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2011年11月21日 11:00
震災後の社会生活における新たな価値基準『SQ』とは -- 関西学院大・鈴木准教授が提唱東日本大震災の発生以降、社会的自粛に始まり、被災地への支援・貢献活動、節電に代表されるライフスタイルの見直しなど生活者を取り巻く環境がこの数ヶ月の間に急速に変化した中、生活者のコミュニケーション、ライフスタイルに対する価値観にはどのような変化が生まれているのだろうか。
マーケティング会社のシタシオンジャパンは、著書「カーニヴァル化する社会」、「わたしたち消費」に代表される現代社会の新たな潮流分析に定評のある関西学院大学社会学部の鈴木謙介准教授の監修により、「震災後の社会生活における価値観の意識調査」を全国20代から60代の男女1万人に対し実施し、その分析結果を公開した。 その結果から、生活者の中で日常生活において、“社会とのかかわりを重視する価値観”が強く見られ、その意識が顕在化していることが明らかとなり、鈴木准教授はこの“社会性を求める気持ち、家族や身近な友人以外の他者とのかかわりも求め、協力し合う心。この価値判断の基準”を『SQ』<かかわりの価値基準>と定義した。 ● 「他人への思いやり」「環境への配慮」「助け合い」への意識が向上 調査では、コミュニケーション、ライフスタイルなどの社会生活全般における価値観を中心に現状意識を聞いている。 まず、様々な行動に対する意識の変化を聞いた質問では、震災前に比べて公共の場における思いやり・配慮や環境資源への考え方、道徳意識など、生活者一人一人の社会と前向きにかかわる意識が、日々向上していることが明らかになり、また社会生活で大切だと感じることを聞いたところ、「経済成長」「雇用創出」「グローバル化」という日本経済の課題よりも、「他人を思いやる心」88.9%、「他人との助け合い」83.1%、「環境への配慮」83%など社会生活と関わりが強い項目に関心が高いことが明らかになった。
● 「社会とのかかわりを重視する意識」を表す4つのキーワード また、様々な質問を通じて生活者の「社会とのかかわりを重視する意識」が顕著に表れており、調査を監修した鈴木准教授によると、その回答傾向から、社会性のベクトルを表す4つのキーワードが浮かび上がり、多様な社会性の価値観が見受けらたという。 ひとつめは、「他者への貢献の心」だ。生活シーンにおける他者との関係性について聞いた質問に対しては、74.3%が「人との出会いやつながりを大事にしていきたい」と回答しており、社会的なコミュニティ、ネットワークを重視する傾向が見られている。また、「他人への思いやり」や「助け合い」を求める意向も表面化しており、見知らぬ他人であっても、機会があれば協力して生きていきたい意向は回答者の6割以上が示す結果に。友人に限らず「見知らぬ他人」ともかかわりを持ち、社会全体が協力していく姿勢を願う意識が見られる。
ふたつめは、「広範囲で協力」つまり地域社会とのつながりだ。調査で地域社会や近隣の家族と深いコミュニケーションを行っていると回答したのは全体で11.4%、最多の60代女性でも16.6%足らずと非常に少なく、その希薄な関係性が危ぶまれている「無縁社会」を垣間見る結果となっている。しかし、「今後、誰と関係を築いていきたいか」という質問に対して「地域や近所・近隣(今付き合いのない人も含む)」では52.6%もの人々が『そう思う』と回答し、互いに協力し合えるコミュニティを強く求めていることが分かった。なお、震災を機に「街で困った人を見ると手助けしたい気持ちになった」と回答した人も、70%と高い割合となった。 3つめは、「モノより心」。つまり、震災に端を発した「支援活動」への考え方について、金銭的価値よりも、その支援に対する明確な目的を持つことや気持ちを込めていることを重視する傾向にあることがわかった。また、子供の教育に関する考え方においても、偏差値や社会でのポジション、将来性を見据えて取り組む語学などよりも、他者への思いやり、社会への配慮、周囲との交友関係を重視する傾向が見られているほか、女性がパートナー(恋人、夫)に求めることにおいても、『男らしさ』よりも『協調性』『他人への気遣い・思いやり』などを重視する傾向が見られており、人生に対する考え方にも変化があることがわかった。
4つめは、「次世代志向」だ。震災をきっかけに「エネルギー」、「環境」というキーワードがますます身近になり、今が快適に暮らせればよいというわけでなく、「未来(子供や孫の世代)を視野に入れて行動する」という姿勢が多く見受けられている。特に、震災時に大きな問題となった電力、燃料などの生活に不可欠なエネルギー問題への関心は高く、エネルギー消費の代表格である「自動車」については、次世代の動力源(ハイブリッドカー、プラグインハイブリッドカー、電気自動車)など、エネルギーに直結する項目への関心が高まっていることが分かった。
● 震災後の生活者の意識の変化から生まれた、『SQ』<かかわりの価値基準>とは このような分析結果から、生活者の中で日常生活において、“社会とのかかわりを重視する価値観”が強く見られ、その意識が顕在化していることが明らかとなった。 調査結果を踏まえて鈴木准教授は、「多くの人々の生活意識は、震災前後で社会性が高まっており、加えて現在の生活志向においても、周囲との関係性を重視する意識が見受けられた」と分析。その“社会性を求める気持ち、家族や身近な友人以外の他者とのかかわりも求め、協力し合う心。この価値判断の基準”を、『SQ』<かかわりの価値基準>と定義した。 鈴木准教授によると、「他者への貢献の心」「広範囲で協力」「モノより心」「次世代志向」という調査から浮かび上がった4つのキーワードは、いずれも社会や周囲との関係性を重視する意識の表れであり、今後の日本社会で生きるために必要な価値基準だと提言している。また、同氏は「社会とのかかわり方の距離感も重要」とし、『誰のためを思い行動するのか』という範囲や『今、近い将来、未来というどこを考えて行動するのか』という、時間と相手をバランスよく考え、自分のできる範囲で無理なく社会と協力することが、最も『SQ』のレベルが高いという。
そして、『SQ』を意識した生活の先に待っているのは、「幸せ」だ。調査では、“誰かのためになること、助けになることを幸せだと思う”という意見が、全体の5割以上に達しており、鈴木准教授は「他人に関わり、手助けをしたいという気持ちは、周囲だけでなく、自身にも幸福感をもたらす傾向にあり、社会的に良いサイクルを生み出すことが明らかになっている。」と分析している。
鈴木准教授が提唱した『SQ』は、生活者が日常生活において今後より一層意識していくべき価値観であり、今後の日本社会の成長と豊かな社会に実現にとって不可欠な価値基準だと言えよう。 関連記事
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