまり、1000人の調査結果を得る場合には、3300人の調査対象者を確保する必要があるのだ。
メリットに挙げた「ターゲット調査」を行う場合、調査モニター全体(インテージの場合139万人)の中から様々な属性でターゲットを絞り込んだ場合、絞込みすぎることで有効回答数を下回る結果になる可能性があり、注意が必要である。
また、調査の質問数と回答者の中止率(途中で回答を止めてしまう割合)の関係も理解しておく必要がある。同社の統計によれば質問数30問、回答時間15分までの中止率は約4〜5%程度なのに対し、それを超える分量の調査になると8%から最大17%程度まで中止率が増える。
消費者に多くのことを聞きたいというニーズは止むを得ないが、あまりに多い質問数では回答者が離脱してしまい、十分な回答数を得られない可能性があるので、こちらも注意する必要がある。
● 価値と特色を把握した上で「ネット調査」というツールを使いこなせ
このように、2回にわたって紹介した「ネット調査のメリットと調査パネルの特色」をまとめると、「コストパフォーマンス」「ターゲティング」「即時性」という企業のマーケティングニーズに応え、低価格で市場調査が可能になったというネット調査ならではのメリットがある一方で、「カバレッジ」「不良回答の可能性」「離脱率」というこちらもネット調査ならではの留意するべき調査パネルの特色がある。
これらのメリットと特色を理解した上で、企業のマーケティング担当者はネット調査のメリットを最大限活かした機動力の高い市場調査を企画し、留意するべきモニターの特色を考慮した仮説検証とリスクヘッジを行うことで、より確実にマーケティング活動に役立つ調査結果を手に入れることができるに違いない。
次回は最終回として、インテージで開発責任者を勤める長崎氏と、リサーチャーとして調査業務の最前線で活躍する田中氏にお話を伺い、ネット調査がなぜ選ばれるのか、企業はどのようにネット調査を活用するか、そしてネット調査の今後の展望について紹介する。
(最終回に続く)
大手調査会社の株式会社インテージが作成している資料を読むと、先に挙げたような「ネット調査のメリット」を上回る量の「"調査結果の品質"の特色」が記載されている。これは、決して「おいしい話」だけではなく、同社にとって営業上不利になるかもしれない「ネット調査のデメリット」とも受け取れる。しかし、その「良い面(メリット)」と「悪い面(留意するべき点)」を納得した上で上手にネット調査を使いこなすことで、正しく、かつ価値の高い調査を行うことができるのだ。
● 調査パネルの年齢分布を理解し、調査対象を決める
ネット調査における調査モニターの特色のひとつが「カバレッジの問題」だ。ネット調査の回答者は、当然パソコン、携帯電話などのインターネットデバイスを通じてアンケートに回答する。つまりは、インターネットを使っていない一部の消費者はネット調査の回答者の中には存在しないことになる。
2009年版総務省「通信利用動向調査」によると、日本のインターネット利用者数は9408万人で、人口普及率で78%となっているが、その中でも「ネット調査」に積極的に参加するユーザーは更に少なくなり、年齢層も偏りがある。日本の年齢分布とネット調査モニターの年齢分布を比べてみると、年齢分布では60歳が頂点になっているのに対してネット調査モニターは30代がボリュームゾーンとなる。
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| 人口の年齢分布(棒線)とネット調査モニターの年齢分布(折れ線) (資料提供:インテージ) |
つまり、このような年齢属性の特色を理解した上で調査のターゲット層を決めるにより、的確に「聞きたい相手」の意見を集めることができるのである。
● 「不良回答」の可能性を考慮する
次の特色は、「モニターの募集方法」だ。ネット調査の回答者は調査会社が声を掛けて集めたものではなく、回答希望者が自ら手を挙げて調査に参加しているという特色をもつ。
そのモチベーションは様々なものだが、そのひとつが「謝礼」だ。謝礼は調査に参加したことでもらえる「ポイント」で、商品券や EC サイトのショッピングポイントと交換できる。当然全員というわけではないが、この謝礼が欲しくて調査に参加したり、一人の人が複数の参加者をなりすまして調査に参加するケースもある。このような「不良回答者」が調査結果の中にわずかだが含まれる可能性を考慮しなければならない。
一方、このような不良回答を行い調査結果の精度に影響を与えるモニターを参加させないために、参加時に本人確認を徹底することで「なりすまし参加」を防止しているほか、定期的に回答状況を確認しながら不良回答者を排除するなど、調査会社側で調査モニターのクオリティを維持する取り組みを続けている。
● 調査回答者の「離脱率」を考慮した調査対象者数を算出する
次の特色が「回答者の協力率」と「回答者の中止率」だ。例えば、1000人の回答を得たいという調査を行った場合、1000人にアンケートを送って全員から回答を得られることはない。同社の統計によれば、その協力率(回答を開始する割合)は約30%程度、スクリーニング調査(調査対象者を絞り込むための事前調査)を事前に行った場合で約70%だという。つまり、1000人の調査結果を得る場合には、3300人の調査対象者を確保する必要があるのだ。
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| ネット調査の協力率(回答開始する率)は30% (資料提供:インテージ) |
メリットに挙げた「ターゲット調査」を行う場合、調査モニター全体(インテージの場合139万人)の中から様々な属性でターゲットを絞り込んだ場合、絞込みすぎることで有効回答数を下回る結果になる可能性があり、注意が必要である。
また、調査の質問数と回答者の中止率(途中で回答を止めてしまう割合)の関係も理解しておく必要がある。同社の統計によれば質問数30問、回答時間15分までの中止率は約4〜5%程度なのに対し、それを超える分量の調査になると8%から最大17%程度まで中止率が増える。
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| ネット調査の設問数・回答時間と中止率(回答を止める率)の関係 (資料提供:インテージ) |
消費者に多くのことを聞きたいというニーズは止むを得ないが、あまりに多い質問数では回答者が離脱してしまい、十分な回答数を得られない可能性があるので、こちらも注意する必要がある。
● 価値と特色を把握した上で「ネット調査」というツールを使いこなせ
このように、2回にわたって紹介した「ネット調査のメリットと調査パネルの特色」をまとめると、「コストパフォーマンス」「ターゲティング」「即時性」という企業のマーケティングニーズに応え、低価格で市場調査が可能になったというネット調査ならではのメリットがある一方で、「カバレッジ」「不良回答の可能性」「離脱率」というこちらもネット調査ならではの留意するべき調査パネルの特色がある。
これらのメリットと特色を理解した上で、企業のマーケティング担当者はネット調査のメリットを最大限活かした機動力の高い市場調査を企画し、留意するべきモニターの特色を考慮した仮説検証とリスクヘッジを行うことで、より確実にマーケティング活動に役立つ調査結果を手に入れることができるに違いない。
次回は最終回として、インテージで開発責任者を勤める長崎氏と、リサーチャーとして調査業務の最前線で活躍する田中氏にお話を伺い、ネット調査がなぜ選ばれるのか、企業はどのようにネット調査を活用するか、そしてネット調査の今後の展望について紹介する。
(最終回に続く)
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